第一幕 ヤンデレたちとの出会い
第1話 誕生
「あんぎゃ~~~!!!」
「おぉ、我が子よ…!!!」
「あなた、抱いてあげて…」
僕は生まれたのか。
ここは…ずいぶんと
「ホワイト公爵家の待ちに待った子供だ!」
え?公爵家?女神様がいい待遇とは言ってたけど生まれもいいとこなのか。
「そうだ!三か月後に大きなパーティをしよう!そうだ王宮のロイヤルホールを使おう!そうすれば腰の重いアーヴィンも出るほかないだろう!!」
王宮でパーティ!?アーヴィンて誰!?てか高く掲げるのやめて!!怖い!!寒い!!恥ずかしい!!
「あなた、そこそこにしてね」
「あ、はい」
公爵家の人間も奥さんには逆らえないんだな…
てか奥さんじゃない…!?
アレがついてる…
お、男!?
男が僕を生んだのか!?どうなってんのまじで…
「あなた、この子に名前を…」
「そうだな…ルーカス、ルーカスにしよう!!この子は我が公爵家に光をもたらす存在だ!」
ルーカス…ずいぶんとかっこいい名前をもらえた…
なんだかやっぱり、嬉しいな。
「よし、俺はさっそく王宮に報告してくる。セバス、後は頼んだぞ!」
「かしこまりました、馬車を用意させます。いってらっしゃいませ。」
セバスって執事か?やっぱ公爵家は違うな~って待って、なにあれ、ツノ生えてる?ヒツジっぽい耳もついてる…めっちゃ異世界じゃん…
「あぁ、私の子…かわいい…生まれてきて来てくれてありがとう…って」
僕を生んだお父さんが僕を見て固まってる…
なんだ?てかお父さんめっちゃ美人さんだな…
「あ、あなた~!!!!!!」
お父さんが大声でもう一人のお父さんを呼ぶと窓の外で馬車に乗る寸前だった父がピタッと動きを止めてくるっと方向を変え、こちらに走ってくるのが見えた。
「な、なんだ!?どうした!?」
「あ、あなた、ルーカスの瞳が…」
「瞳が!?瞳がなんだ!?」
「ルーカスの瞳が漆黒なんです!!!」
「え!?見せてみろ!!」
父に抱きかかえられ、瞳をのぞき込まれる。
もう一人のお父さんもずいぶんなイケメンだな…
「し、漆黒だーーーーーー!!!!?!??」
XJ〇PANみたいな叫び声をあげてお父さんが腰を抜かした。
おぉ、あぶな、落っことされるのかと思った。
「あぁ、あなた…やっぱりルーカスは…」
なんだ?黒い目はユラースア的にアウトなのか?僕を生んだお父さんは顔を手で覆い、泣いているように見える。もう一人のお父さんは僕をぎゅっと抱きかかえ震えている。
「やはりルーカスは光をもたらす存在だったのだ…」
え?いいことなの?どっち?
「あうぁ~」
お父さんの様子が知りたくて顔に手を伸ばしてみた。
やっぱしゃべれないし腕も短いから届かないや。
「今ここに女神ユラース様の愛し子が生まれた」
僕を抱えながら震えていたお父さんが僕を腕に座らせ、その場にいた全員に聞こえるように大声でそういった。
あ、そういうことね、黒い目が愛し子の目印なんだ。びっくりした~
次の瞬間、その場にいる全員が膝をつき僕に向けて手を合わせた。
「あぁ、女神様…!」
「愛し子様が公爵家にいらっしゃったわ…!」
「美しい…」
「私の目が黒いうちに愛し子様が見れるとは…」
みんなが口々に言う。
「急ぎで王宮に向かう。俺の脚で行くから馬車はいらん。」
「かしこまりました。」
脚?馬車で行ったほうが早いんじゃないか?
そう思ったのもつかの間、僕はウシのツノと耳が生えた女性に預けられ、お父さんは窓をぶち破って飛んでった。
僕のお父さんたちは規格外なのか?例外?これが普通なの?もうよくわかんない…
◇◇◇◇◇◇◇◇
「我がホワイト公爵家に第一子が生まれたことを報告する。」
「なんだそれしきのことでここまで飛んできて王宮の窓を、それも国王である私の執務室の窓を破ったのか?」
「それくらいいいじゃないか、アーヴィン」
「これで何回目だ…」
「報告はそれだけじゃない。今すぐ王宮内の貴族たちを呼び寄せろ。」
「はあ…お前本当に私がだれかわかっておるのか…」
アーヴィンはため息をつくと、そばにいる補佐に全員ホールに呼び出せと命令を出した。
数十分後
広く豪華な玉座の間に百数人の貴族たちが並び、玉座にはアーヴィンが堂々と座っている。
「ホワイト公爵、申せ。」
「はっ、我がホワイト公爵家に第一子が生まれたこと、その子が漆黒の瞳を持つ親愛神女神ユラース様の愛し子であることをここに報告いたします。」
「なんと…」
「愛し子様が…」
「本当か?」
「ここで嘘を申すわけもあるまい!」
貴族たちがざわざわとする。
さっきまで王座で威厳ある姿をしていたアーヴィンもあんぐりと口を開けて目をひん剥いている。
「わ、わかった。ごほん、今!ここヴィラニール王国に女神ユラース様の愛し子が1200年ぶりに生まれた!明日には全世界に声明を出す!皆、この喜びを分かち合おうぞ!!親愛神の祝福があらんことを!」
「「「親愛神の祝福があらんことを!!」」」
おまけ
「ルーカス様~私がわかりますか~?アンですよ~これからルーカス様の乳母を担当しますアンですよ~」
「あうぅ~」
「はわ…」
ベビーベッドに横たわる僕に話しかけたかと思えば、床にへたり込んで胸を押さえている。さっきからそれを何十回も繰り返している。
赤ちゃんを見たら座る病気なのかな?
◇◇◇◇◇◇◇◇
「ルーカス様みた?」
「見た見た~!漆黒の瞳は美しいのに…」
「え、なんかあったの?」
「お顔が可愛すぎる!!」
「なんだそれ、赤ちゃんってみんな可愛いじゃん」
「違うのよ!!ルーカス様はなんかもうぎゅってしてぷにぷにしたいし何というか…」
「なんなのよ?」
「ちょっと耳貸して」
「え?」
「なんて言うか、ごにょごにょ…攫ってしまいたくなるっていうか、自分のものだけにしたいみたいな気持ちになるのよ…」
「さ、攫う!?」
「しーっ!!声大きい!!」
「いやごめん、温厚なサラがそんなこというなんて…」
「マリーもルーカス様を一目見ればわかるわ。もちろんそんなことしようなんて微塵も思わないけど、それくらい可愛いってことよ!」
「なにそれ、怖いけどめちゃくちゃ気になるじゃないっ!」
「なにはともあれ十年間も恵まれなかったホワイト公爵家にお子が生まれて本当によかったわ。一年前まで旦那様も奥様も相当疲れてるお顔されてて見てられないくらいだったもの…」
「マリー、その話はもうしないってメイド長が言ってたでしょ!」
「あ、ごめんごめん」
「ていうかルーカス様のお付きやメイドは誰になるのかしら、選ばれたらいいのにな~」
「あんたはまだホワイト公爵家に来て1年なんだから選ばれないでしょ」
「まぁそうだよねぇ~」
続く
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