―End of the world― 『異世界帰り』の俺は終末世界を無双する

さんだー軍曹

第1話 『終末世界』

        【プロローグ】


 荒廃した都市。


 進撃するゾンビ。


 あちこちから火の手が上がり、後退を余儀なくされる抵抗レジスタンス軍。


指揮官コマンダーっ、これ以上は……!」

「持ち堪えろっ、前線ここを突破されるとマズい!」


 指揮官がゲキを飛ばすも、兵士の顔色には疲労と絶望が濃い。倒しても倒しても湧き出るゾンビ、いつ終わるやも知れぬ戦い……。

 果たして自分らは、無事に故郷に……家族の元へ帰れるだろうか?


 その時……! 


 轟音と共に閃光が、一帯を包んだ! 一瞬で蒸発するゾンビ集団。常人なら何が起こったすら分からないが、指揮官を始め兵士らの顔が絶望から希望に変わる。


「諸君っ、天は我らを見捨ててなかった! 『英雄』の帰還だ! かしらぁああっ、中央なかっっ」


 指揮官の号令と同時に数千規模の兵士が、一斉に中央の金色こんじきの重戦車に注目した。ハッチから俺が外を覗くと、兵士らは歓声で俺を出迎えた。


「みんな待たせてすまねぇ! だが、朗報を持ち帰った! 遠征の結果、ポイントKの占領に成功した!」


――おぉおおおおおおおお~~~~っっ‼‼


 歓声が喝采に変わった。ポイントKは大量のゾンビが蔓延はびこり、難攻不落となっていた。ここを『拠点』にすれば、抵抗軍は一気に勢力を増す。


 人類の反撃の狼煙のろしが上がった瞬間だった。


 上空を舞う深紅のヘリから、俺に無線が入った。


「やりましたね、ヒロシ様。貴方の的確な指揮のお陰で、まだまだ戦えそうです。貴方はまさに人類の希望です!」


「ヌカ喜びはまだ早いぞ、リサ。俺たちの戦いは、ここからだ」


 リサは無線越しに「失礼しました。私は一生、貴方のお側にいます」と俺に忠誠心を示した。

 彼女とは、昔からの付き合いだ。常に俺をサポートしてくれる。最初は『二人』だけだったな。


 ゲートが開き、俺たちは『拠点』に帰還した。大勢の避難民が、俺に声援を送った。


「救い主様っ、お帰りなさい!」

「私たちは、貴方だけが頼りです!」

「貴方の為なら、協力を惜しみません!」


 俺は民衆の声援に、ハッチから手を振って応えた。まさか『帰って』きてから、半年足らずでこうなるとは。


 俺の名は野田 大のだ ひろし、異世界帰りの元『大賢者』だ。今から十年前、勇者の補佐サポート役として『異世界』に召還された。


 俺の相棒ことリサは元『騎士』で、現実こちらでは俺の『秘書』を務めている。彼女とは異世界むこうで長い付き合いだったが、まさか『こっち』で再会を果たすとは。


 俺には『やるべきこと』がある。故郷を奪還し、かつて異世界を救ったように皆に笑顔を取り戻す。今日はその『第一歩』だ。


 相棒リサと同胞の為に!

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