第4話


「まあラファエル! よく来て下さったわ」


 庭から現われたラファエルを、貴婦人たちと談笑していた王妃セルピナが、明るい表情で迎えた。

 うわ怖い。

 処刑覚悟でやって来たラファエルには彼女の笑顔は白々しく見えたが、彼自身、人生最後の日は笑っていたいと思うたちである。こういう時にどうせなら泣くより笑ってやろう! と思えるのがラファエル・イーシャの剛胆な所であった。

「妃殿下。ご機嫌いかがですか。皆さんも」

 優雅にラファエルが周囲の貴婦人たちにも挨拶をする。彼女たちはすぐ華やかな貴公子の姿にうっとりとした表情を見せた。

「ラファエル。これからお茶会なのです。皆さんも貴方とお話したがっているわ。一緒に来てくださいな」

「光栄です」

「今日は少し肌寒いので、温室の方に席を設けていますわ」

「それは、素晴らしいですね」

 王妃に腕を差し出し、二人は歩き出した。

「ラファエル。今宵は城に留まれますか?」

 おっと。

 油断してるとすぐこれだ。

 そう思ったが、ラファエルは先日のことがあってから、妙に王妃の前で開き直ってしまったところがある。

「貴方がお望みとあらば。私を雑事から解放して下さるなら喜んでそう致しましょう」

「ではそのように」

「かしこまりました」

「陛下のお具合が良さそうなのです。私が許可します。挨拶をなさるとよろしいわ」

 ラファエルはさすがに息を飲んだ。

 しかし数秒後、王妃の手に、手を重ねた。

「お気遣い、感謝いたします。陛下のお体に障りないよう、配慮いたしますので」

 ええ。

 王妃は微笑んだ。

 今日は、苛々した所を見せるかもしれないと思ったのだが、彼女の機嫌は良さそうだった。ラファエルはひとまず安心したものの、何故か嫌な予感が過った。



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