第14話「新たな朝」
決勝戦から一週間。
朝もやの立ち込める校庭で、星川綺羅は北極星のカードを見つめていた。
「考え事?」
蠍島アカネが、静かに近づいてくる。
「うん...」
綺羅は空を見上げる。
「あの試合の後、いろんなことが変わったよね」
確かに、変化は大きかった。
日向理事長の告白により、黒の結社の正体が明らかになった。かつての星霊術士たちが、力の追求に走った結果として生まれた組織。
「でも、まだ終わってないわ」
アカネが真剣な表情を見せる。
「結社のメンバーの中には、まだ...」
その時、校門の方から声が聞こえる。
「おはよう」
日向晄が、いつもの笑顔で近づいてきた。
「朝から深刻な顔して、どうしたの?」
「日向さん...」
綺羅が心配そうに見る。
「お父さんは...?」
「ああ」
晄の表情が少し曇る。
「反省の日々さ。でも...」
彼は空を見上げる。
「星霊術の本当の姿を見せてくれた君たちのおかげで、新しい道を考え始めてるよ」
その時、校内放送が響く。
『全校集会を行います。生徒の皆さんは体育館に...』
「集会?」
綺羅が首を傾げる。
「予定になかったはずだけど...」
「行ってみましょう」
アカネが促す。
体育館に向かう途中、織部翔と出会う。
「翔先輩も?」
「ああ。秋月先輩から連絡があってね」
体育館の入り口で、天宮双葉と天宮柊、そして春野カズマが待っていた。
「みんな、来てた」
双葉が少し緊張した様子。
「なんだか...大事な話があるみたいだよ」
体育館の中に入ると、そこには秋月みらいの姿。そして...。
「獅子堂レオ!?」
綺羅が思わず声を上げる。
レオは腕を組んだまま、彼らの方を見つめていた。
「久しぶり」
レオの口元に、小さな笑みが浮かぶ。
「面白い試合だったな。決勝」
「どういうこと...?」
カズマが弓を握りしめる。
「話を聞いて」
みらいが前に出る。
「私たち...新しい問題に直面してるの」
晄の表情が引き締まる。
「やっぱり...」
天井から差し込む朝日が、新たな展開の予感を照らし出していた。
「黒の結社は、まだ完全には消滅していない」
秋月みらいが静かに説明を始める。
「むしろ...より危険な方向に」
獅子堂レオが一歩前に出る。
「星見学園が、完全に掌握された」
レオの声に力がこもる。
「星見凛たちは...実験台にされている」
「そんな...」
星川綺羅の声が震える。
「前回の実験は失敗した」
日向晄が説明を続ける。
「だから今度は、星霊術士そのものを...改造しようとしている」
「改造...?」
天宮双葉が恐る恐る尋ねる。
「星霊波動を暴走させ」
蠍島アカネが理解を示す。
「制御を失わせることで、純粋な破壊力に...」
重苦しい空気が流れる。
「でも」
突然、綺羅が声を上げる。
「私たち、見つけたじゃない?」
「ん?」
レオが興味深そうに見つめる。
「星霊術の本当の姿を」
綺羅の声が強さを増す。
「心を通わせる力を」
「そう」
織部翔が頷く。
「シンフォニーは、その証明だ」
「だったら...」
春野カズマが弓を握り直す。
「僕たちにできることが」
「ああ」
レオが不敵な笑みを浮かべる。
「だから俺は、ここに来た」
「私も」
晄が手を挙げる。
「父さんの過ちを、正さなきゃいけない」
「つまり...」
天宮柊が静かに言葉を繋ぐ。
「新しいチームを?」
「そう」
みらいが頷く。
「北斗学園、陽南学園、そして正統派の星霊術士たち。私たちで...」
「新しい星霊団を作る」
レオが言葉を継ぐ。
「本来の星霊術を守るために」
綺羅は仲間たちの顔を見回す。かつてのライバルが、今は同じ志を持つ仲間に。
「私たち...できる?」
綺羅の問いかけに、アカネが答える。
「できるわ」
彼女は確信を持って言う。
「だって、私たちには音楽がある」
「音楽か...」
レオが興味深そうに呟く。
「面白そうだな」
「じゃあ」
晄が手を差し出す。
「新しい演奏会の始まりってことで」
次々と重ねられる手。
かつてのライバル同士が、今は一つの目標に向かって。
「星霊シンフォニー」
綺羅が微笑む。
「今度は、もっと大きな音楽にしよう」
朝日が体育館を黄金色に染める中、新たな物語が、始まろうとしていた。
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