第2話 異世界JKあらわる

朝、

クリスティーナが朝食の準備をしている。


パンと牛乳、サラダ。

「この野菜はうちの畑で採ってきたのよ」

鮮やかな緑色の、美味しそうな野菜が木のボウルによそってある。


「いただきます」

パンはどうでも、この牛乳は美味しい。

「そうでしょ!うちのハンナちゃんからもらってるし」

ハンナちゃん?

「この家には二人しかいないよな?」

「そうよ」

「ハンナちゃんて?」

「うーーーーーーし」

「牛?」

「そう、牛のハンナちゃんよ。毎朝あたしが乳しぼりしてんの」

どうりで美味しいわけだ。

「もちろん温めて菌がないようにしてるよ」

そうかいそうかい。そういうところまで気を使ってるんだ。

「学校で教わったの」

学校?学校があるのか?ここには。

「そうよ」


聞けばこの村というか、この国には学校があるらしく。

6歳から初等学校に4年、10歳から中等学校4年、14歳から高等学校3年。

すべて無料で受けられるんだとさ、日本の政治家に聞かせてやりたいわ。



中等学校4年で教会で選択式というのを、みんな受けるらしいんだよ。

クリスティーナは16歳だから来年からはどうするのか聞いてみた。


「クリスティーナも選択式終えたんだろ?」

「終わったわ。あたしは魔術師になるらしいよ」

「魔術師・・・」

魔術師と言えば、その魔力で病気やけがを治したり、魔物を退治したり

災厄にはその魔力で国や住民を守ったりとか。


「だけどさ、クリスティーナは魔術師になりたいのか?」

「うーん、どうだろうねぇ。ま、魔術学校へ行って勉強してからかな」


「わたし今、高等学校の3年生だから”華のJK”も終わりなのよねぇ」

えっ?いまJKって言った?

「そうよ。女子高校生だからJKって言うんだって、最近流行ってんのよ」

マジか!この世界でもJKっていうカテゴリーがあるとは・・・


クリスティーナは食事を終えると、自分の部屋へ消えていった。


「ジャクリーンは、どうするんだい?」

「そうだなぁ・・・今更学校と言ってもね」

「でもそうすると、この先ずっと仕事も職業も選べないってことだぞ」

無職ってことかいな・・・それはそれでマズいよなぁ。

ずっとこの家に厄介になるわけにもいかないだろうし・・・

「お前がいいなら、ずっとここにいても良いけど」

農夫のクラウス、クリスティーナの親父な。

どうでもいいけど、連れ合いはいないのか?と聞いていいのか解らんが聞いた。

「ああ、もうずいぶん昔に、馬車の事故にあってな・・・亡くなったんだ」

マズいこと聞いちゃったかな?でも知らないでいるよりも良いかしら?


「パパ、行ってくる!」とクリスティーナの声がする、その方を見ると・・・


うわぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・可愛ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ


セーラー服だわ。

赤いネクタイして、まんま日本のJKじゃあ!ヨーロッパ系の女子だから尚更だな。

日本にもクリスティーナレベルの子は居なくはないが。それにしても・・・


「かわいいでしょ?いま、この服装が流行りなのよ。女の子のほとんどは

 この服装なんだよねぇ。それとこれ見て!」

大きなイヤリングをしてるし、二―ハイソックスだし、まさに”華のJK”だ。

クラスカースト最上位って感じ。現世でよく見ていた女子高生の影響は異世界まで

及んでいたということかいな・・・


「じゃあね!」

と元気よく表へ出て行った。


走ってくる乗合馬車に乗り込み、こっちへ手を振りながら学校へ向かって行った。

車内にはすでに友達が乗っているようで、なにかワイワイ話している様子。



「さて、じゃあ畑へ行くか。ジャクリーンはどうする?街へでも行ってみたら?」

「そうするよ」


乗合馬車を拾って、街へ出る。


なかなか賑わってんじゃないの?これ。

大通りは並木がズラッと並んで、通り沿いのカフェは歩道にもテーブルだしてるし

彼方に見える大きな教会。その横にある質素な王宮。


少し歩くと市場のような一角もあって、いろんな農産物とか工芸品、道具なんかを売っていて大勢の買い物客がいるし、ほかの通りでは、これはおしゃれな服を

売っている店がずらりと並び、若い女性が、ウィンドウショッピングを

楽しんでいるところとか、銀座や渋谷かな。そんな街もある。


東京とあまり変わらないなぁってのが率直な印象だ。


「お姉さん」

お姉さんだと?なんだかチャラい男が声かけてきたな

「お姉さんてば」

「俺か?」

ギョッとした顔して逃げてったわw

異世界にもこういうナンパってあるんだなぁ・・・


まぁ確かに、今の俺は16歳女子だものなぁ。パッと見はさ。

この国の若い女子でも、結構可愛い方だと思うぞ。見た目は!

現役JKのクリスティーナでさえ、俺の顔を憧れみたいな感じで見てたし。


腹減ったなぁ・・・

金・・・


なんかいい匂いがすっぞ!


肉を焼くようなにおいだな・・・

その匂いにつられていくと、屋台がずらっと連なっている一角に出た。

博多の中州みたいな感じと言えば、分かってもらえるか?


その匂いの元をたどると、牛肉?らしき肉を串焼きにしている屋台を発見!

何人もの町の人が買っていくところを見ると、結構美味いのかしら?


じっーっと見ていると、

焼いている奴、店主かな?なんか胡散臭い目つきで俺を見てるんだよな。

「一本50ルーラだよ」

「お金持ってない。だからいらない」

「なら、そば寄るな。帰れ!」

「あっそ!みなさーん!この店は見ているだけで怒られますよ!」

「おい!そんなこと言ったら客が来ねえだろ!」

「だって事実だもん!」

「事実って・・・しょうがねえな、一本やるよ。ほれ」

「あざーっす!」

ちょろいもんだわ、異世界の人間なんて。

とは言え、何回も出来るもんじゃないしな。


それにしても、美味いな!これ。

「よお!店主!この串焼き、美味いぞ!また来るわ」

「おお、そうか!美味いだろ?俺の店と契約している牧場の牛だからな」


牧場があるんだ。

そういえば、馬車で来るときに、それらしい場所があったなぁ・・・



「さて、そろそろ帰るとすっか」

俺は乗合馬車を拾って帰ることにしたわけだが・・・


「あ!ジャクリーン!街に来てたの?」

「おお!学校終わりかい?俺も帰るところさ」

「紹介するね、この子はソニア、こっちはローザだよ。

 この人はジャクリーン。えーっとどう言ったらいい?」

「親戚とでも言っとけ」

「ジャクリーンは親戚の子よ、最近ジルトニアに来たばかりなの」

「ソニアです」

「ローザだよ」


二人のクラスメイトも同じようにセーラー服着ている。

異世界JKはワイワイガヤガヤ、俺そっちのけで喋ってるんだが。


そのうち「じゃあ明日!」と言ってローザが降り、

「また明日ね」ソニアが近くで降りて行った。


「降りるよ」

家の近くで乗合馬車を降りて。

「ただいま」

「お帰り!ジャクリーンも一緒だったのかね?」

「ああ、そうだ。やっぱり俺も何かしないとダメだな。金がなけりゃなんとも」

「そうかい?じゃあ街にギルド事務所があるだろ?そこ行ってみな。

 冒険者だけではなく、仕事の斡旋もしてくれるらしいから」

「お、そうなの?じゃあ明日行ってみるよ」


セーラー服からいつものワンピースに前掛けすがたで戻ってきたクリスティーナが

「ジャクリーンもなにかやるの?」

「おお、明日ギルド事務所行ってみようかと思うんだ」

「いいんじゃない?なにかさせてくれるか、仕事紹介してくれるよ」

「そうみたいだな。とりあえず行ってみるわ」


と言う事でギルド事務所へ行くことになったんだが。


第2話 完


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社畜リーマンが異世界でTSしてモテまくる 利根川藤代 @83012086

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