第3話「とぅもとゆぅかは特訓する。」


 私は既に+10センチのつま先立ちを成功している。ゆぅかはまだ+5センチだ。


 そんな現場に、あきがやって来た。誰にも話してなかったのに……。ゆぅか話した? してないよね?


「よっ、特訓してるんだって? あたしもまぜて?」


 昨日、相談に乗った時より顔色がよくなった。元気になったあきが特訓に参加して来た。なんの特訓か知っているの?


 あきは学校の階段のへりに立つとつま先立ち、カーフレイズし始めた。


 それを見たゆぅかが顔色を青く赤くさせた。


「あきはダメー。あきがつま先立ちしたら、さらに10センチ高くなるでしょ? 前人未到よ! 難攻不落よ!」


 ゆぅかの頭の中はなんとなくわかる。ゆぅかは+10センチ。私も+10センチ。あきがやれば-10センチ。もう理屈じゃないんだよ───。


「ダメーっ!」ゆぅかは、あきを階段から、思いっきり突き落とした。さすが体育会系、ゆぅかが全力で押しても2、3段降りただけだった。


「ええーぇぇー」でも、あきの心の中は真っ黒だった。奈落の底に真っ逆さまだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る