第2話 『異世界召還』

「魔王よっ、光になぁあああれぇえぇぇ‼」


『おわだぐでぃびひでぶぅううう⁉⁉』


 勇者の『聖剣』が、深々と魔王の胸に突き刺さった! 魔王は最後の悪あがきで、聖剣を抜こうとするもビクともしなかった。


『オノォレェ勇者ァ! ワレ魂魄こんぱく百万回……』


「苦しめられてきた人たちの愛と怒りと悲しみだぁああぁ! メンッ、ツキッ、ドォオオオオ~~~~っっ‼」


 トドメだけでは飽き足らず、魔王を滅多斬りミンチにする勇者。完膚なきまでの4体蹴りオーバー○ル。まームリもない……勇者かれもまた家族や故郷を奪われたのだ。


 魔王は跡形もなく消滅した。やっと終わった……やっと。俺たちにとって、長い『十年間』だった。



 俺は元々、この世界の人間ではない。十年前、突如としてこの『異世界』に召還された。当然、初めは右も左も分からなかった。

 そこで出逢ったのが、リサだった。彼女は丁寧に状況を説明した。なんでも俺は『勇者』を鍛える為、召還されたとか。


 鍛えるもなにも、俺には『特別な力』など一切ない。そもそも何故、俺が『召還』されたかも分からない。

 リサは俺には『潜在的な力』があり、それが他の人間より群を抜いてるらしい。異世界こちらの生活に慣れることで、徐々に開花していくと説明した。


 俺も最初は半信半疑だったが、俺はリサが言った通り『魔術』の適性があった。コツを掴むと次々と属性魔術を取得し、わずか一ヶ月で当初の目的通り勇者を講義レクチャーするまでになった。


 最初こそ戸惑ったが、異世界むこうでの生活も満更ではなかった。俺は元の世界で早くに両親を亡くし、親戚の家を転々とした。

 親戚も表向きには何も言わなかったが、「とんだ厄介モノを残したもんだ」と陰口を言ってたのを俺は知っている。


 けど、異世界ここは違った。リサを始め人々は、ありのままの俺を受け入れてくれた。だから、俺もそれに応えようと思った。

 勇者のペルセウス、聖女のセシリアと共に魔王を討ち取れば、俺を元の世界に戻すと国王に『確約』してもらった。


 だが、道程はそんなに甘くはなかった。よくRPGゲームなんかでは『一日』でクリアしてるが、実際は十年掛かった。


 まさか異世界で、過去イチ『濃い』時間を過ごすハメになるとは……。しかし、その甲斐あって魔王を8った時は、これまでにない『達成感』があった。



「よかったなペル、本懐を遂げて」

「ああ、これもヒロシの協力のお陰だ。本当に感謝する」


 まぁ積る話は、王国に帰ってからにしよう。その時……!


――ゴゴゴゴゴゴゴ……!


 なんの前触れもなく起こる、立ってられないほどの激しい地鳴り!


「何っ、地震……⁉」

「皆っ、自分の安全を最優先しろ……!」


 ペルが叫ぶも、二進にっち三進さっちもいかない状況だった。魔王城は崩壊し始め、床が避けて俺たちは分断された!


「……っ! 勇者様っ、聖女様っ!」

「リサっ、危ぇ!」


 俺は咄嗟にリサを突き飛ばした! 直後……!


「……っ⁉ うわぁああああああああああぁ⁉」

「そんな……ヒロシ様ぁああああああああぁ‼」


 俺は裂け目クレパスに落下し、地獄に続いてそうな深い奈落へと墜ちていった……。

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