バー・ラティの随想

市月かづな

1.

星を、草を、花を照らす、

彼らは植物の一種である。


呼吸量を減らし、長期間の鮮度を保つ故に

長寿である。人間と相似点は無い。しかし

彼らは人間の美を模して生息している。

植物でありながら外形は整った子供などを模擬し、人間の言葉を発する。


私は彼らの"ひとつ"を見つけた。


【三〇九四朶一・二五】

コーラル山の丘、雪溶けに青白く広がる自然。

それらのどれよりも輝くもの。

怖しい程精巧で薄く、梢子細工の如く、

ソレは佇んでいた。

"少年"を模し、只一点。

花や蝶に目もくれず私を視つめた。

息を呑み 一歩、濡れた草を踏み締め、

私は近付いた。

「俺は 学者だ」

瞬かぬ瞳は碧い。

ソレが口を開くまでに風は二度吹いた。


『 そう 』

「だが危険は無い」

『 … 』

最初、震えていた筈の私の喉はいつしか安らいでいた。恐怖を感じるより早く、惹かれる。


彼がひとつ、瞬きをした。

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