第1話 主人公達
常闇バグ......初めて女子が家に来るかもしれない事態にドキドキハラハラさせていた。
だがしかし、どれだけ待っても彼女は来なかった。
(まぁわかってたけどな......)
こういうドタキャンは実は初めてでもなかったりする。
案外こういう事態は何度もあり、正直予想はついていた。
理由は全くもって分からない、ドタキャンの才能でも俺は持っているのかもしれない。
そんなことを考えていると.......
「あら......バグ君、待ち合わせですか?」
「......いや、ドタキャンされたらしい」
「それは可哀想ですね。代わりに私と帰りましょうか?」
「今日だけは、そうさせてもらうかねぇ......慰めてくれ」
「いいですよ、是非私に甘えてください♪」
「ちなみにだが.......この時間で一体何をしてたんだ?」
俺がそんなことを聞くと.......乃愛は、指を1本立てて、誰もが惚れてしまいそうな笑顔で────
「.......秘密ですよ♪バーグ君」
そうして、俺らは帰路を辿るのだった。
▼
そしてまぁ......何やかんや入学式から1週間が経過した。
俺は高校で新たな友達を作れたのかって?
作れなかったよこんやろう!
「昨日のテレビ見たー?」
「見た!見た!」
でかい声で話しているのはこの学校でも人気の男子と女子だ。
そしてそいつらと仲良くなりたいヤツらが数名といったところだ。
こういうヤツらを見ていつも思うんだが、もう少し声量を抑えることは出来ないのだろうか。
廊下にも、うるさそうにアイツらを見ている奴らがいた。
そんなことを考えていると、明らかにレベルの違う男子二人と女子二人が教室に入ってきた。
「みんなおっは〜♪」
そのうちのひとりが挨拶をすると、それに呼応するかのようにみんなも挨拶を返していく。
この男女は、とある1人を除いてとても有名だ。男子はリーダーシップがあるようなやつで、女子は誰とでも話せるフレンドリーな奴だ。
その中から、1人の男子が俺の席の前に荷物を置き、椅子に座った。
「相変わらずだな、人気者っていうのは」
「それに囲まれる僕の気持ちにもなって欲しいけどねー?」
そう、この男───大空奏こそがアイツらと比べて顔がいいという訳でもなく、人気者でもない男子だ。
まぁこいつは、パッとしないやつではあるが、めちゃくちゃ良い奴なのである。
だから友達やってるしな。
「そんなに嫌なら一緒に行かなければいいだろうに♪」
「お前わかってて言ってるだろ......」
どうやらこの幼馴染達は、この日は一緒に行こうというのを決めているらしい。
毎日、という訳でもないが、1週間に1回は最低でも行くことになっている。
「僕にそれが許されるなら、千馬はそれを当たり前のように破るでしょ」
「.......まぁ、それは解せないな」
千馬乃愛は、こいつの幼馴染の1人でもある。
だからこそ、今日は一緒に登校していなかったりする。
俺はまだクラスメイトに囲まれている乃亜達を見る。
あいつらは少しだけ笑いながら、クラスメイトの対応をしていた。
それには乃愛も含まれる。
だが.......
(あいつよくあんな演技出来るよなぁ.......)
乃愛はあんな笑顔を貼り付けてはいるが、極度の人嫌いである。
乃愛はよく俺に愚痴を言ってくるのだが
『......なんであんな下心満載で話しかけてくるんですかね。いっそのこと消してやりましょうか』
『私はバグ君とだけ話していたいのに......』
『.......バグ君、この服いらないなら貰いますね』
とまぁ、中々に表裏が激しいやつである。
あれ?最後のあんま関係ないな........
「でもよぉ、お前まるで主人公みたいだよな」
「またそれかよ、僕はそんな柄じゃない」
「そんな力強く否定すんなよ.......」
俺からしたら本当にそうとしか思えないのだ。
確かにこいつはパッとしない奴だけど、しっかり優しい奴だ。
そしてあんな人気者の幼馴染がいる......これを主人公と言わずしてなんというのか。
こうしてこいつと話していると、既に朝のホームルームまで5分を切っていた。
そうなると席に着く人が多くなるのは当たり前のことで、それはあの幼馴染たちも例外ではなかった。
「なに私たちを置いてってバグ君と仲良くしてるのさ〜」
「いやだってめんどいし」
「友達付き合いも必要だと思うけどね〜」
奏の隣の席に座り、奏と話しているのは幼馴染である遠坂幸奈だ。
茶髪の髪に、ボブのヘアスタイルをしている愛嬌のある少女だ。
誰にでも話しかけれるコミュニケーション能力と可愛らしい顔立ちでとても人気のある人だ。
(でもさぁ......)
こんな色んな人に愛想を振りまいている遠坂だが......こいつも表裏が激しいやつである。
だって......
〜とある日の放課後〜
『あぁ......ウザイ、ウザすぎる。どいつもこいつも。さっさと消えろよ。まじで』
『.......へ?』
とまぁ......何があったと言うと、とある日の放課後に俺は買い物をしにデパートに行き、その帰り道に、柵をひたすら蹴っている遠坂を見つけたのだ。
そんでまぁ......裏の顔の遠坂を見てしまって。
まぁそんなことがあり、俺は遠坂の裏があるということを知ってしまったのだ。
(でも正直面白かったというか......)
「バグ君?何か失礼なこと考えなかった?」
遠坂は急に顔を俺の方に向け、全く目が笑ってない顔で俺の事を見つめてきた。
思わず俺は目をそらす
「バグお前、それほとんど白状してるようなもんだからな」
「ふっ.....いい天気だと思わないか?遠坂」
「うんうんっ!雨降ってるけどね」
「.......」
外を見れば雨模様......やべ。
奏の方を見ると、怯えている俺を見てめっちゃ楽しそうだった。
いやほんと.....裏の顔を知っているからこそ怖い、まじで。
顔色が悪くなる一方で、俺にとっての救世主が現れた。
「.......あまりバグ君を虐めないでくださいね?幸奈」
そう言って乱入してきたのは、幼馴染でもある女の子......千馬乃愛である。
「別に虐めてないよ?不審なものを感知しただけだから」
「相変わらず感知能力が高いんですね」
そう言って乃愛は椅子を俺の隣に......いやまじで真横に椅子を置いて座り、俺の腕を抱く。
もはや日常茶飯事である。
「乃愛、ここは学校だからやめろと言っただろ?」
「そんな記憶ないですよ」
「相変わらず都合のいい頭しやがって......」
「何ですか?照れてるんですか?」
「そりゃあ多少はな。お前美人だからいつまでたっても慣れん」
「ふふっ......♪」
そして俺らは先生が来るまで話続けるのだった。
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