失恋
ここ連日の惨敗で頭が真っ白のまま学校に登校する。そして真っ白のままの進路希望の紙を握り締めたまま、担任の目の前で跪いた。
「で?如何だった?」
「…何処も雇ってくれなかった」
「だろうな」
「何でだよ!喧嘩で1番なら会社でも1番だろ!なのに皆下っ端からなら雇ってやるって上から目線で言ってきた!!」
「お前もしかして平社員からじゃなくて、上から入社させろって言っただろ?」
「だって俺、アイツらに勝った」
「お前なぁ、お前が入学する前に喧嘩1番だった白虎の半神の白寅院でさえ、格闘技の世界に入った時は一番下で、基礎を学んでからチャンピオンまで勝ち進んでいったんだぞ!?高校3年間本当に喧嘩して遊んで暮らしてたのか!!」
そう担任に殴られると共にゴツンと頭に拳骨を落とされた。知らなかった…大人の世界は甘くは無かったんだな、だから新城の奴、高校に入ってから就職どうすんだって煩かったんだな。
「お前の成績じゃあ入れる大学も無いし。…もう腹括れ、幼馴染みと結婚する事は諦めろ」
「…なぁ、花人って絶対偉い奴と結婚しなきゃ駄目なのか?」
「ん?」
「それが嫌な奴だったら如何するんだ?」
「そういう時は花人に拒否権がある。1回のお見合いで決まる訳じゃないしなぁ」
「そっか、良かった…まだ猶予があるんだな」
「…」
そう安心している所でスマフォが鳴る。その着メロは新城からのメールで、俺は遊ぶ約束かと思ってメールを確認する。
「っ…」
「ん?どうした?」
内容を確認して頭が真っ白になった。俺は衝動的に教室を飛び出した。
「おいコラ!!これ以上授業ボイコットして留年するつもりか!」
×××
授業を受けていたら外の方が騒がしくなっていた。先生も気になったのか窓の外を見て、先生こっちを見ていないのならと私達も窓から身を乗り出して確認すると、誰かが校門で騒ぎながら門を乗り越えようとして、交番のお巡りさん2人に止められていた。
「何あれ?不審者?」
「春先だから変な人が出たのかな?」
「新城ーっ!お前巫山戯んなーっ!!」
「っ!?」
私の名前を大声で呼ばれて吃驚した。注意深く見て漸く校門にいる不審者が早乙女だと気付いた。
「嘘っ!早乙女!?」
「(あちゃー…)」
私は冬ちゃんを置いて慌てて教室を出て、校門へと向かった。
「こっちが必死に就職活動してる中、なに抜け駆けして見合いしてるんだよーっ!!」
「ちょっと!危ないから降りて!」
「ちょっこっち鬼人2人なのにこの子力強っ…」
「こんな時間に何してるんだ早乙女ーっ!」
靴に履き替える手間を惜しんで上履きのまま、校門に向かって門越しに早乙女と対峙する。
「ちょっと!この人興奮してるから下がって下がって!」
「なに?もしかして知り合い?」
「新城!お前なに俺の許可無く見合いして交際してるんだよ!」
「何でお前の許可が必要なんだよ!!」
「とにかく無効だ!婚約破棄だ婚約破棄!」
「だからなんでお前に勝手に決められなきゃいけないんだよ!!」
「お前は俺のもんだからだろ!」
「勝手に決めんな!俺とお前はただの友達だろ!」
「俺の隣に居るって言った!」
「友達としてな!」
「バレンタインに菓子くれた!」
「嫌な顔しただろ!それに自分で食べたからあげてない!」
「お前が勝手に食ったからだ!」
「じゃあ何で10年もあって1度も好きって言わなかった!」
「言わなくても伝わってるって思ってた!」
「何であれだけ就職考えろって言ったのに真面目に聞かなかった!」
「そっ」
「高校3年にもなって将来決めてない奴と結婚する事を国が許す訳ないだろ!何でこっちが真面目に考えてたのに無視した!」
「…じゃあ結婚しなきゃ良いだろ!」
「はぁ!?」
「お互いに独身のまま、ずっと一緒に居れば良いだろ!!」
早乙女の無茶苦茶な言い分に思わず言葉が詰まった。何て馬鹿野郎なんだろう。
「そうだ!そうしよう!だから昨日会った奴とは婚約破棄だ!そしてずっと独身のまま俺と一緒に居よう!」
「…芦屋さんに会う前にそんぐらい熱心に愛の告白してこいよ!馬鹿!!」
「あしや?」
「遅いよ!私はもう芦屋さんと交際して結婚するって決めた!!だからお前とは友達のままごめんなさいだ!」
「なっ…」
「じゃあな!」
喉が張り裂けそうな大声で早乙女に別れの言葉を言う。泣きそうになりながら、校舎に入ろうとする。
「ちょっ君!」
「ぎゃあ!!」
ゴガッシャァァアアアンッ!!
背後から悲鳴と轟音が鳴り響く、背後を見れば門の1部が拉げて焼け落ちていて、警備員さん達の早乙女を掴んでいただろう両腕が丸焦げになっていた。
「はぁーっ…はぁーっ…にぃじろ…」
「早乙女?」
後者の方からサイレンの音が鳴り響く、そんな事が気にならない位、目の前の体中から炎を噴き出す早乙女が恐ろしかった。
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