第12話「決勝への道」
「明日...決勝戦」
夕暮れの体育館で、星川綺羅は北極星のカードを見つめていた。
「考え込みすぎよ」
蠍島アカネが近づいてくる。
「昨日の試合、良かったじゃない」
「でも...」
綺羅が不安げに呟く。
「あれは偶然で...」
「違うわ」
振り向くと、秋月みらいが立っていた。
「あなたたち、大切なことに気付いた」
みらいが静かに告げる。
「星霊術の本質に」
「本質...?」
天宮双葉が首を傾げる。
「そう」
織部翔が説明を始める。
「星霊波動は、単なる力じゃない。それは...」
「心の響き合い」
天宮柊が言葉を継ぐ。
「だから私たちは、音楽という形で...」
その時、体育館の扉が開く音。
「やあ」
日向晄が現れた。
「ちょっと、話があってね」
「日向さん...」
「明日の決勝の前に、見せたいものがある」
晄は一枚の古い写真を取り出す。
「これ、10年前の星霊大会の写真」
写真には、若い星霊術士たちの姿。その中央に、見覚えのある人物が。
「これは...!」
春野カズマが息を呑む。
「黒いローブの...!」
「気付いてた?」
晄の表情が真剣になる。
「星霊大会の裏で、何かが動いてること」
重い空気が流れる。
「でも、なぜ私たちに...?」
綺羅が尋ねる。
「昨日の試合で分かったんだ」
晄が写真を見つめる。
「君たちの音楽に、希望を感じた」
「希望...」
「そう」
晄が続ける。
「星霊術が、力の戦いじゃなくなっていく可能性」
「それって...」
アカネが目を見開く。
「黒の結社の目的と、真逆...?」
晄は静かに頷く。
「明日の決勝」
晄の瞳が決意に満ちる。
「単なる勝負じゃない。私たちで、新しい星霊術の形を示そう」
窓から差し込む夕陽が、体育館を赤く染める。
明日への期待と不安が、静かに交錯していた。
日が落ちた後も、話し合いは続いていた。
「10年前から...」
織部翔が古い写真を見つめる。
「星霊術の militarization...武器化計画が」
「そう」
日向晄が頷く。
「星霊波動を、純粋な破壊力に変えようとする計画」
「それで、星見学園が出場を辞退したのね」
蠍島アカネが理解を示す。
「実験の次の段階に...」
「でも」
星川綺羅が立ち上がる。
「私たち、見つけたんです」
「ん?」
晄が興味深そうに見つめる。
「星霊術は...心を通わせるもの」
綺羅の声が強さを増す。
「だから、シンフォニーという形になった」
「そうだね」
春野カズマが弓を持ち上げる。
「僕たちの音楽は、壊すためじゃない」
「繋ぐため」
天宮双葉が明るく言う。
「理解し合うため」
天宮柊が静かに付け加える。
「面白い」
晄が立ち上がる。
「じゃあ、明日は...」
その時、体育館の窓から、流れ星が見えた。
「みんな!」
綺羅が声を上げる。
「願い事...しよう」
「えっ、こんな時に?」
双葉が驚く。
「うん」
綺羅は微笑む。
「みんなで同じ願い事」
理解した様子で、全員が目を閉じる。
心の中で響く願い。
それは——。
「星霊術本来の姿を、取り戻すこと」
綺羅の呟きに、全員が静かに頷く。
「決まりだね」
晄が笑顔を見せる。
「明日は、最高の演奏会にしよう」
「でも」
秋月みらいが心配そうに言う。
「黒の結社も、動き出すかもしれない」
「大丈夫」
翔が断言する。
「私たちには、シンフォニーがある」
「そうだよ!」
双葉が拳を突き上げる。
「私たち、絶対勝てる!」
「いや」
晄が首を振る。
「勝ち負けじゃない。明日は...創造なんだ」
「創造...」
綺羅がその言葉を噛みしめる。
夜空に、星々が煌めき始めていた。
まるで、彼らの決意を祝福するように。
「じゃあ」
晄が手を差し出す。
「明日、素晴らしい音楽を」
全員の手が、重ねられる。
「明日こそは」
綺羅が強く握り返す。
「私たちの、本当の力を」
体育館に、確かな希望が満ちていた。
星々が見守る中、新たな歴史が始まろうとしていた。
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