『私の人生のヒーローが不安そうだったので安心させる話/バルバルさん』

審査員A 7/6/2/3 18/30

審査員B 6/5/2/3 16/30

審査員C 3/4/2/4 13/30

47/90


【審査員A】18点

『文学少女を文学少女らしく、本や読書、創作を愛する姿を書けているか?』

⑦文学少女であるリリの恋人を理系にすることで対比構造的にリリの文学少女らしさが目立つようになっている。

冒頭でナゲットを食べるシーンがあり、ファーストフード店で進路の話をしているという描写も自然な感じがしていいが、こういう日常描写があるなら、例えば彼氏から「今も鞄の中に入ってるよね、本」「読みかけのと、新しく買ったのが1冊ね」のような鞄の中に本を忍ばせているみたいな描写があるとより本を好きという印象が伝わったかもしれない。


『作家、もしくはそれ以外の道を選ぶ理由、バックボーンを掘り下げられているか?』

⑥作家を選ばない理由、作家以外になりたいものについてはしっかり描かれているが、作家にならない理由として見ると少々物足りないと感じた。

この物語はあくまで『作家になる気のない少女が作家になるつもりだと勘違いされる』お話だと感じたので、作品の構造的にそもそも『作家にならない理由』を書きにくいと言うのはあるかもしれないが、極端な話、トウマと共に歩む道を選びながらでも作家になることを並行できたのでは?と思わせる部分が若干あった。


『文学少女に対して『癖』を込められているかどうか』

②文学少女でもありながら理系少女でもある。このキャラ付けは創作に置いてのヒロインのキャラ付けとしては良いかもしれないが、文学少女らしさを戦うコンテストでは少々マイナスな要素だったかもしれない。

文学少女としての印象を薄めないために、本や創作が好きだとわかる描写がもういくつかあれば印象が変わっていたように思う。


『文章、ストーリーが魅力的かどうかなど、その他の加点要素』

③恋人との進路相談という形にすることで将来に対しての考えを語ることを自然にしている舞台設定が上手かった。

恋人と離ればなれになるのではと考える彼氏の気持ちも共感を得られて良い。ラストで進路希望調査を使ってラブコメディとしてのオチもしっかりつけ、作家にはならない道を選んだこともわかりながらラブコメしているのが好印象だった。

ただ、この作品は少々、リリちゃんについての深掘りが浅かったように思う。


例えば、どんな小説を書いているのか?だ。

作中にトウマとの会話が登場するが、『短編小説』『閲覧総数が百を超えた』というワードではリリの人柄がわからない。

こういう場面は、例えば、トウマから「webで書いてるよね、男の子同士の……その」とつっこませ、リリに「ちょ!読まないでって言ったのに!」と照れさせる。もしくは。「ウエブで書いてるよね?魔法使いのやつ」「有名な映画に影響されて書いた黒歴史だけどね」のような形にすると、より彼女たちの普段のやり取りや人柄がわかって良いのではないかと思わされた。



【審査員B】16点

『文学少女を文学少女らしく、本や読書、創作を愛する姿を書けているか?』

⑥創作を愛すると言う見地から一つレイヤーの違う、ヒロインになりたいと語るさまは、文学少女というキャラクター性から創造されるものよりも、ずっとメルヘンである。

あくまで主人公が意中の相手との関係性を深めたいという切っ掛けに過ぎない点を考慮すると、その切っ掛けが創作のどんな場所から発生したか、もっとディープな部分にリファインの余地があり、そこを見たかったという思いが残る


『作家、もしくはそれ以外の道を選ぶ理由、バックボーンを掘り下げられているか?』

⑤ざっくばらんな言い方をすると、あなたのお嫁さんになりたいという創作として普遍性のあるフォーマットを選択しているが、ヒロインになることを選ぶバックボーンを語るには、いささか紙幅が狭すぎたきらいも否めない。

恋愛やラブコメにおいてヒロイン、或いはヒーローを好きになる瞬間の妙味が描かれていれば、もっとずっと味わい深く、読者も大いに引き込まれただろう


『文学少女に対して『癖』を込められているかどうか』

②秒針が一回転する、という表現は、文学性の発露だと思われる。こういった比喩の多様はなるほど文学少女! という感覚が味わえるので、適宜増量していくと、テーマに沿った出汁が強くなり、癖に昇華されていく可能性が高い


『文章、ストーリーが魅力的かどうかなど、その他の加点要素』

③主人公像とはこういうもの、という定義を打ち出しつつ、その判例を引き合いに出すところで、主人公が創作物を多く嗜んでいること、ひとこと付け足さなければ気が済まない性質、弱点は潰しておかないといけないと考えるマニア的な造形、描写が為されており、それを含めてラストの消し残しをあえて残すことで、意中の相手に対するマーキングを行う貪欲さを示せている。



【審査員C】 13点

『文学少女を文学少女らしく、本や読書、創作を愛する姿を書けているか?』

③文学少女らしさである本を読んでいる、書いたことがあるというステータスがない方がしっくり来るキャラクターに感じた


『作家、もしくはそれ以外の道を選ぶ理由、バックボーンを掘り下げられているか?』

④作家以外を選ぶ理由は描かれてはいたが彼のお姫様になりながらも作家になるというのは可能なのでは無いか?彼のどういうところを好きになったのかも知りたかった


『文学少女に対して『癖』を込められているかどうか』

②文学少女の癖が見たいのであり、癖のある文学少女が見たいわけではないのである


『文章、ストーリーが魅力的かどうかなど、その他の加点要素』

④文章や文法に違和感はあまり無く、するすると読めた

比喩表現に一つ物足りなさを感じたのでこの点数とした

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