将来


「そりゃお前が悪い」


来た道を引き返して職員室の担任に愚痴ったら、間髪を入れずそう答えられた。


「将来ってそんなに大事なのかよ、俺は隣に新城が居てくれたらそれで良い!」

「つまりは無職のヒモとして、両親の遺産を食い潰して女の稼ぎを当てにして、楽して暮らしたいって事か?」

「ぐっ…でも先輩達や同級生は喧嘩三昧で楽しそうだった!」

「アイツらは家が財閥や反社、一流企業で就職口に困ってなかったからなぁ。それに引き換えお前は一般家庭の出だろ?一時期この学園の風紀が乱れていたのを、喧嘩が好きという理由で不良達を鎮圧してくれたのは有り難いが、それを理由に就職口や大学への推薦状は書けないと散々言ってきただろ?」

「…」

「それに幼馴染みに固執しなくても、同級生の半神の子や他の花人の女の子にもモテてるんだろ?良いじゃねぇか逆玉の輿に乗っても」

「ソイツらじゃ駄目だ…新城が良い」

「だから遊び呆けて将来を考えてなかった自業自得だ。悔しかったらこの進路の紙に具体的な進路を書いてみろ」

「…」


そう言って担任からこの前貰って忘れて鞄の奥でぐしゃぐしゃになってるのと同じ、新しい進路の紙を貰う。


「それに新城由紀ってウチの学園でも結構有名だからな、ボサッとしてると他の奴に見合いで取られるぞ」

「は?見合い?あの残念な新城に見合いなんて来る訳ねぇだろ」

「そりゃ同級生やお前の尺度だ。見た目も美白麗人で家庭科は勿論成績優秀の優良株だ。今の時期いつ見合いが来ても可笑しくねえぞ?」

「っ…俺!じゃあ俺が見合いする!!」

「就職口も決まってないし、推薦入試も決まってないただの高校生に見合い話は来ない。それにただの不良相手だと国が認めない」

「何だよそれ!」

「それよりお前そろそろ喧嘩止めとけ、将来云々よりも鬼人の性質として何時食欲が「ちょっと就職してくる!」おいコラ!!待て!」


担任の小言を聞いてられなくて急いで職員室を出る。先ずは卒業した御曹司の仏井の所に就職活動に向かう、喧嘩で1番だったから親会社の課長にはなれると思う。




「本当に大丈夫か?アイツ…そろそろいつ人に対して食欲が湧いても可笑しくねぇぞ」

「念の為に制圧部隊に連絡しておきましょう」

「…」




×××




「…来ちゃった」


郵便ポストを覗くと私宛に手紙が来ていて、中を見ると国からお見合いを指定する日時と場所が書かれていた。確かに高校3年生だけどまだ早いよ…今は春よ春!春休み終わって3年生に上がったばかりなのに、もうお見合いとか…。


「終わった…私の夢」


無力感に私はベッドの上に倒れ伏す。甘いデートしたり、役員とのドキドキ五~七者面談を迎えて将来を語り合ったりしたかった。


「………………しょうがない、路線変更!」


こうなったらお見合いからのドキッ!一目惚れ!からの恋愛結婚に路線変更!確か未成年の花人を守る為に拒否権があって、無理だったら拒否すれば良いんだ!幸い私は産まれに恵まれて結構美人として産まれてきた!


「待ってろよお見合いの相手!この美貌の前に一目惚れさせてやる!!」


ベッドに足を乗せて高笑いをしていたら、お母さんに煩いと怒られた。


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