第18話「新たなる夜明け」



一週間後。


春の風が吹く河川敷で、星川綺羅は北極星のカードを見つめていた。


「考え事?」

星見凛が近づいてくる。実験から解放された彼女は、以前の穏やかな表情を取り戻していた。


「うん...」

綺羅は空を見上げる。

「この一ヶ月で、いろんなことがあったね」


風に乗って、桜の花びらが舞う。


「ねぇ、集まってきたよ」

天宮双葉が声を上げる。


河川敷に、仲間たちが次々と姿を現す。


「みんな」

秋月みらいが前に出る。

「新しい星霊団の結成式を始めましょう」


十人が円を描くように並ぶ。


「まさか俺が」

獅子堂レオが苦笑する。

「こんなチームに入るとはな」


「運命かもしれないわ」

蠍島アカネが微笑む。


「さて」

織部翔が静かに言う。

「新しい星霊術の形を、示す時が来た」


その時、空に異変が起きる。


「これは...!」

天宮柊が声を上げる。


夜明け前の空に、無数の流星が現れ始めた。


「壮大なショーね」

日向晄が感心したように見上げる。


しかし——。


「違う」

春野カズマが弓を構える。

「この波動は...」


流星群の中から、巨大な影が姿を現し始める。


「まさか...」

月城まどかが震える声で言う。

「あの時の...!」


かつて理事長が追い求めていた、究極の力の具現化。

歪んだ星霊波動が、空を覆い尽くす。


「私たちの音楽が」

綺羅が静かに告げる。

「この世界には、まだ必要みたい」




夜明け前の空を覆う巨大な影。

歪んだ星霊波動が、世界を飲み込もうとしていた。


「これが...」

織部翔が分析的に見る。

「理事長の研究が残した、負の遺産か」


「違うわ」

星見凛が言う。

「これは、私たち全員の...」


「そう」

蠍島アカネが理解を示す。

「歪んだ願いが生み出した、影」


空からは、次々と星の光が消えていく。


「でも」

星川綺羅が前を出る。

「私たちには、新しい力がある」


「ああ」

獅子堂レオが頷く。

「みんなで見つけた、本当の星霊術」


「音楽は」

天宮双葉が明るく言う。

「心を繋ぐもの」


「そして」

天宮柊が静かに続ける。

「新しい可能性を生むもの」


「だから」

日向晄が手を差し出す。

「最後の演奏を」


「いいえ」

秋月みらいが微笑む。

「これは、新しい始まり」


十人が円を描く。

それぞれの星霊波動が、美しく輝き始める。


「春野くん」

綺羅が呼びかける。

「私たちの調べは、どこまで届くのかな」


「さぁ」

春野カズマが弓を構える。

「試してみよう」


「みんな」

月城まどかも決意を固める。

「最高の音楽を」


十色の光が交わり、完全なる調和を奏でる。


「スターリンク・エターナルシンフォニー!」


放たれた光は、まるで夜明けの光のよう。

影を消し去るのではなく、優しく包み込んでいく。


「聴こえる...」

綺羅が目を閉じる。

「星々の声が」


影は次第に形を変え、新たな星々となって空に広がっていく。


「これが」

レオが感嘆の声を上げる。

「本当の星霊術」


夜が明け、朝日が昇り始める。


「終わったの?」

双葉が尋ねる。


「ううん」

綺羅が微笑む。

「今が、本当のスタート」


「新しい星霊団」

翔が宣言する。

「これからが、本番だ」


朝日の中、十人の絆が一層強く結ばれていく。

これは終わりではなく、新たな物語の始まり。


「さぁ」

綺羅が仲間たちを見渡す。

「私たちの演奏会、始めましょう」


河川敷に響く十人の笑顔。

そして、永遠に続く星々の調べ。


第二部 完


(第三部「新星霊団編」へ続く)

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