第二章 松井田蓮
01 松井田蓮の有神論
――神様っていると思う?
「俺もいると思う! つーか、いないと困る!」
昨年の大晦日。巫女の女の子が口にして、友人の
農家を生業にしている新潟のじいちゃんには昔から「一粒のお米には七人の神様がうんたらかんたら」とか言われて、まあつまりお米は一粒も茶碗に残すなよ、とずっと言い聞かされて育ってきたし、そんなじいちゃんににこにこ寄り添っていたばあちゃんと、当時のオレには手を伸ばしたって届かないような場所に作られた神棚に向かって手を合わせることもあった。
初詣だって両親と一緒に毎年三が日のどこかで行っていたし、いまの陸上部に入ってからは大会前に必勝祈願として部員のみんなでお参りに行くことだってしている。
けれど俺の主張は、小さなころから生活に染みついたあれこれから神様はいるのだろうなとかいう、謙虚な信仰心からじゃなかった。
シンプルに、神様が存在してくれないと、俺が百円玉をからころと賽銭箱に投げ込み、鈴を鳴らしながら必死に祈ったあれやこれや――例えば、冬休み明けのテストの結果が良くありますように! だとか、次の冬合宿で自己ベスト出せますように! とか、彼女が出来ますように! だとか! ――そういった、俺の必死の願いは叶わないということになってしまうからだ。
それはまずい。それはいけない。それは許されない。いや神頼みをしておいて、誰目線で許されないとか言ってるんだよって話にはなるけども。
まあでも、日本全体に視野を広げればあっちこっち祀られている神様だのなんだのがたくさんあるのが俺の国だし。
ゲームにはゼウスだのヘラだののギリシャの神様とか、インドの神様とかをモデルにしたキャラクターはいっぱいいるし。
刀とか、人形やぬいぐるみとか、物にも細部にも神は宿るとか耳にするし。
あれ、細部はちょっと違うか。
まあいいか。
そういうのもあるから、
そんなわけでオレは、神様は居ると思うし、すごく自分勝手だけれどいないと困るなーなどと、心底本気で思っている。
なんなら近いうちに、広瀬たちにバレないようにこっそりと一人で、またお願い事をしにいこうかなと、そんなことも企んでいる。
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