ヤンデレだらけの異世界BLは案外平和です~みんなから平等に愛されないとどうやら僕は成人までに殺されるらしい!?~
Lay
プロローグ
第0話
ここは日本、東京。
僕は学校が終わって帰宅してる途中だ。
いつもと変わらない風景にいつも混んでる電車。
好きな歌手の歌をイヤホンで聞きながら窓の外を眺めていた。
「なんか、寂しいな」
別に今の生活には何の不満もない。
僕を心から愛してくれる両親と、心を許せる友達と遊んで。
恋人はいないけど、それなりに楽しい生活だ。
でも、なぜだか物足りない。
いつもはこの渇きを毎日見ないふりをしているのに、今日は不思議と強く感じた。
「次は~
「あ、降りなきゃ」
パーンポーン
あ、そういえばCOSMOにチャージするの忘れてた。
今日はうまくいかないな…
「はぁ…」
帰り道がいつもより異常に遠く感じる。
「マシュー、迎えに来たよ」
「えっ」
後ろから肩をつかまれて振り返ると、そこには長身で金髪碧眼の男が立っていた。
「僕、マシュー?じゃないですけど…」
「そっかそっか、まだ怒ってるの?もう許してもいいころじゃない?」
「えっ、なんの話っ___っ!」
何のことかわからなかったので聞き返そうとした途端に口を手で覆われた。
「もう君の口から否定の言葉なんて聞きたくない」
意味が分からない。
口だけでなく鼻まで覆われているせいで息ができない。
「ん~っ!!!んむ~!!!」
「君の親を殺したのはやりすぎだったかもしれないけどそこまで怒る必要がある?君のことを虐待するような親なんていらないだろ?だからフィアンセである僕が君を守ってあげたのに」
だめだ。話が通じないタイプだ。しかも僕と誰かを勘違いしてる。
そろそろ酸素が足りなくなってきた…意識トぶかも…
「あぁ、ごめん、息苦しかったよね」
「っ、ぷはっ、げほっ、はぁ、はぁ」
死ぬかと思った。こいつはまじでやばい。怒らせないようにこの場を早急に去ろう。
「ほ、ほんとに僕、マシューって名前じゃないし、一幸だし、僕あなたとは初めましてだし、あと、えーと、僕、フィアンセなんて…恋人すらいないし、だからその…」
「わかった、わかったよ。もう、いい。やめよう。」
「よ、よかった…じゃあ、僕はこれで…」
なんかわかんないけど解決っぽい雰囲気だったのでその場を去ろうとした瞬間。
グシュ
背中に違和感。
次の瞬間、稲妻の衝撃のような鈍痛が体中に走った。
「あぁっ…う…ああああああっ!!!!!」
痛い、痛すぎる。後ろを見ると血の滴るナイフを持ち呆然としているさっきの男が、ふらふらとまた僕に近づいてくる。
「く、来るな、やだ、いやだ…」
「来世は君の親になりたいなぁ、あ、子供でもいいかも、はは、君に愛情を注げるのも、君から注いでもらうのも子供ならできるよね、君もそう思うでしょ、それに親子ならすべて見られる、君が僕以外を見るならまたこうして、ねっ」
「やめ…」
グサッ、グサッ、グサッ
最後三回刺されたところで俺の意識は途絶えた。
「っは」
目を覚ますとそこはなんもない真っ白の空間だった。
「ねぇあなた、どうしたの?」
「え?」
え、だれ、なに、てかめっちゃ美人…
「え、ここどこ、だれ、ですか…?」
「あぁ、ごめんなさいね、
「えぇと…なんか、知らない人に急に刺されて…」
「あら、じゃあ冥界にいるはずなのに…あなた、私の目を見て?」
「え?」
キィィィィィン
女神ユラースの目を見た瞬間体が固まり、僕のすべてを見通される感覚がしてとても気持ち悪かった。
「あらあなた、間違いで殺されちゃったのね?まぁ、ずいぶん無残な…もう、ユリースったらなにやってるのかしらっ」
女神は腰に手を当て空間をすらすらなぞるように何かを見ながらぷんすかしてる。
間違い…?僕は間違いで殺されたのか?もう死んでしまってはしょうがないけどどうにも納得いかない。
「あなた、天使として私の補佐をするか、私の管理してる世界に転生するか、どっちがいい?」
「え?」
選択肢があるのか、一応優しい神様なのかな…?
「天使になるならもちろん悪いようにはしないわ!衣食住の保証と適度な仕事と天界での行動許可を与えるわ!それに天使になれば私の第一補佐になるからお仕事もすごくやりがいがあっていいわよ~!」
「やりがいって?」
「まあ…い、色々よっ」
天使になるのはやめとこ
「転生はどうなるんですか?」
「ん~転生なら私の愛し子として送ってあげるわ!あなたの地球での生活態度は人類の模範的存在だったから愛し子として生まれても問題ないし、私の世界では愛し子は1000年に一度しか生まれないから、それはもう大切にされると思うわ!だから転生しても衣食住も適度でやりがいのある仕事も与えられるわ!」
1000年に一人って…とんでもなく大きな仕事とか任されそうじゃないか?
「どんな仕事なんですか?」
「前に愛し子を送ったときは週に一度のミサで祝福を与えたり、月に一度、王国に魔物が出ないように結界を張ったりしてたわね~。まああとは年に一度、王室会議に出席してたと思うわ!」
「じゃあ転生で!」
「あなた微塵も迷わないのね」
女神様が頬を膨らませ少し怒った口調で言う。
やっぱり美人ってどんな顔してても美人なんだな…
「てか、女神さまの世界には魔物が出るんですか?」
「えぇ、魔法も存在するわ。女神の愛し子も魔法が使えるわ。」
「え、じゃあ戦わないといけないってこと…ですか?」
「あぁ、愛し子は攻撃魔法を使えないから戦いに駆り出されることはないわ!愛し子は聖魔法しか使えないのよ。逆にあなた以外の生き物は聖魔法を使えないわ。まあ例外として私の使徒には使える者もいるけどね!だから基本的に王宮から出ることはないと思うわ。」
正直魔物退治しろとか言われても僕絶対強くないしビビりだからめちゃくちゃホっとした。
それに王宮から出ないなら仕事とかあっても雑務的な感じなんだろうか。
「…やっぱり転生します」
「そう、あなたほどの可愛らしい子なら私の世界でもうまくやっていけると思うわ!」
「可愛らしいって…」
「あら、あなた自覚ないの?そんな可愛らしい顔ならいっぱい褒められてきたと思うけど」
「両親はいつも可愛いって言ってくれるけどそれは親だからだし、友達からは言われたことないし…」
「きっと周りが団結して何の争いもなかったのね…逸材じゃない…」
「逸材?」
確かに僕は童顔で少し幼い顔つきだから小さいころはよく褒められたけど…
中学生に上がってからは僕が女子に話しかけても女子が固まって無視されるし、男子に話しかけると「ひっ」とか言って地面に座り込んでうつむくほど嫌われちゃったから…
でも小学生からの友達たちは「お前は嫌われてるんじゃなくて好かれすぎてるんだよ」って励ましてくれたっけな…みんな元気かな…
「あぁ、言うの忘れてたんだけどあなた成人まで生きられない呪いがかかってるのよ。」
「は?」
「さっきあなたが殺された男いるじゃない?あの男、ユリースが精神支配してたらしくてね。
本当は別の人間を殺して別の世界に送って苦しめるはずだったのだけれど…
あ、ユリースは私の弟よ!私のことが大好きなのよね~!
私の毒耐性を強くしたくていつも微量の毒が入った食事を作ってくれるの!それに私って一応天界で二番目に偉いから暗殺者を送ってくる不届き者がいるんだけど、私が襲われるとそのちょっと後にユリースが様子を見に来てくれるの!
舌打ちされるけど私を心配して見に来てくれてるのよね~」
ずっと怖いこと言ってるよこの女神様。
え?気づいてないの?暗殺者送ってきてるの絶対弟のユリースとかいうやつだよ?
え、てかなんて呪いをかけてくれたんだ…
かけられていたはずの別人は何したんだ…
「姉弟で恐ろしいな」
「え?」
「まあ、呪われた経緯はわかりました。その呪いはどういうものですか?必ず死んじゃう感じですか…?」
「あぁ、安心して。一応対処法はあるの。」
「なんですか!?」
「みんなから平等に愛されることよ」
「ん???」
どういうこと?それが呪いにどう作用するの???
「この呪いは誰かからの愛情がほかの人より強くなると、愛情が憎しみに変わっていってしまって殺意になってしまうの」
「なんそれ」
「まあみんな色々あるでしょ」
「雑~」
「あなたには好感度が見えるようにするわ。だから好感度が常にみんな同じくらいの値になるように調節すれば大丈夫よ。殺されないしみんなから愛されるだけよ!」
「リスクでかぁ」
「じゃあ私のそばで働く!?」
「いや、女神さまも暗殺やらユリースやらの危険物質あるでしょ…」
「でもでもじゃあどうするの!?」
「自分でいろいろできるなら…やっぱり転生ですかね…」
「そう…まあ残念だけど、私の世界に久しぶりに愛し子が生まれるならそれでよしとしますか!」
女神がそう言うと、目の前にスライダーのようなものが出てきた
「この滑り台を滑ると転生よ。もう地球には戻れないし、この天界にも戻れないわ。王都の教会に行けば私と数分話ができるから困りごとがあったら来なさいね!」
「わかりました。間違いで殺されたのは腹立つけど転生の機会を与えてくれて、ありがとうございます。」
お父さんとお母さんには申し訳ないことしたな…
僕がいなくなって悲しんでるかな…
なんか涙出てきた…
「僕の両親には育ててくれてありがとうって、生んでくれてありがとうって、伝えておいてください…僕をずっと愛してくれたから…ぐすっ、あとごめんねって伝えてください、ぐすっ」
「…そうね。本当にごめんなさいね…あなたの両親には祝福を与えるわ。」
「…ありがとうございます」
「それじゃあ、もう時間よ。私の世界、ユラースアっていうの。あなたにユラースアを気に入ってもらえると嬉しいわ。…頑張ってね!」
「はい、じゃあ行きます。ありがとうございました。」
なぜかすっきりした気分だ。新しい人生を、世界を、ここから歩み出そう。
足を踏み出す。
僕は滑り台に腰掛け、天界を後にした。
続く
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