夢日記__20120412

 空が青い。

 街はゾンビで溢れていた。街にはゾンビしかいなかった。

 ゾンビ達に追われて逃げ回り、公園の公衆トイレに駆け込む。

 大きな公衆トイレの洗面台には「xxx記念」と書かれた白い紙箱があった。開けてみると中には大きな握力計。

 鋼鉄製で重量のある握力計を手にし、公衆トイレを出る。

 建物の影に隠れて、ゾンビを待ち伏せる。これなら撃退できる筈、と。

 通りを覗いてみるが、ゾンビの数が多い。

 暫く考えた後、結局逃げることにした。

 折角武器を手に入れたのに情けない。

 ゾンビ達は何かを探していた。おそらく俺だろう。大きな車の影に隠れてやり過ごす。

 そんな風に何度もやり過ごしながら移動を繰り返し、ゾンビの居ない路地へと辿り着く。

 見上げると空が綺麗だ。きっとこの光景は忘れてしまう。


 暫く歩いて御堂筋を江坂の方へと向かう。その方向から何かが凄い勢いで迫ってきた。

 小柄で黒髪の、少女だった。

 少女は凄い力で俺を地面に押し倒し、馬乗りになって肩を押さえつけてきた。

 その勢いで手放してしまった握力計は、何処かへ消えてしまった。

 歳の頃は13〜14歳くらいだろうか。小さな口から牙を覗かせた、肌の白すぎる少女。長い黒髪。ぶかぶかのキャミソール一枚で他には何も身につけていない様だった。

 少女は肩を掴んだまま、


「あたし女の子しか食わないんですけど!」


 とガチギレ状態であり、なにかを捲し立てている。

 その言葉がどんな内容だったのか全く覚えていないが、本気で怒っているのは判った。

 少女の罵倒は続いていたが、キャミソールの肩紐がズレて控えめな胸が顕になってしまい、それどころではない。

 動きに合わせて柔らかく小刻みに揺れる乳房と、胸部の中央に微かに見える胸骨の陰影。

 乳房の先端には薄桃色。

 少女は話を聞いてない俺に苛立ったのか、唐突に立ち上がった。

 裸足で地団駄を踏み、髪を振り乱す。キャミソールの肩紐は両方ズレていたが、顕になった胸を気にする様子はない。

 少女は地団駄を踏みながら声を上げ、やがて空に向かって叫び出した。

 か細い声。

 俺は立ち上がってその光景を眺めていた。

 なんか可愛いな、と思った。

 すると、


「ナカニシさんこっちです!」


 と、男のゾンビがこちらを指差した。

 すっかり忘れていた。俺は逃げてる途中だった。

 指差すゾンビに促されて、身長2mを超えるであろう緑色をした、モルボル顔の化け物が現れる。

 全裸で筋肉質の、大きな口をした、眼球を持たないその化け物は、それでもしっかり俺の方に顔を向け、そして走り出した。

 べったんべったんと異様な足音を響かせて迫ってくる。

 全力で逃げたが、引き離せない。

 走り続け、御堂筋沿いのマンションに駆け込むも、化け物は追ってくる。

 急いでエレベーターに乗り込み、11階のボタンを押した。

 迫る化け物と閉じるエレベーターの扉。

 化け物を置いて、エレベーターは上昇していく。

 そしてエレベーターは大きく揺れた。

 11階でエレベーターを降り、部屋の扉を次々開けようとする。

 ある一室の扉が開いたので中に入って鍵を閉め、チェーンをかけた。

 これで安心だと思った。

 だが、化け物は扉を部屋から引き剥がす。

 入口より大きな体を、無理やりねじ込む様にして入ってくる。

 その様を見て、なぜか母が近所で貰ってきたういろうを思い出した。

 そんな場合ではない。

 俺は部屋の奥へと走り出し、大きな硝子サッシを開いてベランダへと出る。

 ベランダの縁には布団が干してあり、逃げ場はなかった。

 咆哮を上げる化け物を振り返りって後ずさると、布団と一緒にベランダから落ちる。


 空は青い。

 眼下には都会の街並みが広がり、雉鳩の群れと、薄いコピー用紙の様に舞う布団。

 ゆっくりと落ちていく。

 ベランダからは化け物が顔を覗かせている。

 これはもう駄目かもしれん。


 だが、地面に激突する前に目が覚めた。


 起きた直後の感想は、ゲームオーバー。

 早朝。寝汗はかいてなかった。


 落下する夢はよく見る。なぜなのだろう?


 この夢の話を短めにPixivに書いて、モルボル顔の化け物の絵と少女の絵を掲載したところ、


「作者は病気」


 というタグをいただいた。

 そんな思い出。

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夢日記 羽津 玲人 @reito-hazu

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