第2話 寝取られ(寸前)少女とエロガキ少女。

久雪ひさゆきさん?」


 俺は無意識に夢のときと同じように彼女の名を呼んだ。


「いやぁ!!!」


 彼女は恐れながら俺から距離を置こうとして、後ろにみにくく倒れた。

「ちょっ、久雪さん?!」


「近寄らないでぇ!!!」


 彼女は“だれかに触られないために”両手で自分の体をカバーしようとした。


 俺はあることに気づいた。

 もしかしたら俺が昨日していた夢は、久雪さんと同じ夢だということ。


 俺は彼女が倒れている姿に対し、唖然あぜんとなった。しばらくしても音もしなかったため、彼女は恥ずかしくなった。


「さっく〜う! どうしたのぉ? 急にたおれて、ひったんになんかされたの?」


 声をかけたのは彼女の親友である音奈礼奈おとなれいな。久雪さんとは違うタイプである。


 一言でいえば『ギャル』だ。


 たしかに久雪さんもよく人と話すが、音奈はたとえ初対面の人でも、積極的に近づき、一発下ネタこすってくる。


「もぉ〜! ひったんくんったら、久雪ちゃんとイチャイチャしたい気持ちは隠しとけ! じつは女の子は直接ボディタッチは苦手だよん」


「ご……ごめん、ひったんじゃない……わたし、が勝手に転んでただけ……なの」


 それも当然のことだ。

『夢で寝取られました』っと言って俺に責任なすりつけることもできないし、言いたくもないでしょう。

 そもそも寝取られる手前で終わってしまったし。


 すると、彼女はなにごともなかったように立ち上がり、俺のほうに少し腰を曲げた。


「ごめんね、ひったん…………びっくりさせたね……」


「いえいえぇ、ぼくは大丈夫です……久雪さんは……?」


 聞くなよ、俺。

 自分が犯人なのに。


「いや、なんでもないよぉ、気にしないで、ごめんね!」


 そう言いながら、彼女は今日一日の授業の中で、何度も俺のことをチョロチョロと見てくる。

 しかもちょっと怖がっている目で。次の瞬間になにかが起こらないように祈ってるように見える。



 俺は普段通りに授業をうけ、普段通りに給食を食べ、家に帰った。


「おにいぃちゃん、お姫さま抱っこ!!」


 俺の義妹、朝夙奈々あさはやななは毎日『お姫さま抱っこ』を求めてくる。お姫さま抱っこという行為の魅力があまりよくわからない。

 しかし俺がその行為を遂行しないと、彼女は一日中俺のそばについてくる。


 寝るときも。


「へへぇー抱っこしてくれてありがと、シスコンにいぃちゃん」


 俺は彼女のその悪魔みたいな悪い笑みに腹が立った。

 そして俺は彼女をおもいっきり家の大きなソファに投げた。


「うわぁぁあぁあ!!」


 すると、ぷぁっとした音がなり、彼女は醜く、俺に怒りを込めて言った。


「おい! シスコンにいぃちゃん! ソファでのプレイはいやだよ! せめてベッドじゃないと!」


「なんでプレイにつながるんだよ。お前の脳みそにエロ要素以外なんもないの?」


 俺の義妹はたしかにかわいい子だ。よく知らないが、多分その容姿があれば学校では美人だといわれるに違いない。

 しかも学校では上品で静かな清楚キャラらしい。


 しかし家ではただのエロガキだ。


「わたしはエロガキじゃない!!!! 勉強も得意よ! テスト毎回少なくとも九割はあるからね!」


「なんで俺の心を読めるんだよ。てか毎回テスト九割はすごいわ」


 すると、彼女は目を閉じ、まるですべて読み通りの名探偵のように俺に言った。


「ふふん! わたしじつはおにいぃちゃんの好きなタイプ知っているんですよねぇー」


「黙れガキ」


 彼女がなにいおうとしているのかは大体予想つける。


「美しい瑠璃るり色の髪に、かわいい紺藍こんあいのついた瞳をもっている某十二歳の子かな?」


「そんなピンポイントで言っておいて最後は疑問文かよ」


 すると、俺はあることに気づいた。


「あっ、十二歳といえば、ナナもうすぐ十三だよね? 誕生日なにほしい?」


 彼女は三日後には誕生日がある。そして十三歳になる。さすがに恩人の娘だから、少しは恩返しの気持ちで買ってあげたい。


「へぇ!! わたしぃもらっていいの?」


「あぁ、バイトして少し金が貯まってるから、いいよ」


 すると、彼女は俺を魅せつけようとしている目でヒョロリと俺の瞳を見つめた。


「おにいぃちゃんのぉ……愛がほぢいなぁ」


「もうしねガキ」



 その後、俺は普段通りにごはんを食べ、普段通りに宿題をやり、就寝時間になった。


「もし今日も昨日みたいな夢ができたらな、今度こそイチャイチャしてやりたいよ!」


 そう願い、俺はゆっくりと眠った。



 その願いは本当に叶ってしまった。

 俺は再び夢で彼女と会ってしまった。


 前回の図書館とは違い、今回はラブホテルの部屋にいる。

 彼女はベットの横で恐ろしい目で俺を見つめている。


 ラブホテルはまじで我慢できない。

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