「なんで私が精神科に!?」

 さて、入院の実情を書く前に私の入院までの経緯を話そうと思う。どうなったら入院になるのか、とかも記しておきたいからね。


 私は元々いじめられっ子だった。人と少し感性が違うのか、皆の話題に共感出来なかったり落ち着きがなかったりのせいで小学校に入ってすぐに標的となった。無視、暴言、暴力は当たり前で1番心にきたのは嘘ラブレターであった。あれ、本当に誰も得しないだろ。


 幼き日の私は中学校ではいじめられたくないと中学受験を決意。私立の中学(地元では割と有名)に合格し、ウキウキで小学校を卒業した。

 しかし、現実は甘くはなかった。中学でもいじめられたのである。

 要因は2つ考えられる。同じ小学校からの受験生がいた事と、いじめ、独特の感性によりまともなコミュニケーションを取れなかった私の経験不足だ。いじめによる弊害として社交性が低下する、というのがある。皆さんもいじめを受けていた、という人とのコミュニケーションに困惑した経験はないだろうか?それは純粋に「コミュニケーションを学べなかった」という結論に至ると思う。幼少期は色々なことを学ぶ時期であり、いじめは「異常なコミュニケーション」とも言うべきか。健常者とは明確に違うものを「学んで」しまったのだ。


 話を戻そう。かくして私は小、中と9年間のいじめを経験することになる。自殺未遂とかもやったが、何とか生き残った。私の中にあったのは他人への激しい怒りと戦い抜いた自分への誇りだけであった。そう、ここまではまともとは言い難いが精神科のお世話になることも無く生きてきたのだ。

 全てが狂ったのは高校。いじめが無くなったのだ。最初こそ喜び失った青春を取り戻していた。勉強にも意欲的で彼女もでき、友達もできた。何もかもが上手くいっていたかのように思えていた。

 ある日、唐突に幻聴が聞こえるようになった。中学で私をいじめてきた女の声だった。脳内に直接響くような声は次第に増え、体調もそれに伴い悪化した。頭痛、腹痛、吐き気が押し寄せ勉強どころではなくなり、保健室に入り浸る日々。カウンセラーに相談し、精神科に通院することになった。精神科、最初は閉鎖病棟とかよく聞く話のせいで悪い印象があった。重篤な患者が来る場所でありそこに行ったら人生終わる、みたいな。だがしかしそんなことはなかったのだ。

 精神科に通ってみて思ったのは意外とオープンな場所だということ。先生も優しく話しかけてくれるし、個人的な悩みを聞いてくれたりもする。他の患者さんも待合室では落ち着いた様子。普通の病院と何ら変わらない光景だった。


 気をつけてほしいのは精神科にも種類があること。まず「精神科」と「心療内科」は違うという点。心療内科はあくまで内科なので、心身症(心因性で体に病状が出た場合。ストレス性の胃腸炎等)を扱う。うつ病等を扱うのが精神科である。

 そして精神科は個人院と公立院がある。前者は個人医師がやっているところで、公立院は地域と結びついた大きめの病院であるが、受診はもっぱら公立院をおすすめする。地域が結びついているだけに診断の丁寧さ、薬の処方の安全性、更には社会福祉も充実しているからだ。学校のカウンセラーも公立院をおすすめしてくれたので、私は今もそこに通っている。


 最初は相談をして、いじめの経験がフラッシュバックしている、適応障害の可能性があると言われ対処の方法を考えるのみから始まったが、それでも症状は収まらない。薬を処方されるもやはり幻聴は聞こえるままだった。精神科の薬は少しづつ処方しないと副作用があったり、耐性がついてしまうものが多いのだが、それでは追いつかないステージにいつの間にか行っていたらしい。ある日車道に天国の扉が見えるという幻覚の体験をして、ついに私は自分から精神科入院を申し出た。


精神科入院は原則本人の同意がないと出来ないが、有事の際は家族の同意でも入院させることができるらしい。同意書に署名をし、入院が決まった。病名は「適応障害」。精神科の中でも思春期を扱う「思春期外来」の医師による診断だった。思春期は精神状態が変化しやすいことから、明確な病名は付けず適応障害と診断されやすいらしい。まあとは言っても立派な病気ではあるが。

 これで何とかなるのか、一松の不安を抱え私は病棟生活に移ることになったが、それは地獄の始まりに過ぎなかった。

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はじめての精神科入院 齢8年 @yowaiyei

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