第5話 善悪の流転


寒気がする。

というのも...その。

何だか俺目当ての感じの寒気。

俺は「?」を浮かべながら帰宅の準備をする。


「すまないが今日も部活だ」

「...あー。だろうな。忙しいよな高倉」

「そうだな。恋人作りに忙しい。貴様と違う」

「誰が貴様だよ」


そんな事を言い合いながら...俺は高倉に苦笑する。

高倉はバスケ部に一応所属している。

だが本人曰く補欠だそうだ。

だけど実際、何をしているか実態が掴めない。

まあ良いけど...本人が楽しんでいるしな。


「なあ。高倉」

「...ん?...どした」

「...いや。何でもない」

「何だよ」


そして「?」を浮かべる高倉と別れてから俺は校門前に行く。

今日は義妹も部活。

俺だけで帰ろうとした。

その時だった。


「椎葉くん」

「...下崎さん?」


俺に声をかけて来たのは下崎さんだった。

下崎さんは「一緒に帰っても良いかな」と言ってくる。

その言葉に見開きながらも「ああ」と返事をする。

それから歩き出した。


「椎葉くんは...ずっと浮気されていたよね。...気持ち的に...落ち込んでるよね」

「まあもうクズはクズと割り切っているしな」

「...そうなんだね」

「ああ...もう疲れた」

「...ね、ねえ」


河川敷が見える。

俺は河川敷を降りて行ってみる。

それから河川に石を投げ込む。

俺は「...どうした」と聞いた。


「...私と付き合ってくれない?」

「...ああ...え?」

「私は...貴方から離れないから」

「ま、待て。どういう事だ!!!!?」

「私は貴方が好き」


そして下崎さんは手を握ってくる。

俺は真っ赤に赤面しながら「どういう...え?」となる。

それから下崎さんは俺を見てくる。


「私は貴方が好き。...だからこそ付き合ってほしい」

「...しかし...」

「知ってる。自らが不幸だって事も。...だけど...」

「...」


俺は「無理だ」と答えた。

それから俺は苦笑する。

そして「俺、考えたんだけどもう彼女作らない事にしたんだ」と答える。

下崎さんは「...」となってから俺を見てくる。


「女子が不幸になる」

「...でも私は...そんな事にはさせない」

「させないと君が言っても俺がさせる。だから...無理なんだ」


そして俺は下崎さんを見る。

下崎さんは「分かった」と笑みを浮かべる。

それから「貴方が落ちるまで頑張ったら良いんだ」と笑顔になる。

え?いや。そういう意味じゃない。


「...待ってくれ。そういう...」


そこまで言った時。

「あの」と声がした。

河川敷の上を見る。

そこに...長門都奈(ながととな)が居た。

美少女...っていうか今の注目点はそこじゃない。

コイツ...。


「...お前...長門...」

「...あ、あの...話だけを聞いてほしい」

「しかしお前は浮気したろ。...4人目の彼女で」

「...それは...実は...」

「...今更なんだ?何をしに来た」

「私、付き合う気は無かった」


そう答える長門。

俺は「?」を浮かべながら長門の視線を見る。

長門の視線は真っ直ぐ俺を見ていた。

何だコイツ?何が言いたい。


「それどういう意味?」


下崎さんが聞く。

すると長門はこう告白した。

目線を彷徨わせながら「...私は寝取られた。...だけどそれは無理矢理だった」と。

俺は「...は?」となる。


「...待って。それどういう意味なの。全然意味が分からない」

「...私は無理矢理...寝取られた」

「男の人とエッチな事をしたんだよね?じゃあ貴方は...」

「それは...計画性があったの...」

「...待て。じゃあ誰が仕組んだんだ?」

「それは分からない。...だけど私、嫌々だった。...だから貴方を本当に好いていたのは間違いないの。やっと貴方を探し出したけど」


待ってくれ。

マジにどうなっている?

そう思いながら居ると彼方の方からこう声がした。

「長門先輩」という感じで、だ。

それは...春風だった。


「...お前...部活はどうした」

「休んだっていうか休みだったよ。お兄ちゃん♪」

「...」


長門はビクビクしながら春風を見る。

春風の顔が一瞬だけ死神の様な顔をした気がした。

「...?」と思いながら俺は光景を見る。


「あはは。長門先輩。久しぶりだね。...何をしているの?」

「...な、何でも良いじゃない」

「でも貴方、男の人の性器舐めたんでしょ?汚い」

「そ、それはやりたくてやった訳じゃないです」

「...やりたくてやったんだよね?」


春風が一歩近づく度に後退する長門。

何が起こっている?

そう思いながら俺は見ていると「ねえ。春風ちゃん」と口を開いた。

それは下崎さんだった。


「...貴方、何かしている?もしかして」

「...待て。何かってのは?」

「私がですか?何もしてないです」

「...でも考えると貴方が必ず関わっているよね。...今までずっと」

「...」

「...待て。...お前何をしている。一体お前は何をしている?」

「何もしてないよ?お兄ちゃん...¿」


俺はゾッとしながら義妹を見る。

まさかと思うが浮気させたのコイツのせい?

そう思いたいく無いけど。

考えながら俺は春風を見る。


「...貴方...何をしているの?春風ちゃん」

「だから何もしてないですって。...ね?長門先輩」

「...」


長門は明らかに春風を恐れている。

何かされる、という様な目だ。

俺はその姿を見ながら「...」となる。

すると長門がこう切り出した。


「...私、貴方だけは...近付きたくないです」

「...どうして?」

「あな、貴方は...歪んでいる気がします」

「...そんな事はないよ」


俺は手を長門に伸ばす春風に「春風!」と声をかける。

長門は後退する。

すると春風は「...」となってから手を引っ込めた。


それからニコッとした。

マジに何かしている?

コイツが?春風が...そんな馬鹿な。


「帰ろう?お兄ちゃん」

「...話はまだ終わってない。...お前は何をしている」

「だから何もしてないって」

「...嘘を吐くな。...これだけ脅威だと何かしているだろ」

「...」


静か春風はニコッとする。

それから風が吹く。

結論から言ってこの場では全て収束しなかった。

そして俺達は帰宅する。


何かがおかしいと。


そう考えながら、だ。

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