第30話
打ち合わせにはいつもの倍の時間をかけた。
動画の収益は、再生回数とチャンネル登録者数が全てだ。飽きられたら終わる。それはテレビタレントでも地下アイドルでも、アダルト動画配信者でも同じだ。
簡易的なシナリオを作成して、グッズの仕様を確かめた。電池を入れるユウタの様子は淡々としたもので、もしかしたら使った事があるのかな、と苦い感情が軋みを立てる。ユウタにとって望む行為ではなかったのだと、今なら分かるから。
ユウタ、とわたしは言う。
「もし気が乗らないんだったら、しなくてもいいよ」
「何言ってんの? せっかく妃奈子が準備してくれたのに、利用しない手はねーだろ」
ソファーに座るユウタの手の中で、おもちゃがブルブルと振動する。
「……悪かったな。俺が昔の話をしたから気にしてんだろ? でもさ、本当にどうだってよかったんだよ。キモチイイ事は好きだし、美味しい飯を食わせてくれたし、メンバーだってぶっ飛んでたけどいい奴らだった。まあ、あまり真面目に練習してなかったし、学芸会みたいなグループって笑われてたんだけどさ。そういうのも含めて、どうだってよかったんだ」
カチリ、と電源をオフにして、ユウタは寝室を指さした。
「そろそろやるか。暗くなっちまう」
窓の外は、相変わらずの雨模様だ。
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