鉄観音茶

@to_art_oo

第1話

 鉄観音というお茶があります。鉄を観ると音が鳴る・観た音が鉄である。鑑賞について視覚と聴覚につきましては、御茶で調べさせていただいているところです。その調べは中国から、諸説あるようですが、取り急ぎ簡単に確認したところ、風景のわりには美術の観点からは語られていませんでした。

 音を観ることに挑戦することは絵画には、ままあるかもしれませんが、クラシック音楽の楽譜には、観ることに専念する等には説明の概念がありません。どこかに書いてあるとしたら音符を左から右下に沿って正しく読み解きなさい、さもなくば別の音楽になるだろう、との脅迫です。この平均台から落ちないよう、とろとろ弾かせますか、走って平気ですか。初見演奏が得意なリストの指は人間離れしていたそうですが、目に見えない指の本数でした。

 それぞれ百階建てのビルの間に紐を渡しました。さて、みなさんはこの楽譜をどのように渡りますか。

 渡らないのが命綱です。渡ることについて御託を並べるのも時間稼ぎでしょう。悲鳴をあげているうちに夕暮れになるかもしれません。

 さて、烏龍茶、この烏と龍だけでも疑念があります。鉄観音茶は烏龍茶なわけですが、これでも説明が多すぎる。それで青茶と説明しているものもありますが、ずばり、こちら楽譜の方です。であれば鉄を観るとき確認するのは絵画の方です。

 中国ではどのように音を出しますか、鑑賞いたしましょう。

 《tie guan yin》とのことで、無理やりカタカナで音に近づいて鑑賞すると、ティエグアンイン、でしょうか。《手紙》のような音にも鑑賞できますね。手紙も茶葉も材質としては似たようなところなので何か抽出の表れでしょうか。《手違い》とも取れますが、烏が龍と何かを取り違えたのでしょうか。鳥籠かもしれません。

 私たちの頭の中の烏の姿は街中のカラスから想像がつきますが、私たちの頭の中の龍の姿はどこでみた噂や夢や絵の中の龍なのでしょう。最後に観た烏と龍の肖像に、責任が我々、取れるのでしょうか。

 記憶から描きました。そのほうが怪しまれる哀しさです。頭の中の哀しみのクラシック音楽を、それぞれ二重で奏でていただければと思います。

 雑に淹れられたら鉄観音茶を味わいましょう。名前があるせいで、人類は、こんなにも複雑な飲み物はない。

 名前まで味わえと、いつの段階に出来た呼ばれ方か、たとえばベートーヴェンも好き勝手されて、ムーンライトなどと呼ばれています。月は楽譜に沿って左から右へどこかへ走り避ります。楽譜では所詮十四番でした。それが起こるのは茶葉とて、観音茶でした。

 

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