第7話 春風の歪んだ過去


計算が崩れている。

だけど私は「まあインシデントは起こりうるものだしね」と思いながらお兄ちゃんの居る教室に向かう。

そして声をかけるとお兄ちゃんは直ぐ来た。

私は「?」を浮かべながらお兄ちゃんを見る。


「何だかお兄ちゃん雰囲気が違うね」

「...ああ。まあな」

「...どうしたの?」

「春風。...俺はあくまでお前とは付き合えない」

「...?」

「お前は...俺と付き合う為にこんな真似をしているのか」


そう言われた。

私は「...いや?違うけど」と否定をする。

だけどお兄ちゃんは「嘘は言わなくて良い。本当の事を言ってくれ」と言う。

その言葉に私はお兄ちゃんを見据える。


「...嘘って?」

「お前は俺と付き合いたい為にこうしているんだな?」

「...誰かに吹聴されちゃった?私は...そんな気は無いよ」

「じゃあ一体何で長門はあんなに恐れていたんだ。関係ない筈のお前を」

「...さあね」


それから私はお兄ちゃんを見る。

余計な事を吹き込まれた様な感じだ。

私は静かに背後を目線だけで見る。

そして...私は下崎先輩と目が合った。

成程ね。


「...お兄ちゃん。私は何もしてないよ」

「何もしてないって言葉が信じられないんだが」

「仮に私が何かをしたとして証拠があるの?」

「...長門とまた話をしたらしい」


その言葉に私は「は?」となる。

私は「...それはどういう意味?」と眉を顰めて聞く。

するとお兄ちゃんは「あの後、下崎さんが長門さんから聞き取りを行なって。今に至っている。所々にお前らしき影が見つかったらしくてな。...お前は...何らかの関係性を作り人を操っているんじゃないのか」と言葉を発した。


「...何でお前はそんな真似をする様になった。あくまでそれならお前は手を汚さずに済むが...汚い」

「...それでどうするの?私を」

「...俺はお前を改心させる」


その言葉に私はお兄ちゃんを見る。

それから私は「...それは無理だね」と言う。

そして私は「私は元から正常だから」と答えた。


「...お前の性格が出来上がったのはお前の父親の虐待のせいか」

「...」

「幼い頃の虐待のせいか。お前は...心に傷を抱えて...」


私は「お兄ちゃん。それ以上は...止めて」と耳を塞ぐ。

それからお兄ちゃんは「っ...」となってから私を見てくる。

心臓がバクバクと跳ね上がり。

そして...あの痛みの光景が蘇る。


「...だからもう止めろ。お前の...そのやり方は。止めてくれたらお前の事も考える」

「そう言って私を選ばないでしょ。お兄ちゃんは」

「無理だって。こんな無理矢理は」

「...無理?私に無理は無いね」

「俺は理解している。...お前のその願いは叶わない」

「...」


発作を抑え込みながら私はお兄ちゃんを見る。

そして冷や汗を拭う。

私は...静かにお兄ちゃんを見る。

お兄ちゃんは「...お前のその事は...俺は分かち合う事にしたんだ」と言う。


「...お兄ちゃん。これを誰かに言ったの」

「本当の事は言わず半分だが。...下崎さんと分かち合う事にした」

「...」

「...俺1人じゃお前を制御出来ない」

「制御?...私は何で制御されないといけないの?」

「お前のそれは暴走だ。...頭の中がな。...いつか悪い方向にいきそうな気がする」

「...」


そして心配そうな顔の下崎先輩が来る。

それから「...そういう事」と言う。

私はその言葉に「...私はこのままでも大丈夫だよ。正常だから」と言う。

するとお兄ちゃんは首を振る。

そうしてから私を見た。


「...お前は正常じゃないと思う。今の思考は」

「...」


私は静かにお兄ちゃんを見る。

それから私は盛大に溜息を吐いてから踵を返す。

そして「...また後で」と言ってから歩き出す。

そんな私にお兄ちゃんが「...お前から良い返事を待ってる」と言った。


「...良い返事...」

「そうだ。...今のお前なら...きっと」

「...」


そして私は歩き出す。

それから「...はぁ」とまた溜息を吐く。

私は狂ってない。


そう。

あの男のせいだから。

私は狂っているんじゃない。

あくまで私は...。


「...私はお兄ちゃんが好きなだけなのに何故?」


私はそんな疑問符を投げかける。

だが答えは当然帰ってこない。

その事に私は...額に手を添える。

そして私は歩く。



アイツと初めて会ったあの日。

当然だがアイツの目は死んでいた。

ただの警戒している...獣だった。


だけど俺はそんなアイツに優しくした。

そしたらいつの日かアイツは俺に心を開いてくれたのだ。

俺は幼い頃だが覚えている。

アイツが幼稚園の途中で俺に対して「すき」と言ったのを。


「...」


懐かしい記憶だな。

そう思いながら俺は「...」となってから窓から外を見る。

それから教科書を準備した。

すると高倉が「...妹さんとは分かち合えそうか」と聞いてくる。


「...さあな。アイツがどう考えを改めるかだな」

「俺としては変わると思うけどな」

「...そうか」


高倉は笑みを浮かべて俺を見る。

俺はその言葉に苦笑しながらまた窓から外を見る。

アイツには変わってほしいものだが。

どうなるか...。

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俺の5人目の彼女。男に寝取られたのだが...それと同時に義妹の様子がおかしくなった アキノリ@pokkey11.1 @tanakasaburou

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