第16話「潜入作戦」



夜の帳が下りた星見学園。


「施設への入り口は、体育館の地下」

銀髪の少女・月城まどかが説明する。

「でも、センサーが...」


「任せて」

蠍島アカネが自信を持って言う。

「私の毒霧で、一時的に機能を停止できる」


九人は体育館の陰に身を潜める。


「作戦の確認を」

織部翔が声を潜めて言う。


「三手に分かれて」

秋月みらいが地図を広げる。

「まず、アカネさんとレオさんが警備を」


「次に」

日向晄が続ける。

「僕と翔さん、それにカズマくんで実験装置の無効化を」


「そして」

星川綺羅が決意を込めて言う。

「私たち残りのメンバーで、凛さんたちの救出」


月明かりが、彼らの緊張した表情を照らす。


「準備はいい?」

獅子堂レオが問いかける。


全員が静かに頷く。


「行動開始」


アカネの毒霧が、センサーを包み込む。警報音も鳴らずに、彼らは建物内に潜入。


「ここ」

まどかが床の一角を指さす。

「隠し扉の...」


その時。


「誰かいるわ」

天宮柊が警戒の声を上げる。


廊下の先から、足音が近づいてくる。


「隠れて!」

天宮双葉が咄嗟に声を上げる。


しかし、逃げる間もなく...。


「よく来てくれました」


声の主は、見覚えのある人物だった。


「凛...先輩?」

まどかが驚きの声を上げる。


星見凛が、一人で立っていた。しかし、その姿は何かが違う。


「その目...」

春野カズマが弓を構える。

「まるで...」


凛の瞳が、不自然な光を放っていた。


「実験は、成功したのよ」

凛の声が、どこか虚ろに響く。

「これが、究極の星霊術...」




「究極の...星霊術?」

星川綺羅の声が震える。


星見凛の周りに、禍々しい光が渦巻き始める。それは星霊波動でありながら、どこか歪んでいた。


「見せてあげる」

凛が右手を上げる。

「完全なる力を...!」


放たれた波動が、体育館を揺るがす。


「これは...」

日向晄が身構える。

「星霊波動が暴走している!」


「凛先輩!」

月城まどかが叫ぶ。

「お願い、目を覚まして!」


しかし、凛の瞳の光は消えない。


「みんな」

織部翔が声を上げる。

「シンフォニーの準備を!」


九人が円陣を組もうとした瞬間。


「させない!」


凛の波動が、彼らの陣形を分断する。


「くっ...!」

獅子堂レオが壁に叩きつけられる。

「この力...常軌を逸してる」


「でも」

綺羅が立ち上がる。

「聞こえる...」


「え?」

蠍島アカネが振り向く。


「凛さんの心の...悲鳴が」


その言葉に、全員が耳を澄ます。


確かに...歪んだ波動の奥に、小さな音が。


「そうか」

秋月みらいが理解を示す。

「これも、音楽なの」


「みんな!」

綺羅が声を上げる。

「今度は...凛さんの音も、一緒に!」


九人が、再び円陣を組む。


「星霊シンフォニー!」


放たれる九色の光。しかし今回は、その光が凛の波動と共鳴し始める。


「な...何を...!」

凛が混乱を見せる。


「聴こえるでしょう?」

綺羅の声が、優しく響く。

「本当の星霊術の...音色が」


シンフォニーが、凛を包み込んでいく。


「こんな...温かい...」

凛の瞳から、不自然な光が消えていく。

「音楽...」


そして——。


「やっと...届いた」

天宮柊が安堵の声を上げる。


凛の体から、黒い靄が消えていった。代わりに、彼女本来の星霊波動が輝きを取り戻す。


「私...何を...」

正気を取り戻した凛が、混乱した様子で周りを見回す。


「大丈夫」

天宮双葉が支える。

「もう、安全だよ」


「でも」

春野カズマが警戒を解かない。

「他のメンバーは...」


「地下に」

凛が弱々しく告げる。

「みんな、地下の研究室で...同じ実験を...」


「行こう」

レオが決意を込めて言う。

「一人も、見捨てちゃいけない」


全員が頷く。


夜は更けていく。しかし、彼らの戦いは、まだ始まったばかり。


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