第23話「星霊の境界」



放課後の図書室。窓から差し込む夕陽が、積み上げられた資料の山を赤く染めていた。


「これで12年前の新聞記事は全部」

翔がパソコンの画面から目を離す。

「施設の事故として報道されただけで、星霊術に関する記述は一切ない」


「当然ね」

柊が古い雑誌を閉じる。

「そもそも、星霊術の存在自体が、一般には知られていなかったんだから」


二人の前には、この数日間で集めた資料が山積みになっていた。新聞、雑誌、古い地図。そして星霊にまつわる伝承を記した古文書のコピー。


「でも、一つ分かったことがある」

翔がノートを開く。

「当時、似たような『事故』が、他の場所でも起きている」


「他の場所?」

柊が身を乗り出す。


「ええ。六本杉神社の他にも、星座にまつわる古い神社で、奇妙な出来事が...」


その時、柊のスマートフォンが震える。画面には「天宮双葉」の名前。


「もしもし、双葉?...え?...分かった、すぐ行く」


柊の表情が変化する。


「どうしたんです?」

翔が問いかける。


「音楽室で...アカネさんのカードが、また」




音楽室に駆け込んだ柊と翔の目の前で、不思議な光景が広がっていた。


アカネの持つ三枚のカード—蠍座、水瓶座、そして新しい赤紫のカード—が宙に浮かび、それぞれ異なる色の光を放っている。その光は、みらいの奏でるピアノの音色に合わせて、空中に何かを描き出そうとしていた。


「来てくれて良かった」

双葉が二人を迎える。

「この模様...翔くんなら何か分かるかも」


光が織りなす模様は、まるで古代の星図のよう。中心には蠍座と水瓶座。そしてその周りを、12の光点が取り囲んでいる。


「これは...」

翔が目を見開く。

「さっき見つけた資料と一致します。12の神社の位置関係が」


「ええ」

凛の姿が、窓際に浮かび上がる。

「かつて、星霊術士たちは12の聖地を結んで結界を張っていた。星霊の境界って呼ばれてたわ」


「結界?」

綺羅が不思議そうに首を傾げる。

「どうして?」


その時、アカネが目を見開いた。

「見える...昔の映像」


カードの光が強まり、空間に新たな映像が浮かび上がる。12の場所で星霊術士たちが、同時に星霊カードを掲げている光景。そして彼らの力が繋がり、巨大な結界のような膜を作り出す様子。


「星霊波動から、この世界を守るため」

みらいの指が、静かにピアノを奏で続ける。

「制御できない力が、外からこの世界に入り込まないように」




映像の中で、12の場所を結ぶ結界が完成する。淡い光の膜が、まるでドームのように空間を包み込んでいく。


「でも、その結界は」

カズマが静かに言う。

「12年前の事故で...」


「ええ」

凛の声が悲しみを帯びる。

「増幅装置の暴走で、星霊の境界は崩壊した。そして同時に、多くのカードが失われた」


アカネの水瓶座のカードが、より強く反応を示す。それは何かを訴えかけるような、切迫した輝き。


「待って」

アカネが目を閉じる」

「水瓶座のカードが...教えてくれる」


新たな映像が浮かび上がる。結界が崩れた瞬間、いくつものカードが光となって四散していく。そして、それぞれが12の聖地へと飛び散っていった。


「カードたちは...」

綺羅が声を震わせる。

「自分たちで封印を?」


「そう」

みらいがピアノから手を離す。

「暴走した波動から世界を守るため、自らを封印したの。そして同時に...」


「星天の協奏曲の楽章も」

翔がノートを広げる。

「12の場所に、分散して隠された」


その瞬間、アカネの三枚のカードが、さらに強い光を放ち始める。空中に描き出された星図が、まるで生命を持つかのように動き出す。


「これは...!」

柊が目を見開く。


12の光点の中で、新たに一つが明滅を始めた。それは—。




「獅子原神社...!」

翔が地図を見ながら声を上げる。

「光っているのは、獅子座の聖地」


「獅子座...」

綺羅が思わず呟く。その名が意味するものに、全員が気づいていた。


「獅子堂レオ」

双葉の声が震える。

「彼の...!」


その時、音楽室の扉が勢いよく開く。そこには、まさにその獅子堂レオが立っていた。制服姿の彼は、いつもの挑戦的な表情ではなく、どこか深刻な面持ちを浮かべている。


「やはり、ここだったか」

レオが一歩前に進む。その手には、獅子座の星霊カードが握られていた。

「僕のカードが、導いてくれた」


アカネの三枚のカードが、レオのカードに反応して輝きを増す。空中の星図も、より鮮明な光を放ち始めた。


「獅子原神社で、何が」

カズマが問いかける。


「昨夜から」

レオが真剣な表情で答える。

「異常な波動が観測されている。そして...」


彼は一瞬言葉を切り、窓の外を見やる。

「あの月斗という男が、現れた」


「月斗が!?」

アカネが思わず声を上げる。


「ええ。でも彼は、こう言っていった」

レオの声が低く響く。

「『選択の時が来た。獅子座の継承者よ、君の覚悟を示せ』」




「月斗との出会い、詳しく教えてください」

翔が一歩前に出る。


レオは窓際に歩み寄り、獅子座のカードを掲げる。夕陽の光を受けて、カードが真紅の輝きを放つ。


「昨夜、獅子原神社で月例の清掃があった」

レオが語り始める。

「古くから、獅子堂家に伝わる務めなんだ」


その言葉に、凛が目を見開く。

「まさか、あなたの家系は...」


「ええ」

レオが頷く。

「12年前、星霊の境界を守っていた家系の一つです」


空中に浮かぶ星図が、レオのカードに反応して形を変える。12の光点を結ぶ線が、より鮮明になっていく。


「清掃を終えて帰ろうとした時」

レオは続ける。

「月斗が現れた。彼は、僕の家系について全てを知っているようだった」


「そして、選択を迫った...」

みらいが静かに言う。


「ええ。『獅子原神社には、もう一枚のカードが眠っている。そして、星天の協奏曲の重要な楽章も』」


アカネの水瓶座のカードが、突然強く反応する。その青い光が、レオのカードと共鳴するように輝き始めた。


「私にも見える」

アカネが目を閉じる。

「獅子原神社の地下に...でも、それは...」


その時、レオのカードから予想外の反応が起きた。真紅の光が爆ぜるように広がり、空間に新たな映像を映し出す。


そこには—。




映像の中に浮かび上がったのは、12年前の獅子原神社の姿。境内には数名の星霊術士たちが集まり、その中心には若い獅子堂レオの父の姿があった。


「父さん...」

レオの声が震える。


映像の中で、突如として空が歪み始める。増幅装置の暴走による影響が、既に結界を揺るがし始めていた。


「これは、境界が崩れ始めた時」

凛が静かに説明する。

「各地の結界が、次々と...」


だが、獅子堂レオの父は諦めなかった。彼は獅子座のカードを掲げ、必死に結界を維持しようとする。そして—。


「もう一枚の獅子座のカード」

綺羅が息を呑む。


確かに、レオの父の手には二枚のカードがあった。二枚の獅子座のカードが放つ真紅の光が、結界の崩壊を必死に食い止めようとしていた。


「でも、限界が...」

双葉が映像に見入りながら呟く。


その瞬間、レオの父は決断を下す。二枚目のカードを神社の奥へと投げ込むと、残りの一枚で最後の抵抗を試みる。そして映像は、光の中に溶けていった。


「父は...あの日を最後に姿を消した」

レオの声が、重く響く。

「残されたのは、このカードだけ」


「そして今、月斗が現れて...」

翔が腕を組む。


「ええ」

レオが頷く。

「『もう一枚のカードを、取り戻すか封印するか。それが獅子座の継承者としての、お前の選択だ』...そう告げられた」




「レオさん」

アカネが一歩前に出る。

「私たち、力になれます。水瓶座のカードも、きっと...」


その時、音楽室の空気が変化した。アカネの三枚のカードと、レオの獅子座のカードが同時に反応を示し、新たな波動が空間を満たしていく。


「この感覚...」

みらいが急いでピアノに向かう。

「星天の協奏曲の断片が...!」


ピアノの音色が響き始めると、カードたちの光が音に同期するように踊り出す。赤、青、紫、そして真紅の光が交差する中、星図がさらに変化を見せた。


「見えてきた」

翔が食い入るように観察する。

「獅子原神社の地下に、かつての結界を支えた装置が」


「そう」

凛が頷く。

「各聖地には、結界を維持するための装置が設置されていた。そして、その装置に合わせて...」


「星天の協奏曲が演奏されていた」

柊が言葉を継ぐ。

「音楽と波動が共鳴して、結界を形作っていたんですね」


レオは黙って星図を見つめていた。その瞳に、決意の色が宿り始める。


「獅子堂家に伝わる言葉があります」

レオがゆっくりと口を開く。

「『星は独りでは輝けない。互いの光が、夜空を作り出す』」


「レオさん...」

綺羅の声に、期待が滲む。




「月斗の言う選択...」

レオが窓際から中央へと歩み出る。

「僕には、もう答えが見えている」


その瞬間、レオのカードから真紅の光が溢れ出す。まるで彼の決意に呼応するように、光は部屋中を優しく照らしていく。


「星霊術は、一人で完結するものじゃない」

レオの声に力が込められる。

「かつて父たちが作り出した結界も、術士たちの力が一つになって、初めて成し得たもの」


星図の光が、レオの言葉に反応するように明滅する。12の光点を結ぶ線が、より鮮やかさを増していく。


「じゃあ」

カズマが前に出る。

「獅子原神社での調査を?」


「ええ、でも」

翔が資料を確認しながら言う。

「今回は慎重に準備をする必要がある。六本杉神社での経験を活かして」


「そうね」

みらいがピアノから立ち上がる。

「時間は多くない。月斗も、きっと動き出す」


アカネの三枚のカードが、新たな反応を示し始めた。蠍座と水瓶座のカードが、中央の赤紫のカードを中心に回転するように光を放つ。


「これは...」

凛の声が緊張を帯びる。

「カードたちからのメッセージ」


空中に、新たな映像が浮かび上がる。満月の夜の獅子原神社。そして、神社の地下で眠る何か。


「明日が満月」

双葉が呟く。

「それまでに、準備を...」


「チーム分けをしましょう」

綺羅が提案する。

「レオさんと、私たちで...」




「調査チームと支援チームに分かれましょう」

翔が立ち上がり、ホワイトボードに向かう。

「まず、調査チームは—」


その時、レオのカードが突然強く反応し、真紅の光線が窓の外を指し示した。


「この方向...!」

レオが目を見開く。

「獅子原神社から、波動が」


みらいが急いでピアノに手をかける。一音が響いた瞬間、空気が震えるような振動が伝わってくる。


「間に合わない」

凛の声が緊張を帯びる。

「誰かが、もう動き始めた」


「でも、まだ満月まで...」

双葉が不安そうに言う。


「月斗だけじゃない」

レオが声を低める。

「他にも、失われたカードを狙う者がいる」


アカネの水瓶座のカードが青く輝きを増す。その光は、まるで警告のように明滅を繰り返す。


「行かなきゃ」

綺羅が決意を込めて言う。

「準備は移動しながら。手分けして必要なものを」


「私が案内します」

レオが頷く。

「獅子原神社への最短ルートを」


「じゃあ、こうしましょう」

翔が素早く指示を出す。

「アカネさん、綺羅さん、レオさんが先発。僕とカズマくんは装備を調達して後から合流」


「私たちは」

柊が双葉と視線を交わす。

「音楽室で波動の監視を。みらい先生と一緒に」


「了解」

全員が頷く中、アカネの三枚のカードと、レオの獅子座のカードが呼応するように光を放った。


夕暮れの空が、徐々に暗さを増していく。時間との戦いが、始まろうとしていた。




夕闇が迫る街並みを、綺羅、アカネ、レオの三人が駆けていく。レオの案内で、住宅街の路地を抜け、古い参道へと向かう。


「この先を左に」

レオが息を切らせながら指示を出す。

「裏参道があって...」


その時、アカネの水瓶座のカードが強く反応を示した。青い光が前方を指し示す。


「待って!」

アカネが立ち止まる。

「この感じ...六本杉神社の時と同じ」


三人が身を潜める茂みの向こうに、黒いマントの人影が。しかし、その姿は月斗とは明らかに違っていた。


『こちらアカネ』

イヤホンを通して音楽室に報告する。

『見知らぬ人物を確認。神社の方へ』


『波動に注意して』

みらいの声が響く。

『今、異常な乱れが...』


レオの獅子座のカードが突如として明滅を始める。真紅の光が、まるで警告のように周囲を照らす。


「上!」

綺羅の声と共に、木々の間から何かが降り立つ。それは—。


「まさか...」

レオの声が震える。

「それは、父の...!」


かつて封印されたはずの、もう一枚の獅子座のカード。それを手にした黒マントの人物が、三人の前に立ちはだかる。


「獅子座の継承者よ」

低い声が響く。

「その力、私が試させてもらおう」




黒マントの人物が放つ波動が、周囲の空気を重く変える。その手にある獅子座のカードは、レオの持つカードと同じ真紅の輝きを放っているが、どこか歪んだ様相を見せていた。


『気をつけて!』

音楽室からみらいの警告が入る。

『その波動は、制御を失っている』


「父のカードが、こんな風に...」

レオの声が悔しさを滲ませる。


「制御?」

黒マントの声が冷たく響く。

「むしろ、これこそが星霊カードの本来の姿だ。人の手など借りずとも、力は自ら目覚める」


その言葉と共に、封印されていたカードから異常な波動が溢れ出す。木々が軋むような音を立て、地面が震え始めた。


「違う!」

アカネが一歩前に出る。

「カードは、私たちと共に...!」


彼女の三枚のカードが同時に反応を示す。蠍座と水瓶座の光が、中央の赤紫のカードを中心に回転を始める。


「その光は...」

黒マントが一瞬、動きを止める。


「レオさん」

綺羅が静かに声をかける。

「私たちと一緒に。カードの本当の力を、見せましょう」


レオは深く息を吸い、カードを掲げる。

「父さん...見ていてください」


その瞬間、四人のカードが共鳴を始めた。アカネの三枚のカードと、レオの獅子座のカード。その光が交差する様は、まるで星座が降り立ったかのよう。


「なっ...!」

黒マントが後ずさる。

「こんな波動は...」


『聞こえる?』

イヤホンを通して、音楽室から天宮姉妹の声が重なって届く。

『私たちの奏でる、星天の協奏曲』


ピアノの音色が、波動となって空間を満たしていく—。




音楽室から響く星天の協奏曲が、光となって夕闇を貫く。双葉と柊の奏でる旋律に乗って、カードたちの輝きが一層強さを増していく。


「これが...本当の共鳴」

レオの瞳に、懐かしい記憶が蘇る。幼い頃、父が見せてくれた星霊術の輝き。


黒マントの持つ歪んだカードが、不規則な波動を放ちながら抵抗を示す。しかし、その時—。


「レオさんのカードが!」

アカネの声に、全員が目を見開く。


レオの獅子座のカードから放たれる真紅の光が、まるで獅子の咆哮のような形を成して空へと昇る。その光は、黒マントの持つカードへと優しく手を伸ばすように伸びていく。


「父さんのカード...戻ってきて!」

レオの叫びが、夕空に響き渡る。


『今よ!』

みらいの声が入る。

『星天の協奏曲、獅子座の楽章!』


音楽室からの旋律が変化する。それは力強く、しかし優しい調べ。黒マントの手の中で、歪んでいたカードが徐々に本来の輝きを取り戻していく。


「そんな...バカな...」

黒マントが動揺を見せる。

「力を...解放させるはずが...」


アカネの水瓶座のカードが青い光で空間を包み、蠍座のカードが深紅の光で波動を安定させる。中央の赤紫のカードは、まるで全ての光を調和させるように輝きを放つ。


「父さんは」

レオの声が、強い意志を帯びる。

「カードを封印したんじゃない。僕たちを信じて...未来に託したんだ!」


その言葉と共に、黒マントの手からカードが離れ、ゆっくりとレオの元へと舞い降りる。二枚の獅子座のカードが出会った瞬間、眩い光が辺りを包み込んだ。




光が収まると、黒マントの人物の姿は既になく、そこには二枚の獅子座のカードを手にしたレオだけが立っていた。


「これが、父さんの...」

レオの手の中で、二枚のカードが穏やかな輝きを放つ。それはもう、歪んだ波動を帯びてはいない。


『レオくん』

イヤホンから、柊の冷静な声が届く。

『神社の波動に変化が。急いで』


「獅子原神社」

アカネの水瓶座のカードが、青い光線を放って方向を指し示す。

「あの人は、きっと道を開けに来たんです」


その時、レオの持つ二枚のカードが共鳴を始めた。真紅の光が交差し、空間に何かを映し出そうとする。


「これは...!」

綺羅が息を呑む。


映し出されたのは、星天の協奏曲の楽譜の一部。しかも、これまで見たことのないフレーズ。


『獅子座の楽章ね』

みらいの声が感動を帯びる。

『しかも、完全な形で』


「父さんは知っていた」

レオの声が静かに響く。

「いつか必ず、この時が来ることを」


夕闇が深まり、空に星々が瞬き始めていた。その中でひときわ明るく輝くのは、獅子座の大星レグルス。


「行きましょう」

アカネが前を向く。

「満月まで、あとわずか」


『こちらアカネ』

彼女がイヤホンに向かって報告する。

『急いで神社に向かいます。翔くんたちも...』


その時、レグルスの方向から強い光が走った。それは獅子原神社の上空で大きく広がり、まるでオーロラのように揺らめき始める。


「月斗...」

レオの表情が引き締まる。

「待っているんだ」




裏参道を駆け上がる足音が、静かな夜気に響く。獅子原神社の境内が近づくにつれ、空のオーロラのような光は強さを増していった。


『翔くんたちと合流地点まで、あと200メートルです』

イヤホンにカズマの声。

『装備も無事に』


レオの手の中で、二枚の獅子座のカードが呼応するように輝きを放つ。まるで故郷に帰ってきたかのような、穏やかな波動。


「ねえ」

走りながらアカネが声をかける。

「さっきの黒マントの人...きっと」


「ああ」

レオが頷く。

「父のカードを、私たちに届けに来たんだ。だからあんな、回りくどい方法で」


その時、境内に続く石段が見えてきた。そこに立つ一つの影。


「月斗さん!」

綺羅の声が夜闇に響く。


月斗は振り返り、静かに微笑む。

「よく来たね、獅子座の継承者」


『気をつけて』

音楽室からみらいの声。

『境内の波動が、急激に...』


月斗がゆっくりと腕を上げる。漆黒のカードが、夜空に向かって掲げられる。


「さあ、本当の試練の始まりだ」


その言葉と共に、境内の空間が歪み始めた。まるで異次元への扉が開かれるように。


「みんな!」

翔の声が後方から駆けてくる。

「準備はできてます!」


レオは二枚のカードを強く握りしめる。

「父さん...必ず、真実を」


満月が雲間から顔を覗かせ、神社を銀色に染め上げる。新たな戦いの幕開けを告げるように。


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