夢日記__20130210

 不衛生で何かの施設の様に広い公衆便所。

 そこで何か人ならざるものを見た。

 黒い、猫背で成人男性くらいのサイズの何か。

 だが無視した。今は連れが居てそれどころじゃないと。

 取り敢えず、難しい顔をして携帯電話で通話しながら外に出た。待っていた人々に合流する。

 その、嘗て仕事を共にした人々と大通りを歩き、何かを話し合い、そして別れた。


 気がつくと、ホテルのベッドに寝そべっていた。

 何故そこに居るのか記憶がない。

 しかし、ザ・グレンリベットの空き瓶が転がっていた。ずっと飲んでいた気がする。

 窓の外には都市部の光景が広がり、足元には6車線の大きな道路。やけに車の流れが激しい。

 財布と家の鍵、携帯がなくなっていない事を確認して部屋を出ると、プレートには706とあった。

 一度エレベーターで1階まで下り、財布が尻ポケットにない事に気づいて乗り直す。

 一緒に乗った老夫婦が何か関わりを持ちたがっていたが、どう応えるべきか分からぬまま何か会話をして降りる。

 その自分の有様が妙に腹立たしい。

 エレベーターを降りると書店や紳士靴専門店、カフェなどが見える。

 それは都市部の地下にあるショッピングモールの様に華やかで、多くの通行人が柔らかいオレンジ色の光の中を歩いていた。

 財布を回収すると池袋東急百貨店の様な大きなガラス扉を押し開けて、延々と続く様な非常階段を降りる。

 風が強く、空は曇天。

 随分と長く下り、辿り着いた吹き抜けの書店兼レンタルDVDショップの様な店に入ってカウンターで精算を済ませた。


 明るい昼の街並みを歩き、いつの間にか日が暮れ、平屋の多い、奥に大きな鳥居のシルエットが見える住宅街に行き着く。

 何か不気味な気分に襲われて早足で歩きまわり、いつの間にか豊中市の昔住んでいたマンションにたどり着いた。


 そのマンションから小さな車道を隔てた向かい、黒く茂る植え込みにそれは居た。

 羽をばたつかせて威嚇する黒いシルエット。

 大めの鶏くらいのサイズの、人の頭がついた何か。ああ、オシチだ。オシチが居る。

 光る目がしっかりとこちらを捉え、禍々しい威嚇を繰り返す。

 植え込みの、よく覚えている位置で。


 昔、15センチくらいの小赤をそこに埋めた。

 それだけだったろうか?

 子供の頃は生物の蒐集と飼育ばかり行なっていた。他に何か埋めていてもおかしくない。

 その土の上で、オシチが威嚇している。

 だが何故だろう、酷く無感情にその光景を眺め、まるで無かったかの様に歩き出し、東寺内の三角公園を超えてオレンジ色の灯火が照らす地下道を歩く。

 オシチはついてきている。しかし、禍々しい怒りを湛えている筈なのだが威嚇する姿から何も伝わらない。

 本当に、何も伝わらない。モニターの向こうの他人ごとを見ているかの様に何も伝わらない。

 その取りこぼしている様な自らの有様を酷く不快に感じながら、ただ歩き続けた。

 一体何処に行くのだろう?

 明確な目的も何も思いつかず、オシチを連れて、ただ彷徨う。

 随分長く歩いた気がする。しかし、夜の闇と、無機質に煌々と輝く街灯と、ついてくるオシチ。それしかなかった。

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