第14話

 わたしを認知してたのは、ユウタやメンバーだけではなかったようだ。


「そこの、姫の恰好したダサい女!」


 いつものようにグッズをバッグに詰め込んだライブの帰り道、ライブハウスから少し離れた場所で女の声に呼び止められた。女の子三人。わたしが初めてライブに訪れた時にはすでに熱狂的だった、ジャンフラのファンだった。


「わたし、ですか……?」

「そうだよ、あんただよ」


 赤髪を大きなお団子にした女の子が、その愛らしい風貌とは真逆な口調でわたしを睨んだ。


「あんた、ユウタに認知されているからって、いい気になってない?」

「なってません」


 それは嘘じゃない。何十万円貢いだって、わたしはわきまえているつもりだ。だけど、彼女達には通じなかったようだ。


「でもユウタと寝ているんでしょ?」

「は……?」


 身に覚えのない話だった。髪の毛を飾る大きなカチューシャに触れながら、否定する。


「別に、そんなんじゃ……」

「でもミッコちゃんはユウタと寝たって言ってたよ」

「エレナちゃんなんて、ユウタと寝てからファン降りたよね」

「あれはガチファンだったもん。リスカまでしてさー、ビョーキだったよね」


 古いライブハウスの、狭い観客スペースで、同じグループを応援しているはずなのに。

 わたしの知らない情報が目の前で飛び交っていく。女の子のカラフルなコートが、外灯に照らされてチカチカした。

 ユウタはアイドルだ。わたしだけのものではない。分かっていたつもりだったのに、どうしてダメージを受けてしまったんだろう。わきまえていると思っていたのは、一方的な薄っぺらいものだったんだろうか。

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