第13話 美女にはトラブルがついてくる?
あかねのストーカー撃退で、それでもあかねの恋人になれなかった僕は不機嫌になってスグに店に行った。そして、以前から気になっていた小夏を指名した。小夏は金曜、土曜しか出勤しない。その日は金曜日だった。
この店の指名写真はどうなっているのか? 何故か写真よりも実物の方がいい。普通は逆だろう。
小夏は美人だが、今までの女性達と違ってキレイというよりもカワイイ雰囲気だった。とにかく笑顔が良い。スタイルも良い。身長は155センチということだが、多分、本当は152センチくらいだろう。小顔なのでスタイルが良く見えるのだろうと思った。
ホテルで全裸の小夏を見て感動した。2時間コースにしていて良かった。小夏も今までの女性達と同様、キレイな体だった。胸はEかF(ブラによる)とのこと。胸の形もいい。
プレイ後、余った時間はずっとトークを楽しんだ。小夏には夢があった。小夏の昼の仕事はトリマーとブリーダー。風俗で荒稼ぎして自分の店を持つことが出来たらしい。だが、店はあるがまだ土地は自分のものではない。それで、今度は土地を買うために頑張っているとのこと。僕は小夏を応援したいと思った。
2回目の指名で、小夏はプライベート・デートをOKしてくれた。良かった。ネックレスをプレゼントしたのが良かったのだろうか? まあ、いい。
小夏と、結ばれた。
順調に進展していく僕と小夏のように見えたが、或る日、小夏を指名して店(受付)に行くと、奥が騒がしい。
「崔さん、ちょっと待ってくださいね」
店長もバタバタしていた。
「どうする? 病院に行くか?」
「崔さんの予約があるから、それが終わってから。警察の事情聴取も後で」
「その顔で接客は無理やろ?」
「大丈夫。崔さんなら受け止めてくれる。店長、行ってきます」
「崔さん、お待たせしました」
出て来た小夏の左目に、痛々しい青たんが出来ていた。明らかに殴られた後だ。
「小夏ちゃん、その顔・・・」
「崔さん、とりあえず行きましょう」
「どないしたん? 誰に殴られたん?」
「お客さん」
「どんなお客さん?」
「ウチの店には初めて来た酔っ払いのサラリーマン」
「なんで殴られたん?」
「なんか、荒っぽくて、ホテルに入ったら私の服が破れそうな勢いで乱暴やってん。ほんで、怖くなって距離をとったら『逃げるな』って殴られた」
「ほんで?」
「逃げながら店に緊急連絡したら、店長達が来てくれて・・・」
「相手は?」
「捕まえた。店長が警察に連絡した」
「もう、今日はプレイしている場合とちゃうで。料金は払うけど、先に警察と病院や。店に戻ってくれ」
「崔さん(小夏は指名写真に25歳と書いてあったが28歳、誕生日がきたら29歳だった。僕よりも2つ年下。僕が年下に興味を持つことは珍しい)、申し訳無いけど、警察とか病院とか、ついてきてくれへん? 1人やと怖いねん。一緒にいてほしいんやけど、アカンかな?」
「そのくらい、OKするに決まってるやんか」
僕は、警察の事情聴取も病院も小夏に付き添った。ただ、横で話を聞いているだけだったけれど。
「崔さんが一緒にいてくれたから、すごく安心でした」
「それは良かった」
「でも・・・どうしよう? これから店に出るのが怖い」
「怖かったやろうからなぁ、しばらく休むか?」
「アカン、早く土地を買いたいもん。稼がないと」
「ほな、どうする?」
「崔さん、私がこの仕事が怖くなくなるまで、トラウマが無くなるまで、私のボディーガードをしてもらえませんか?」
「え! マジ?」
「ダメですよね・・・すみません、甘えたことを言ってしまいました」
(またトラブルかよ! なんで僕はこんなにトラブルに巻き込まれるねん?)と思いつつ、やっぱり僕はこう言ってしまったのだった。
「そんなん・・・OKするに決まってるやんか!」
(嗚呼、ああ、言ってしまった。あーあ)
「ありがとうございます! で、いきなり甘えてすみません。今日、私を家まで送ってもらえますか?」
「うん、ええよ。ほな、一緒に帰ろうか、明日は僕も休みやし」
「私、自分の住んでるマンションに男性を入らせるのは初めてです」
「そうなんや、それは光栄やな」
「ほら、これで目を冷やして」
「すみません」
「こんなもんかな? 小夏ちゃんを着がえさせて、ベッドに寝かして目を冷やした。ということは、もう僕に出来ることは無いかな?」
「崔さん・・・」
「ん? 何?」
「今夜は泊まってほしいです。まだ怖くて震えてるんです」
「ええよ。ほな、僕はソファで寝よか?」
「ベッドで一緒に寝ましょうよ。シングルベッドだから、少し狭いですけど」
「それは嬉しいなぁ、ほな、ベッドの中にお邪魔します」
「あの・・・今日はエッチは無しでいいですか?」
「当たり前やろ!」
僕は金曜の晩と土曜日、小夏のボディーガードとして、僕は出動することになった。待機所のマンションの1室に入ることは出来ないので、小夏が待機所にいる時はマンションの下で見張り。小夏が出動すれば、店からホテルまで無事に辿り着くまで見届け、ホテルの待機場所で時間を潰し、小夏が出て来たら小夏が店、そして待機所に行くまでを見届ける。これが・・・めっちゃしんどいのである。なんという時間の浪費? だが、小夏から緊急連絡があればスグに駆けつけないといけない。しかも、しのぶ、アキナ、ミナミ、あかねと会うこともある。
「崔君、今日も小夏ちゃんのボディーガード?」
彼女達は、笑いながら僕に話しかける。めちゃくちゃ気まずい。っていうか、待機所でみんなに話すなよ、小夏。
だが、ご褒美はあった。金曜と土曜の晩は、小夏の部屋で眠れるようになったのだ。勿論、小夏を抱ける。小夏と僕は急接近。
そんなことが2ヶ月以上も続いた。
「崔さん」
「何?」
「ごめんなさい、私、もうトラウマは無くなってたんです」
「え! そうなん?」
「でも、金曜と土曜の晩、崔さんが泊まりに来てくれるのが嬉しくて、トラウマが無くなったと言ってしまったら、もうそんな日々が来ないような気がして、言えませんでした。すみません」
「ほな、もうボディーガードは不要やな」
「はい、そうなんです」
「で、小夏ちゃんはどうしたい? どうしてほしい?」
「これからも泊まりに来てくれますか?」
「うん、勿論、OKに決まってるやんか!」
「私、毎晩でも崔さんと一緒に寝たいです!」
半同棲生活になった。
「崔さん」
「ん? 何?」
「ごめんなさい、お別れです」
「え! どないしたん?」
「実は、金持ちのオジサンから愛人になれと言われてるんです」
「ほんで?」
「愛人になれば、私の店の土地を買ってくれるそうです」
「マジ! 大金持ちやんか」
「そうなんです。悩んだんですけど、今みたいに地道に貯金するよりも手っ取り早いので、私、その人の愛人になることに決めました」
「ほな、僕とはもう会われへんの?」
「はい。その人が『愛人になったら、他の男と付き合ったらアカン』と言われていますので・・・」
「そんなん・・・そんなん・・・勿論、OKに決まってるやんか!」
僕は小夏の部屋から出た。胸が苦しかった。泣きそうで、涙は出なかった。
僕を慰めてくれる人は、いなかった。
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