恭一郎×澪 出会い

澪と出会ったのは、暑い夏の日だった。


母さんの経営しているジムが休みで、友達が居なくて1人で家の周囲を探検していた時のことだ。初めて訪れる小さな公園の茂みから女の子の泣き声が聞こえてきた。


迷子かと思い近付いてみると、そこには頭に髪飾りの様に、色とりどりな綺麗な花を咲かせている可愛い女の子が泣いていた。


「ひっく…だえ?」

「どうしたんだ?なんで泣いてるんだ?」

「…みおのあたまにさいているはながね、えんぎわるいんだって、だからお母さんがにゅういんしちゃったって、きんじょのおばちゃんが言ってるの聞いちゃったの」

「…」


余りに酷い内容にムカついた。


「こんなに綺麗な花なのに、酷い事を言うな…」

「きれい?お母さんもきれいってほめてくれるの」

「ああ、綺麗だ」

「…ありがとう」


そう言って澪がへにゃりと笑って、笑うと凄く可愛いなぁと思った。


それから澪の家に送り届けてから、澪と俺は仲良くなって出会った公園で良く遊んだり、家族ぐるみで仲良くなったり、俺がジムで手伝いやトレーニングをしている時は、ベンチに座って俺の活動を見届けたりするようになった。


俺には余り友達が居なかったけれど、澪は2人よっちゃんと妙ちゃんという、親友と呼べる子が居て、澪経由で俺とも仲良くなって4人で遊ぶ事も珍しくなかった。


澪の元気な笑顔を見ているとこっちまで元気になっていった。


だけど澪のお母さんが体調を崩して再入院して、そのまま帰らぬ人になった。その葬式で「やっぱり澪の髪に菊の花が生えてるからだ」って話しているのを聞いて、おじさんが怒って騒ぎになった。


葬式中は悲しい顔で静かになった澪を、後ろから抱き締める事しか出来なかった。そして葬式後に鋏で菊の花を全部切って、仏壇に供えた。


「お母さんが大好きな花だからお母さんにあげる」

「…俺も好きだ、だから俺にも分けてくれるか?」

「…うん、良いよ」


そう言って泣き笑いを浮かべる澪に、目の前で赤い菊を選んで口に放り込んだ。


『花人の赤い花を食べる事は愛の告白を受ける事になる』


澪が意味を知ってるかは知らないけど、俺はその意図で赤を選んで飲み込んだ。


これからは澪の隣で、澪を守れる男になる事を硬く決意した。








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