第17話「地下研究所」



「ここが...研究所」


螺旋階段を降りた先に、巨大な実験施設が広がっていた。


「実験装置は奥の部屋」

星見凛が弱々しく指さす。

「でも、そこに行くには...」


言葉が途切れた瞬間、警報音が鳴り響く。


『侵入者を確認。防衛システム起動』


「来るわ!」

蠍島アカネが警告を発する。


通路の両側から、黒い装甲に身を包んだ人影が現れる。


「星霊術士...?」

天宮双葉が驚きの声を上げる。


「違う」

日向晄が眉をひそめる。

「機械化された...人形だ」


「こんなことまで...」

月城まどかが震える声で言う。


「分かれよう」

織部翔が即座に判断する。

「このままじゃ時間が...」


「そうね」

秋月みらいが頷く。

「私たちは、実験装置の無効化を」


「僕たちは」

春野カズマが弓を構える。

「ここで足止めを」


「私も戦います」

星川綺羅が前に出る。


「待って」

獅子堂レオが制する。

「お前は凛と一緒に、他のメンバーを」


「でも...」


「大丈夫」

レオが不敵に笑う。

「俺たちの演奏、聴かせてやるさ」


綺羅は一瞬躊躇うが、決意を固める。


「みんな...必ず戻ってきてね」


三手に分かれる一行。


しかし、その時。


「待ちなさい」


低く歪んだ声が、施設中に響き渡る。


「まさか...」

凛の顔が青ざめる。

「理事長...!」


研究所の奥から、一人の男が姿を現す。

漆黒のローブを纏い、両目が不気味な光を放っている。


「よく来てくれました」

理事長が薄く笑む。

「実験の最終段階に、必要な試料が」


「試料...?」

天宮柊が警戒の声を上げる。


「そう」

理事長の目が、綺羅に向けられる。

「北極星の力こそが、究極の鍵なのです」


場内の空気が、一瞬で凍りつく。




「究極の...鍵?」

星川綺羅の声が震える。


「そう」

星見学園理事長の声が響く。

「北極星には、全ての星霊波動を制御する力がある」


研究所の奥で、巨大な機械が唸りを上げ始める。


「だから私は、待っていた」

理事長の目が狂気を帯びる。

「全ての星霊術を、一つに統合する時を」


「そんなこと...!」

星見凛が叫ぶ。

「星霊術は、心を通わせるもの!」


「甘い」

理事長が冷たく言い放つ。

「力こそが、全て」


その瞬間、機械から強烈な波動が放たれる。


「くっ...!」

獅子堂レオが膝をつく。

「この圧力...!」


「みんな!」

織部翔が警告を発する。

「力を奪われる!」


次々と倒れていく仲間たち。

しかし——。


「違います」


綺羅が、一歩前に出る。


「星霊術は...音楽なんです」

彼女の周りに、純白の光が広がり始める。

「心と心を、繋ぐ音楽」


「ナンセンス」

理事長が手を翳す。

「全ての力を、吸収してみせましょう」


波動が渦を巻く。

だが——。


「聴こえる...」

綺羅が目を閉じる。

「みんなの心の音が」


倒れていた仲間たちの体が、徐々に光を放ち始める。


「なっ...何故!?」

理事長の声に、焦りが混じる。


「理事長」

日向晄が立ち上がりながら言う。

「気付いていないんですか?」


「星霊術の本質に」

蠍島アカネも続ける。


「みんなの心が...」

天宮双葉が微笑む。


「一つになる時」

天宮柊が言葉を継ぐ。


「本当の力が」

春野カズマが弓を構える。


「生まれるんだ」

秋月みらいが頷く。


「さぁ」

レオが不敵な笑みを浮かべる。

「最高の演奏を」


「聴かせてあげましょう」

翔が締めくくる。


十色の光が交わり、完全なるハーモニーを奏でる。


「スターリンク・グランドシンフォニア!」


放たれた光は、破壊の力ではない。

心を通わせ、癒す力。


「これが...本当の...」

理事長の体から、黒いオーラが消えていく。


機械が、静かに停止する。

研究所に、温かな光が満ちる。


「終わったの...?」

まどかが不安げに尋ねる。


「ううん」

綺羅が微笑む。

「始まったんだよ」


「新しい星霊術の...」

凛が涙を浮かべる。

「本当の音楽が」


地下研究所に、朝日が差し込み始めていた。





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