第6話「双子の記憶」
黒いカードの波動が襲いかかる瞬間、美咲の意識は深い記憶の海へと沈んでいった。
「そうだったの...私たち、最初から特別だった」
7年前。霧島家の実験室。幼い美咲は、両親の研究を見守っていた。デジタルカードシステムの開発に携わる二人は、当時ネオコード社の主任研究員だった。
「レイちゃん、みさちゃん、こっちに来なさい」
母の優しい声に導かれ、幼い兄妹は巨大なデジタルマシンの前に立つ。
「お父さんとお母さんの研究ね」現在の翔子の声が、美咲の記憶に重なる。「人とデジタルの完全な調和を目指した画期的なプロジェクト」
記憶の中、マシンが起動する。幼い兄妹の体が淡い光に包まれる。
「霧島博士の双子型デジタル共鳴実験」赤城の声が響く。「人類を進化させる、究極の研究だった」
しかし、その瞬間、実験室に警報が鳴り響く。制御不能に陥ったマシンが、強大なエネルギーを放出し始めた。
「レイ!みさ!」
父の叫び声と共に、両親が兄妹を抱きしめる。マシンが爆発する直前、彼らの体を守るように。
「お父さん...お母さん...」
記憶の中の光景が、美咲の心を締め付ける。実験事故により両親は命を落とし、彼女は重い後遺症を負った。そして兄の零は、記憶の大部分を失った。
「実験によって、私たちの中に眠っていた力が目覚めた」美咲の意識が現在に戻る。「でも、それは両親の本当の目的じゃなかった」
研究室に残された両親のデータパッドが、美咲の記憶に蘇る。そこには最後のメッセージが残されていた。
『人類の進化は、決して強制されるものであってはならない。それは一人一人の意思で選び取るもの。レイ、みさ、あなたたちにはその力がある』
「お兄ちゃん!」美咲が叫ぶ。「私たちの力の本当の意味が分かったわ」
黒いカードの波動が押し寄せる中、美咲の体が金色の光を放つ。それは両親から受け継いだ、本当の力の輝きだった。
「人の心とシステムをつなぐ力。それこそが、私たちに託されたもの」
零の赤い光と翔子の青い光が、美咲の金色の光と共鳴する。三色の光は、赤城の放つ黒い波動に対抗するように輝きを増していく。
「馬鹿な」赤城の表情が歪む。「私の求める進化の形は...」
デジタル空間に、かつてない輝きが満ちていく。
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