第4話「暗号解読」



デジタルフィールドに浮かぶ無数のコードの光。零と翔子の間で、最初のカードが放たれた。


「サイファーコード・レベル3、展開」


翔子のカードから放たれた青い光が、空間を覆い尽くす。零の周囲に、無数のファイアウォールが構築されていく。


「これが、サイファーの本当の力よ」


翔子の指先が優雅に舞う。ファイアウォールが次々と零のカードへと襲いかかる。通常のカードなら、即座にシステムクラッシュを起こす強度の攻撃だ。


しかし——。


「これは...」翔子の目が見開かれる。


零のカードが、まるで生命体のように波打っていた。コードが自在に形を変え、ファイアウォールの隙間を突き抜けていく。


「ハッキング技術じゃない」赤城が目を細める。「システムそのものと対話している...?」


病室のベッドで見守る美咲の胸が高鳴る。兄の指先から放たれる光が、彼女の中で共鳴するような感覚。


「私のコードを、書き換えている...!」


翔子のカードシステムが次々とエラーを表示し始める。しかし、彼女の表情は厳しさを増すばかり。


「これこそ、私たちが求めていた力なのよ」


翔子は新たなカードを展開する。「サイファーコード・フェイタルデコード、発動」


デジタル空間が歪み始める。今度は翔子のコードが、零のシステムへと侵入を開始した。


「見せてもらおうかしら。あなたの覚悟を」


二人のコードが交錯する瞬間、美咲が異変を感じ取った。まるで、目に見えない力が全身を包み込むような感覚。


「これは...私にも見える。コードの流れが...」


その時、赤城の腕時計型デバイスが強く反応する。「やはり」彼は美咲を見つめた。「君たち兄妹は特別な存在だ」


デジタル空間に轟音が響き渡る。零と翔子のコードが完全に絡み合い、新たな干渉を生み出していた。


「私たちの目的は」翔子が叫ぶ。「人々を支配することじゃない。デジタルの束縛から、解き放つことなのよ」


その言葉が零の心を揺さぶる。彼は、翔子の瞳に宿る強い意志を見た。


「本当の戦いはここからよ」翔子が最後のカードを手にする。「受けて」


零も、自らのカードを掲げる。「応じましょう」


二人のコードが交差する瞬間、美咲の体が淡い光を放ち始めていた。


「お兄ちゃん...翔子さん...二人とも...」


彼女の声が空間に響く直前、デジタルフィールド全体が激しく明滅し始めた。


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