第2話 氷の女王

俺は入学式が終わり、適当に寮でダラダラしていた。


寮に入ると思うことがある、本当にここの設備はとんでもない。学園都市内に多種多様な店や娯楽などがあり生きていく上で何も困ることがない。


通貨は、毎月ちょっと裕福な暮らしが出来るくらいのお金が支給されたスマホに振り込まれる。

ここではこのスマホが学生証代わりになっている。


「腹、減ったな……」


気づけば、もう夜だった。

俺はかなり腹が空いたので、学校の食堂に向かうことにした。

でも……


「迷った」


学園が広すぎて、完全に迷った。

俺は方向音痴などで地図なのは読めない。

誰かに聞くしかない状況だ。


「あの人に聞くか……」


俺は適当に近くにいた、白銀のショートカットの女性に声を掛けることにした。

彼女は目は青くいかにも美人って感じの顔をしてる。


(なんか、誰かに似てる気がするが……気のせいだろう)


「あの、食堂ってどこかわかる?」


俺は彼女に話しかけたが、明らかに嫌そうな顔をして冷たい言葉で返してきた。


「あんた……私に話しかけるつもり?」


なんか周囲がザワつき始めた。

俺が何したってんだ、食堂の場所を聞いただけなのに。


「話しかけるっていうか食堂の場所を聞いただけじゃん」


彼女は俺に小さく舌打ちをして不機嫌そうな声で返す。


「あんた、まだ言葉の意味が分からないの? あんたみたいな底辺が私に気安く話しかけないでって言ってんのよ」


彼女はそう言って、おそらく異能で周囲の温度を一気に冷たくする。

氷系の異能だろうか。


「頼む、腹が減ったから早く教えてくれ」


彼女は俺に顔を近ずけこう言う。


「ほんとしつこいわね! 話しかけないで!」


俺は彼女の顔を近くで見て、思わず声が漏れてしまった。


「可愛い顔してんな」


そう俺が言った瞬間、彼女の顔が一気に赤くなった。

そんな怒ることを言ってしまったのだろうか。


「はっ! あっ! あんたっ! 急に何言ってんのよ! そんな事言って……私の事どう思ってんのよ!」


彼女はかなり怒っているようだ。

顔が真っ赤である。

ここは1度肯定しよう。


「どう思ってるって……別に嫌いじゃないし、結構好きだぞ?」


彼女の顔がもっと赤くなった、どうやら地雷を踏んだようだ。

女心はあまり分からない。


「す、すすすす……好き!!? あ、あんたいい加減にしなさいよっ!」


「もー俺は食堂の場所を聞ければそれでいいんだって……」


周囲はとてもザワついている。

こいつはそんなに有名人なのだろうか、なら有名人を怒らせたんだ、俺の学園生活はいじめの日々かもな。


「わっ、わかったわよっ! 着いてきなさいっ!」


「ありがとう、やっぱお前実は優しいんだな」


「うるさいっ!!」


さっきから褒めてるのになんで顔が赤いんだろうか。

怒るような事は言ってないのに……


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「ここが食堂!」


俺は彼女に案内され、ようやく食堂にたどり着けた。

でもこのままお礼もしないで帰すのは良くない気がする。


「せっかくだしこのまま一緒にご飯食わないか? 奢るぞ?」


「あっ! あんたねぇ!」


本当にこの子は何を言っても怒るな。

でもこのまま帰ってもらったらプライドが許せない、俺は彼女の腕を組み、もう一度奢らせて貰うことを頼んだ。


「ひゃっ!!」


「せっかくだし、一緒にご飯食べようぜ、奢るし」


「わ……わわ………わかったからっ! 腕離してっ!」


俺は彼女に飯を奢ることに成功した。

こういうのは少し強引ぐらいの方がいいと思う、相手もすごい遠慮してたからな。


俺は彼女と同じテーブルに座り、カツ丼定食を注文した。彼女はステーキとサラダとなんとも上品な物を頼んだ。


「それにしても、名前聞いてなかったな」


それを聞いて彼女はかなり驚いた表情を浮かべた。


「あっ、あんた、私の名前も知らないであんな事言ってたの……ほんとに呆れる……」


「あんな事?……まぁいい、 俺はレイ・クロウ、よろしくな!」


俺は手を差し伸べ、握手を申し出た。

彼女はすごい嫌そうにしながらも握手してくれた。


「私はエリナ・フロスト……」


「エリナか、よろしく」


どっかで聞いたことある苗字だがまぁいい。

今は食事を楽しもう。


(それにしても何故か周囲がざわついてるな……)


そう、さっき俺がエリナに話しかけた時からずっとザワザワしてるのだ。

だがおそらくこれはエリナに向けられた視線だ、彼女の美貌にみんな見とれてるんだろう、俺の事は多分誰も見ていない。


「お待たせしました、カツ丼定食とステーキとサラダでございます」


シェフっぽい人が俺たちに料理を持ってきてくれた。

とても美味そうだ。


そんな中、1人の女子生徒が俺らに近づいてきて、エリナに話しかけた。


「あっ、あの……Aクラスのアイリス様の妹さんですよね? あのアイリス様に伝えて欲しいことが……」


「ッ……!!」


エリナは今までにないくらい嫌そうな顔をした。


(ん? てかまて……アイリス様の妹?……)


まさかのエリナはこの学園の生徒会長、アイリス・フロストの妹だったのだ。


(どうりでなんか見た事あると思った……)


しかし、エリナの顔はとんでもなく嫌な顔をしている、おそらく、姉の事が嫌いなのだろう。

そんな嫌な顔をしているエリナを差し置いて女子生徒は続ける。


「あの! 私、アイリス様のファンなんです! だからあのよかったら……」


「…………」


俺はエリナの顔が見るに耐えなくて、気づいたら口が動いていた。


「おい、こいつはアイリスじゃない、エリナはエリナだ、聞きたいことがあるならアイリスに直接聞けばいい」


エリナは目が点になり、かなり驚いた様子だ。

女子生徒が俺に反発してくる。


「いや、あんたには関係ないんですけど、私はエリナ様に話しているんです!」


「お前とエリナの話に俺が関係ないように、エリナにアイリスは関係ない」


女子生徒は言葉を詰まらせ、俺に舌打ちをして帰っていった。

エリナが俺を見て1言話す。


「あなたってほんとにおかしいのね……」


「何がだ?」


エリナは何故か顔が赤くなっていた。

風邪でも引いているのだろうか。


「そういや、俺ら連絡先とか交換してなかったな、交換しよう、 これで友達だろ?」


「もう……わかったわよ……」


「そうだ、明日の登校も一緒に行こう」


「えっ! もうそれ完全にっ! カップ……」


「え? 何か言った?」


こうして、俺は学園に入って初めての友達ができた。





おもしれぇ! 続きを早く!

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