第15話「新たな絆」



「もう一度!」


休日の河川敷で、獅子堂レオの声が響く。


「星霊シンフォニー!」

星川綺羅の指揮に合わせ、九人の光が空に広がる。


北斗学園の六色。

陽南学園の金色。

レオの真紅。

秋月みらいの銀色。


新しい音楽が、朝の空気を震わせる。


「まだ...足りない」

日向晄が額の汗を拭う。

「このメンバーでの共鳴が、完璧じゃない」


「そうね」

蠍島アカネが分析的に見る。

「特に、獅子座とオリオン座の波長が...」


「おい、俺の責任か?」

レオが織部翔を見る。


「いや、俺だ」

翔も素直に認める。

「まだ、呼吸が合わなくて」


「でも」

天宮双葉が明るく言う。

「最初よりずっと良くなってるよ!」


「そうですね」

天宮柊も頷く。

「理論的には、可能なはず」


その時、春野カズマが不意に弓を下ろした。


「みんな、来てる」


振り向くと、見知らぬ少女が立っていた。長い銀髪が風に揺れる。


「星見学園の...!」

アカネが身構える。


しかし、少女は戦闘の構えを見せない。むしろ...。


「助けて」

震える声で、少女が言う。

「凛先輩が...みんなが...」


「どうしたの?」

綺羅が駆け寄る。


「実験が...暴走して」

少女の目に、涙が光る。

「このままじゃ、みんな...」


「場所は?」

レオが即座に尋ねる。


「星見学園の地下施設...」

「待って」

みらいが制する。

「罠かもしれない」


緊張が走る空気。しかし——。


「行きましょう」

綺羅が決意を込めて言う。

「この子の声...本物です」


「どうして分かる?」

晄が不思議そうに尋ねる。


「この子の心にも...音楽が響いているから」


その言葉に、全員が納得の表情を見せる。


「よし」

翔が前に出る。

「でも、その前に最後の練習を」


「シンフォニーの完成を?」

カズマが問う。


「ああ」

レオも頷く。

「今度こそ、心を一つに」


新たな試練を前に、朝日が眩しく輝いていた。





河川敷に、九人が円を描いて並ぶ。


「いいかい?」

日向晄が説明を始める。

「星霊波動には、それぞれ固有の周波数がある」


「うん」

星川綺羅が頷く。

「だから私たち、音楽として表現できた」


「でも」

獅子堂レオが続ける。

「単なる音の重なりじゃ、意味がない」


「そう」

織部翔も同意する。

「完璧な...ハーモニーが必要だ」


星見学園の少女が、不安げに見守る。


「みんな...」

蠍島アカネが声を上げる。

「まず、自分の音を、しっかり感じて」


全員が目を閉じる。


それぞれの星霊波動が、目に見える形で現れ始める。


北極星の純白。

オリオン座の青。

双子座の青と紫。

蠍座の深紅。

射手座の金。

獅子座の真紅。

太陽の金色。

天秤座の銀。


「聴こえる...」

天宮柊が呟く。

「みんなの心の音が」


「うん!」

天宮双葉も感じ取る。

「これまでより、ずっとクリア!」


春野カズマが弓を構える。

「矢も...より確かな音を奏でている」


「準備はいい?」

秋月みらいが問いかける。


綺羅は深く息を吸う。

「星霊シンフォニー...」


その瞬間。


全ての光が、完璧な調和を見せ始める。


「これだ...!」

レオが声を上げる。

「完全なハーモニー!」


九色の光が交わり、これまでにない音楽を奏でる。


それは破壊の力ではなく、創造の力。

戦いの音ではなく、癒しの調べ。


「私たちの...本当の力」

綺羅の目に、涙が光る。


シンフォニーは、河川敷全体を包み込み、そして...星見学園の少女の周りでも輝き始めた。


「あ...」

少女の体から、黒い靄のようなものが消えていく。

「こんな...温かい光」


光が消えても、その余韻は残り続ける。


「これで」

晄が満足げに頷く。

「僕たちも、一つのオーケストラになれた」


「さぁ」

レオが真剣な表情になる。

「次は、星見学園の仲間たちを」


「うん」

綺羅が強く頷く。

「私たちの音楽で...必ず救い出す」


朝日はより高く昇り、新たな冒険の始まりを告げていた。


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