第3話 情報収集
冒険者ギルドに辿り着いたゴウ。
中に入った途端、酒と食べ物の匂いが彼の鼻に突き刺さる。
食堂とも合併された施設の様であると悟ったゴウなのだった。
中に入ると、男女問わず、いかにも荒くれ者と言わんばかりの姿をした冒険者達が屯っていた。
全員、やはりゴウが珍しいのか、皆揃って彼に視線を向けている。
それでもゴウは気にせず、強者オーラを出しながら奥の方へとカツカツと歩んで行った。
……わけもなく、
「キャー! アタシみんなの注目集めちゃってなーい? ヤダもー! 恥ずインですケドー! チョー恥ずインですケドー!」
いつのまにかセーラー服着たギャル姿になっててキャッキャとはしゃいでおりました。
男冒険者にくっついて写メ撮ったり、誘惑する感じでぶりっこしたり、パンチラポーズ取ったりやりたい放題。
その結果……
「「「……オロロロロ」」」
漢漫画っぽい熱血青年キャラのエチエチギャル姿は、凄まじき破壊力を秘めてたのだろう。
彼を注目視していた飲んだくれ達が、堪えきれずに次々とリバースしていくのでした。
酒と料理の匂いで満ちた空気が、嘔吐臭により台無しとなった瞬間である。
そんな中、
「掴んできてんじゃねーぞゴルァ! テメーどう見たって新種のモンスターにしか見えねえだろーが!」
ギルドの奥の片隅から、揉め事の様な声が聞こえてきた。
「あぁん!? まだモンスター呼ばわりするのかこのガキん! 俺はモンスターじゃねーっつってんだろゴルァ!」
鼻を摘み、青ざめた顔となった冒険者達の視線が、ゴウから声の方へと向き変わる。
彼らの視界に映るのは、リーゼントヘアが特徴的なヤンキー風の冒険者と……、
「たくよぉ! ドイツもスイスも欧米も、俺のこのアニマルチックなスタイルを見ただけでモンスターだと決めつけやがって! 俺はモンスターなんかじゃねぇーぞぉ!」
額に青筋を浮かべている、いつのまにかギルドに居たクマ吉だった。
いやお前、どう見たってモンスター以外の何者でもないだろ。という、冒険者達の視線を気にせずクマ吉は叫ぶ。
「俺は……俺はだなァァァ!! 俺はーー」
「ドメスティック・バイオレンス!」
チェーンソーでZUBA!!
「ギャァァァァ!!?」
「えええええええ!!??!?」
自身の正体を明かそうとした瞬間、ゴウの手により首を撥ねられたクマ吉。
絡まれた冒険者は、喉奥から限界を超えた様な大声を上げて驚くのでした。
まぁ、目の前で重機で首チョンパされる光景を見てしまったらそうなりますよね。
「うちの住宅がすまない。なにせ俺達はこの街に初めて来たものだ。だからつい無邪気にはしゃいでしまった」
クマ吉の首を右手に掴むゴウが謝罪した。
ちょっと呆然としていた冒険者も、声かけてきたゴウによって我に帰るが、
「いや……俺もちょっとキレて……えっ!? 住宅!!?」
家=クマ吉って回答に驚き戸惑い出すのでした。
……いや、流石に無理があるだろうと誰もが思う。
「家なの!? コイツ家なの!? どう見たってそいつ動くぬいぐる……ん?」
当然の反応をする冒険者に「くいくい」と手招きするゴウ。
そして地べたに転がってる胴体の切口に指差した。
冒険者は半信半疑の気持ちで胴体を起こし、中を覗き込むと……、
「ママー、また屋根が吹き飛んだよー」
「あんらまぁーたリフォームしなきゃいけないじゃない。ちょっとオトーさーん」
「あーあ、こりゃひでぇな。修理費いくらくらいかかるんだこれぇ?」
玄関にキッチンに台所、浴室までもあり、そこに住む父、母、子の基本構成の家族。
…………、
「家族がすんでやがるゥゥゥゥゥゥ!!?」
マジで人が住む家であった事に『ガビーン!?』と驚き、声を上げた冒険者でした。
……無理なくね?
冒険者が驚き離れたところで、ゴウは持ってた首を胴体にカチっと填め直すと、
「そうだ! 俺は、俺の中に住む一家を災害から守り抜く立派な住宅dーー」
ZUDONッ!
ゴウは雄叫びを上げようとしたクマ吉(バカ)を百万トンのハンマーで叩き潰した。
「えっ!? なんで!? アンタの仲間じゃないのかよ!?」
「いや、なんかチョーシ乗っててムカついたから」
鼻ほじしながら答えるゴウに「えぇ……」っとドン引きするリーゼント冒険者。
ゴウはそんな彼に近寄り、
「喧嘩両成敗!」
「なでぅぇ!?」
流麗にバックドロップを決めました。
「さて、情報収集でもしますか」
「ゴウ……テメェ……必ず……殺す……」
恨み言を言ってガクッと気絶するクマ吉だった。
ゴウはクマ吉を無視し、こちらを見てる野次馬に目を向け口を開く。
「すまないが誰か、この辺りで『勇者』と名乗る人物を見ていないか? 俺は勇者と言う人物に用があってだな」
「ゆ、勇者って……」
ゴウの問いを聞いた冒険者達の表情が急に冷めた様なモノへと変わり、そのまま何も言わず解散して行った。
まるで知ってはいるが、関わりたくない人物の名を聞いたかの様に。
「アタシが教えてあげよっか?」
そんな時、解散していく人混みの中からラフな格好の白髪美少女が話しかけてくる。
「貴様は何者だ?」
「アタシはニナス。盗賊の職業ポジションの冒険者なんだ。よろしくね」
「盗賊だって?」
ニナスは可愛くウィンクしてそう答えた時、
「もしかして、貴方も私の大事なものを盗むつもりね!? おじ様みたいに!」
「奴は貴方の心を盗んでいきました」
「盗んでません」
いつのまにか復活して、青いドレス着たクマ吉に、便乗してトレンチコートを羽織ってるゴウ。
カリオストロごっこで遊ぶ二人だがニナスの否定であっさり終了した。
「君達は五人の勇者を探しているんだよね? その内の一人はこの街に居て今さっき出てったところだよ」
「何ィィィ!? そいつは今何処だァァァァァ!?」
ゴウの青筋かかった剣幕的表情に「アハハ……」的な顔して若干押されるニナスさん。
「ゆ、勇者権限使って適当なクエスト一枚受けて、街の近くの草原でモンスター狩りを……」
「おしっ! なら今すぐ出発だ! ささっと街の外に出るぞクマ吉!」
「イエス! ユア・ハイネス! 久しぶりに腕が騒ぐのう!」
目撃証言を聞いた途端、ゴウとクマ吉は目の色を変えてすぐさまギルドから出ようとした時、
「ちょ、ちょっと待ってください!」
とある大人びた女の人が、街の外に出る気満々の彼らを止めるか如く声をかけたのだ。
「ん? 何者だ?」
「はい、私は冒険者ギルドの職員の者です。見たところ貴方様は冒険者ではなさそうに見えたもので。街の外には人の命を害するモンスターがおりますので、冒険者ではない貴方様が街外に行くのは危険ですよ」
「ならどうすればいい?」
「簡単です。貴方様方々も冒険者として登録されればいいのです」
「っと言うと、俺達が登録すればいいんだな?」
「ハイ。登録には一人あたり七百サユンとなります。……正直、人ではない
「分かった。これで俺達を冒険者にしてくれ」
ゴウはチャリーンと受付のお姉さんの手に七百円(日本円)を渡したのでした。
「あの……別国のお方だということは理解したのですが、この通貨じゃこの国では使用不可でしてーー」
「ワッショイッ! これで俺達も冒険者だっ! さっさと勇者を探しに行くぞクマ吉ィィィ!」
「えっ!? ちょっ!? この通貨は使えないってーー」
「イエス! マイ・マジェスティッ! カタパルトスタンバイ! 発進OK!」
「は、話を聞いてください! 第一お金払えば冒険者になれるわけじゃなく、その後に受ける試験に合格しなければーー」
ギルドの人が必死で声をかけるも、本人達の耳には入ることはなかった。
全身から炎が燃えたぎる拳を握りしめたゴウ。
胸元に軍事的勲章バッジを大量に付けた特攻服を着て馬に跨ってるクマ吉。
このぶっ飛んだ連中を止められる奴は誰もいない。
「待ってろや勇者ァァァァ!」
「クマ吉! いっきまぁぁぁぁすっ!」
そして一人と一匹? がギルドから居なくなると、嵐が収まったかの様な静寂に包まれたのだった。
「……もしかしてアタシ、とんでもない人に頼んじゃったかも……」
そんな中、ポカンとしてるニナスから悲壮感溢れた声が転がった。
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