第4話 そうはさせない


私の名前は下崎。

下崎彩奈。

唐突だけど私には気になっている人が居る。

それは椎葉透くん。

クラスのクラスメイトなのだが彼が気になっている。


実はこれには理由がある。

それは...椎葉くんは優しいから、だ。

だから気になっているのである。


そんな彼は5人の彼女に浮気されて傷付いている。

私はその事に耐えられない気持ちもある。

可哀想で仕方が無いのだ。

だから寄り添ってあげたい。

そう思っている。


「ねえねえ。椎葉くん」

「な、何だ?」

「何か飲み物買いに行かない?」

「...え?」


イメチェンした私はそう声をかけた。

椎葉くんはビックリしながら私を見る。

それから友人の高倉くんを見る。

高倉くんは涙を流してから拭った。


「行って来いYO」

「...いや...お前な」

「良いから。行って来い」


高倉くんはそう言いながら椎葉くんを突き放す様にする。

それから親指を立てる高倉くん。

私はその姿に苦笑いを浮かべながら「行こう」と椎葉くんを誘う。

椎葉くんは「あ、ああ」と言いながら私の様子に慌てて席を立ち上がる。

そして私は椎葉くんの手を引いてからそのまま下の売店の横の自販機に来る。


「何買おうか」

「...なあ。...下崎さん」

「うん?」

「どうしてその、イメチェンしたんだ?」

「...あ。それ聞くんだ」

「...そうだな。そこまでチェンジするとは思わなかったから」

「じゃあ答えを教えようか」


そして私は100円玉、10円玉を自動販売機に入れながらウインクする。

性格もちゃんとチェンジしないとね。

そう思いながら私は椎葉くんにアピールする。

椎葉くんは赤面していた。


「...私ね。...本当はこんな格好をする予定は無かったの。...偶然だった。店員さんに服を勧められて。...それで」

「そう、だったんだな」

「...それでチェンジしたんだ。性格も脱ぎ捨てて」

「...そうか。何の為に?」

「それは...」


そこまで言った時だった。

寒気がした。

というか寒気というか...憎悪。

何か私に対して凍てつく視線を感じた。


「お兄ちゃん」

「...春風?...何故ここに...」

「それは勿論、私は義妹だから」


何だったんだろう。

今の視線は...この子から感じた気がした。

憎悪に満ち満ちたかなり危険な視線を感じた。

私は「...」となってから笑顔で対応する。


「貴方は?」

「...私は椎葉春風です」

「...そうなんだ。...椎葉さんは...義妹さんなの?」

「そうですよ?アハハ」


アハハ、とは笑っているが。

私に対してかなり嫌悪感を感じる。

それも相当に凄い嫌悪感。

その事に私は「...」となってから見ていると。

彼女はこう切り出した。


「ねえ。お兄ちゃん。ちょっと手伝ってほしい事があるから。行こう?」

「え?しかし...」


私は「...」となったまま見つめる。

それからハッとしてから私は椎葉くんの腕を取った。

そして私は奪い返す。

すると「.....」という感じで猛烈な視線を感じた。

彼女は無言で威嚇を始めた。


「用事があります。...お兄ちゃんを取らないで下さい。下崎先輩」

「...私も用事があるから。彼を借りたい」

「...」


春風ちゃんは椎葉くんを見る。

それから椎葉くんは「ちょっと待ってくれるか。春風」と言うが。

春風ちゃんはそれを聞かない。

「今直ぐに来て欲しい」と言い出した。


「いや。何でそんなに焦っているんだ。...待てって」

「お兄ちゃんは私と下崎先輩とどっちが大切なの?」

「どっちも大切だ。...怒るぞ」

「...!」


その言葉に春風ちゃんは腕をだらんと下ろす。

それから私を死んだ様な目で見てきてから「...分かった」と踵を返した。

そしてそのまま春風ちゃんは無言で去って行く。

何かおかしい気がする。


「すまない。それで。お前の話って?」

「...あ、えっと。また今度でも良いかな」

「...え?...あ、ああ」


作戦変更だ。

これは何だかマズイ気がする。

そう思いながら私は彼女が去って行った方角を見る。

それから考え込んだ。



あのキチ◯イ女。

そう思いながら私は手をわなわな震わせる。

お兄ちゃんも何なの。

私よりあの女が良いの?

嘘でしょう。


「...これは絶対にマズイ。取られちゃう」


そんな事を呟きながら私は唇を噛んだ。

それから「恋する女の子がいかに恐ろしいか分からせてやろうかな」と言いながら私は教室に戻る。

そして私はスマホを取り出した。

メモ帳を破棄する。

そうしてからこう書き込んだ。


(史上最大の敵)


という感じで、だ。

そして私は薄ら笑いを浮かべる。

私が負ける?

そんな訳あるか。


「...お兄ちゃんに近付く羽虫は許さない。私は...お兄ちゃんのもので。お兄ちゃんは私のものだよ」


私はそう呟きながら書き込んでいく。

そして私はスマホの画面をなぞる。

どうしたら良いかな。

あの女も浮気という事に...しようかな。


「...」


静かに画面をなぞりながら文字をタップする。

キーボードで書いていく。

時間が過ぎてチャイムが鳴った。

そして私は授業に戻った。

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