第3話 夢がバレてしまった。

 ラブホテルはまじ我慢できない。


「う……うそ……」

 彼女は怖がっていながら俺のほうをじっと見つめてくる。


「さ〜く〜り〜ちゃ〜ん? 今日もまた会いましたねぇ。これが運命ですよ!!」


 そういい、俺は彼女をベッドに押しつけようとした。

 しかしその瞬間、夢の空間がまた崩壊しはじめた。

 いや、俺はがんばって自分の情緒を安定させようとしているのに……。


「わたしに近寄らないでぇ!」


 俺は直ちに彼女から距離を置いた。今度こそチャンスをのがさないために。


「な……」


 まさかこの夢では、彼女か俺の精神が暴れば夢が崩れてしまう?

 もっとも、なぜ俺は二日間連続彼女と同じ夢をしているんだ?


「ひったん…………わたしと同じ夢をしているの?」


 どう答えればいいんだ?

『そうです』って自爆するわけにもいかないし。とはいえ『違います』も嘘っぽい。


「そ……その」


「正直に……答えていいよ……。別にこれで君のことをきらうつもりはないよ……」


 彼女は少し恥ずかしく顔をらし、頬を赤らめて俺に言っていた。


「だって……だれだって性欲もあるし、夢でなら……やりたくなるよね……」


 さすが学園で一番やさしいともいい呼ばれる清楚キャラの久雪咲璃ひさゆきさくりさんだ。だれのどういう思想だって同感をしてくれる。


 俺はすぐに両膝を地面につけ、頭を深く下げて、彼女に謝った。


「ごめんなさい!! 久雪さん、こんな下品なことをしてしまい……」


 しかし彼女はやさしく俺の肩を抱えた。


「いいよぉ、わたしだって夢では暴れてみたいもん……。ひったんがやったことは理解できなくもないよ!」


 なんてやさしいのだ。

 普通に考えて自分のことをおかそうとしている人に対して『しょうがないよね』っていえる人はいるのか?


「久雪さん……ありがとうございます」


 すると、彼女は「ふふ」っと軽く笑い、やさしく俺に言った。まるで恋人のように。


「さっきみたいに『さくりちゃん』って呼んでいいよぉ! 敬語も使わなくていいよ。」


「……えぇ……?」


 彼女はあえて悪い笑みに切りかえ、からかうように俺に言った。


「へへぇー、だってひったん現実ではすっごい退屈でしょー、夢ではたのしく過ごそ!」


 そう言われると我慢できなくなるじゃないですか。

 俺はゆっくりと手を彼女の太くて白い太ももに向かって触ろうとした。


 すると、俺の手の感覚神経からあたたかくてやわらかいものが伝わってきた。


 すげぇ!


 久雪さんの太もも、でかくてプニプニしてて気持ちいい。


「ちょっ! ひったん?」

「うわぁ!! ごめんなさい!」


 そう謝った瞬間、俺は突然、お腹から妙な痛みが伝わってきた。


「ぶぁあ!! いたっ!!」


 やったのは久雪さんではない、なんだか現実から伝わった感覚っぽい。


 すると、俺の夢は崩れてしまった。


 俺のまぶたがゆっくり開けると、そこには悪い笑みをしている小さな悪魔なながいた。

 彼女は俺のおなかに座っている。


「おににぃちゃん寝言ねごと多いよぉ! ずっと『やさしい』とか『気持ちいい』とか言っててぇ。エロい夢でもしたのかい??」


「しねよクソガキ」


 まさか俺が夢で考えてたことが、現実の寝言に反映されてしまうのかぁ??


「も〜おにいぃちゃんってばぁ! 夢じゃなくて生でわたしとやってよぉ!」


「なんでお前だと勝手におもってんだよ」


「えぇ!! わたしじゃないの? おにいぃちゃん好きな人いるのぉ???」


 小さな悪魔の瞳から悲しい驚きが満ち溢れている。

 しかし俺はまるで悪魔をたおす勇者のように『言葉の剣』で攻撃した。



「お前みたいな貧乳好きじゃねぇよ」



 小さな悪魔は俺の『言葉の剣』により倒された。『やったー! 悪魔を倒したぞ』じゃねぇんだよ。


「おに、いぃちゃんひどい……」


 くそ、今日もあまりいいタイミングじゃないところで夢が終っちゃったなぁー。


 しかもこのエロガキ悪魔のせいでよく寝れなかった。はぁ、もし俺がシスコンであれば今は幸せだろうなぁ。

 冗談抜きであのエロガキもかわいい。



 そして次の日、俺はあのクソガキのために誕生日プレゼントを買いに行った。

『しね』とか言ってたけど、結局は買ってあげたい。


 はぁー、俺もとうとうシスコンになってしまったかぁ。


 俺は文房具屋へ行き、彼女に二本ぐらい高いシャーペンを買ってあげたい。

 この前も『シャーペンつかいにくい!』とか『シャーペン壊れた!!』とかいろいろ文句を俺に言ってきたしな。


 俺はシャーペンコーナーにつくと、そこにはゆっくりとシャーペンを眺めている“あの人”がいた。


「久雪さん?!」

「ひひ、ひったん!?」

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