第五話 君との約束をいつか
これは、
「
「わざわざ
「わかっている。わかっているが……はあぁ」
式神・
漆黒の
寄りかかってくる重みが心地よい。
けれど、小さな体では彼女の全てを受け止めきれない。
それが
「行かないと、怒られちゃうんですよね?」
「間違いなく、大目玉を食らうでしょうねぇ。
それだけで済めばよいですが、下手をすれば罰として大捕物を命じられるのでは?
それこそ『
「わあ……過激ですね」
「例えばの話ですけどね。お
「……どちらにしても、
さらさらしていて、絹のような手触りだ。
ずっと触れていたいと思える。
「…………行かせたくないな」
ぼそりと呟く。
しかしながら、今の自分にはそう出来るだけの力がない。
「
のそりと顔を上げた
「僕も
代わりに、美味しい
笑顔を見せた。
これが、今の自分の役割。
身の丈に合わない望みをすれば破滅を招く事を、
「
「わぷっ!」
がばりと起き上がった
童だからと警戒心が低すぎやしないだろうか、と圧迫されて
(……まあ、役得だけど)
このように熱烈な抱擁を受けた後、
❖❖❖
一人、家に残された
「さて、僕もやるべき事をやらないとね」
手始めに左手を
手のひらに意識して集め、そして——。
「狐火!」
ぼわっと燃え上がる
今やるべき事は一つ。
美味しい
「気疲れして帰って来るだろうから、気力が回復するような料理を作らないとね。
好き嫌いがないのは知ってるけど、何がいいかな」
貯蔵してある食材に目を向けて、
「大根、茄子——は汁物と漬物に。
山芋、ごぼう、たけのことキノコ類はお煮物、お魚は後で取って来るとして……。
……これだけだと、いつもと変わり映えがしないな」
他に何かないか、と端っこの方に目を向けて。
そこで「あ!」と閃く。
「そうだ、米に栗を混ぜて
ほくほくな食感と、ほんのりとした甘さが米に妙に合っていて、癖になるんだよね」
塩をまぶして食べれば甘さが引き締まり、より一層美味しくなるのだ。
想像したら「ぐう」とお腹の虫が鳴った。
外見年齢相応の反応に、気恥ずかしくなる。
「
むしろ望むところだが、先ほどと同じように、異性として意識されていないと思い知らされるのは
「……とはいえ、この姿じゃ仕方ないけどね。
でも、時が来たらちゃんとわからせてあげる。
僕も男なんだってこと」
こんな顔、
——今は、まだ。
「本当の僕を知ったら、君はどんな顔をするかな?」
手際よく
血のように
もしくは、武器を手に取り肩を震わせて「騙したな」と激怒するだろうか。
あるいは、恐れ
それとも——。
「——思い出して、喜んでくれるかな?
『約束を果たしに来てくれたんだな』って」
遥か昔に交わした約束。
永き時の中で
瞼を伏せて思いを馳せれば、過去の情景が浮かぶ。
まるで昨日の出来事のように鮮明に。
「君は信じてくれなかったけど、君に会いに来たって言葉、嘘じゃないんだよ、
いつか、僕が消してあげるからね。君を苦しめるもの全部、全部。
壊して、燃やして、痕跡すらこの世には残さず、消し去る。
そして最後は——」
「——君に、死の安らぎを。
約束通り、この手で終焉に導いてあげるよ」
感情なく笑って、拳を握り締めた。
この時、
一人だから、と。
誰も来ることはない、と。
まさか、この言葉をすぐ側で聞く者がいて、自分を
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