Day2

「おーい、Willちゃーん。いつまでプリプリしてんだよ」


 買い物袋を振り回しながら、Arnoldが俺に話し掛けて来る。こんな田舎で人もいないから、袋をぶん回しても何も言われないが、都会だったらぶちのめされているに違いない。


「別に怒ってねぇよ」

「いやいや、絶対怒ってるって」


 ヤツはさっき買ったトマトジュースを飲んでご機嫌だ。トマトなんざ、好き好んで食べるもんじゃないと思っていたが、コイツはこれが大好物らしい。何でも、「喉越しがサイコー」だとか。


「ほら、Willちゃん。これでも飲んで元気出せって」


 Arnoldが俺に、炭酸ジュースを投げて寄越す。わざわざ俺の分、買っておいてくれたのか。素直に嬉しかったので、“Thanks”と言って受け取ったのだが……。

 ……蓋を開けた瞬間、勢いよく炭酸が噴射した。当然、俺の手はベットベトになる。

 間違いなく、ヤツの仕業だ。思わず、はぁとため息が漏れる。


「……お前、マジでウザいわ」

「ははは、わりぃわりぃ」


 Arnoldは、こう言うガキっぽいトコロがある。だから、深入りすればするほど鬱陶しいタイプの男だと思う。

 だがコイツは、黙っていればカッコいい。実際、顔だけはいいので、GF(Girlfriend)狙いの女子が後を経たない。だがコイツは、「俺はダチとつるんでる方が好きだ」とか何とか言って、ことごとく誘いを断っているらしい。


「なぁ、Will。明日のPhysicsの授業、一緒に出ようぜ」

「まぁ、いいけどよ。お前、途中で寝るんじゃねぇぞ」

「大丈夫だって。よく寝られそうだから」


 「そうか」……と無難な返事をしてみたが、少し含みのある言い方が気になった。それに、俺の顔を見てニヤついているトコロも。


「……何だよ」

「いや? ちょっとお前に、確かめたいことがあってな」


 Arnoldはそう言うと、俺にスマホを見せてきた。画面がバキバキに割れていて、ひどく見づらい。何だよと思いながら、俺は顔を近づけて──。


「俺さぁ、見ちまったんだよな」


 ──思わず、ひゅっと息が詰まった。

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