『その文学少女は本を読む/ゆずリンゴ』

審査員A 9/8/4/3 24/30

審査員B 7/7/4/2 20/30

審査員C 6/5/3/2 16/30

60/90


【審査員A】24点

『文学少女を文学少女らしく、本や読書、創作を愛する姿を書けているか?』

⑨読書中の描写があり、紙媒体へのこだわりなど、文学少女らしさの書き方は参加柵の中でも特にレベルが高かった。ミステリー好きだからか、地の文で『22:00』のように時間をきっちりと書いているのも好印象。(ミステリー小説において時間というのは非常に重要なため)


『作家、もしくはそれ以外の道を選ぶ理由、バックボーンを掘り下げられているか?』

⑧編集のような立場になるというオチに繋がる青年との出会いがストーリー的にも、今回のコンテストの趣旨に合うという意味でもとても好印象だった。

ただ、好みの話をするならば2000文字という限られた文字数の中で情報量を上げるには『青年が本道の勧誘に失敗する』という導入よりも、『青年が書いた同人誌のような小説本、もしくは原稿を拾って勝手に読んでしまい、それを読んでいる最中に青年に声を掛けられる』という形にし、最後に「ちょっと意見を言ってもいいかしら?」という一言で締める方が編集者になるというオチへより綺麗に繋げられたように思う。


『文学少女に対して『癖』を込められているかどうか』

④作品を読んでいて『私の中の文学少女はこう!』という、文学少女に対する癖―へき―というよりも癖―くせ―がつめ込まれていた。


『文章、ストーリーが魅力的かどうかなど、その他の加点要素』

③コンテストの趣旨に即したストーリーや描写が多く全体的に好印象だった。細かな場面転換は好みが分かれるところだが、回想込みで小学生から大学卒業までの時間の流れが描かれているところが好印象。

あとは、細かい描写に遊び心や作者の意図が張り巡らされるようになれば作品の完成度が段違いに高くなると感じさせるポテンシャルがあった。


例えば、作中に、

『それに体を動かす事も無いから疲れな……

いや、長時間読んでいれば目は疲れるし、手も疲れてくるか。』

という描写があるが、こういう部分は「それに体を動かす事も無いから疲れない。」と書き切ってしまい、直後に、寝転がって本を読んでいたので顔に本を堕としてしまう。みたいな描写にして読者に「いや、手疲れとるやんけ!」とつっこませるという風に描いても動きがあって良いかもしれない。


【審査員B】20

『文学少女を文学少女らしく、本や読書、創作を愛する姿を書けているか?』

⑦ミステリーが好きな文学少女としての像が、作者の中に明確にあると思われる。

現代的なミステリー、トリックを優先しても許される作品を読めるという土壌で成長してきたと思われる主人公は、時間について勤めて厳密に語り、時刻表トリックなどを嗜好しているだろうことが(後のタイムパラドックスからも)読み取れる。

また、幼少期に学友達の益体がない、実態のない会話に興味がなかったからこそ、カッチリと答えがはまるミステリーに興味を持ったのだと考えると、必然性が見えてすばらしい。


『作家、もしくはそれ以外の道を選ぶ理由、バックボーンを掘り下げられているか?』

⑦自分の審美眼に添える作品が書けないので作家を目指さない、という理由は確かな説得力があり明瞭。寝る前に読む、騒がしいのは好みではないという点からも、のめり込むタイプ(かつ、のめり込む環境をつくりたいタイプ)の性質であることが明示されており、書くことには集中出来ないのだと読み取れる。

なぜ小学生のときに本好きになったのか? オリジンはなんだったのか? というバックボーンが仄めかされていればもっと強かったかも


『文学少女に対して『癖』を込められているかどうか』

④作者の中にある、これぞ文学少女! という形がでているように思われる。文学少女ならばかくあるべきというスタンスが明瞭。モノローグを語り続けることからもこれが窺える。

読書の感想として、読者が「それはそう思う!」となるようなものが出力できれば満点もあったかも。


『文章、ストーリーが魅力的かどうかなど、その他の加点要素』

②主人公が読み、彼がつくるという対照的な形を名前として導入している部分にこだわりを感じた。



【審査員C】16

『文学少女を文学少女らしく、本や読書、創作を愛する姿を書けているか?』

⑥文学少女らしく書かれていたと思う


『作家、もしくはそれ以外の道を選ぶ理由、バックボーンを掘り下げられているか?』

⑤読むのが好き、というのは書かない理由になり得ない、とまでは思わないが少し足りないように感じる。この少女は本が好きというより本以外に興味が無いだけなのではないか?


『文学少女に対して『癖』を込められているかどうか』

③容姿も込みで"文学少女らしく"描かれていたように思う、これもまたテンプレなのだろうか。癖は感じ無かった。癖とは勝手に生まれるものでは無く生み出すものなのである。


『文章、ストーリーが魅力的かどうかなど、その他の加点要素』

②時系列が飛び跳ねるものが好きではないというのもあるが飛び跳ねるなら飛び跳ねるで理由や繋ぎをしっかりしてもらわないと急に飛んでびっくりしちゃうのである

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