第5話 善悪の流転
☆
寒気がする。
というのも...その。
何だか俺目当ての感じの寒気。
俺は「?」を浮かべながら帰宅の準備をする。
「すまないが今日も部活だ」
「...あー。だろうな。忙しいよな高倉」
「そうだな。恋人作りに忙しい。貴様と違う」
「誰が貴様だよ」
そんな事を言い合いながら...俺は高倉に苦笑する。
高倉はバスケ部に一応所属している。
だが本人曰く補欠だそうだ。
だけど実際、何をしているか実態が掴めない。
まあ良いけど...本人が楽しんでいるしな。
「なあ。高倉」
「...ん?...どした」
「...いや。何でもない」
「何だよ」
そして「?」を浮かべる高倉と別れてから俺は校門前に行く。
今日は義妹も部活。
俺だけで帰ろうとした。
その時だった。
「椎葉くん」
「...下崎さん?」
俺に声をかけて来たのは下崎さんだった。
下崎さんは「一緒に帰っても良いかな」と言ってくる。
その言葉に見開きながらも「ああ」と返事をする。
それから歩き出した。
「椎葉くんは...ずっと浮気されていたよね。...気持ち的に...落ち込んでるよね」
「まあもうクズはクズと割り切っているしな」
「...そうなんだね」
「ああ...もう疲れた」
「...ね、ねえ」
河川敷が見える。
俺は河川敷を降りて行ってみる。
それから河川に石を投げ込む。
俺は「...どうした」と聞いた。
「...私と付き合ってくれない?」
「...ああ...え?」
「私は...貴方から離れないから」
「ま、待て。どういう事だ!!!!?」
「私は貴方が好き」
そして下崎さんは手を握ってくる。
俺は真っ赤に赤面しながら「どういう...え?」となる。
それから下崎さんは俺を見てくる。
「私は貴方が好き。...だからこそ付き合ってほしい」
「...しかし...」
「知ってる。自らが不幸だって事も。...だけど...」
「...」
俺は「無理だ」と答えた。
それから俺は苦笑する。
そして「俺、考えたんだけどもう彼女作らない事にしたんだ」と答える。
下崎さんは「...」となってから俺を見てくる。
「女子が不幸になる」
「...でも私は...そんな事にはさせない」
「させないと君が言っても俺がさせる。だから...無理なんだ」
そして俺は下崎さんを見る。
下崎さんは「分かった」と笑みを浮かべる。
それから「貴方が落ちるまで頑張ったら良いんだ」と笑顔になる。
え?いや。そういう意味じゃない。
「...待ってくれ。そういう...」
そこまで言った時。
「あの」と声がした。
河川敷の上を見る。
そこに...長門都奈(ながととな)が居た。
美少女...っていうか今の注目点はそこじゃない。
コイツ...。
「...お前...長門...」
「...あ、あの...話だけを聞いてほしい」
「しかしお前は浮気したろ。...4人目の彼女で」
「...それは...実は...」
「...今更なんだ?何をしに来た」
「私、付き合う気は無かった」
そう答える長門。
俺は「?」を浮かべながら長門の視線を見る。
長門の視線は真っ直ぐ俺を見ていた。
何だコイツ?何が言いたい。
「それどういう意味?」
下崎さんが聞く。
すると長門はこう告白した。
目線を彷徨わせながら「...私は寝取られた。...だけどそれは無理矢理だった」と。
俺は「...は?」となる。
「...待って。それどういう意味なの。全然意味が分からない」
「...私は無理矢理...寝取られた」
「男の人とエッチな事をしたんだよね?じゃあ貴方は...」
「それは...計画性があったの...」
「...待て。じゃあ誰が仕組んだんだ?」
「それは分からない。...だけど私、嫌々だった。...だから貴方を本当に好いていたのは間違いないの。やっと貴方を探し出したけど」
待ってくれ。
マジにどうなっている?
そう思いながら居ると彼方の方からこう声がした。
「長門先輩」という感じで、だ。
それは...春風だった。
「...お前...部活はどうした」
「休んだっていうか休みだったよ。お兄ちゃん♪」
「...」
長門はビクビクしながら春風を見る。
春風の顔が一瞬だけ死神の様な顔をした気がした。
「...?」と思いながら俺は光景を見る。
「あはは。長門先輩。久しぶりだね。...何をしているの?」
「...な、何でも良いじゃない」
「でも貴方、男の人の性器舐めたんでしょ?汚い」
「そ、それはやりたくてやった訳じゃないです」
「...やりたくてやったんだよね?」
春風が一歩近づく度に後退する長門。
何が起こっている?
そう思いながら俺は見ていると「ねえ。春風ちゃん」と口を開いた。
それは下崎さんだった。
「...貴方、何かしている?もしかして」
「...待て。何かってのは?」
「私がですか?何もしてないです」
「...でも考えると貴方が必ず関わっているよね。...今までずっと」
「...」
「...待て。...お前何をしている。一体お前は何をしている?」
「何もしてないよ?お兄ちゃん...¿」
俺はゾッとしながら義妹を見る。
まさかと思うが浮気させたのコイツのせい?
そう思いたいく無いけど。
考えながら俺は春風を見る。
「...貴方...何をしているの?春風ちゃん」
「だから何もしてないですって。...ね?長門先輩」
「...」
長門は明らかに春風を恐れている。
何かされる、という様な目だ。
俺はその姿を見ながら「...」となる。
すると長門がこう切り出した。
「...私、貴方だけは...近付きたくないです」
「...どうして?」
「あな、貴方は...歪んでいる気がします」
「...そんな事はないよ」
俺は手を長門に伸ばす春風に「春風!」と声をかける。
長門は後退する。
すると春風は「...」となってから手を引っ込めた。
それからニコッとした。
マジに何かしている?
コイツが?春風が...そんな馬鹿な。
「帰ろう?お兄ちゃん」
「...話はまだ終わってない。...お前は何をしている」
「だから何もしてないって」
「...嘘を吐くな。...これだけ脅威だと何かしているだろ」
「...」
静か春風はニコッとする。
それから風が吹く。
結論から言ってこの場では全て収束しなかった。
そして俺達は帰宅する。
何かがおかしいと。
そう考えながら、だ。
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