第3話


「アトリエの棚?」


 急いで守備隊本部に戻ったトロイから報告を受け、フェルディナントは聞き返す。

「はい。けれど可能性は高いと思います。王都ヴェネツィアの病院や薬屋はしらみつぶしに探しましたが、有力貴族との繋がりは見つけられませんでした。周辺諸島に捜査は伸ばしていましたが、一度王都に戻し、アトリエ工房を探してみるべきかも。確かに医療用に使う薬品もありましたが、ネーリ様の話では、あの中には絵の顔料に混ぜる薬品なども多いようなのです」

 フェルディナントは少し考え、頷く。

「分かった。そうしよう。明日から重点的に王都のアトリエを調べる。あの空き家と繋がりのある工房、又はシャルタナとの繋がりを見つけたい。調査部隊を編成してくれ」

「かしこまりました」

「画家なら有力貴族との繋がりがあっても不審じゃない。その中に何か、ヴェネツィアの混乱に関わるものが見つけられればいいが」

「可能性はあると思います。今までそこは盲点だった」

「それにしても……またネーリからもたらされた情報だったな」

 フェルディナントは思わず笑った。トロイも頷く。

 仮面の男が二人いる可能性も、ネーリが矢の長さが違うと指摘したことから始まった。

「あの方は観察眼があります。あれだけの才能ある画家ですからそのこと自体に不思議はありませんが、穏やかで、大らかな性格をしていらっしゃいますが、鋭い所がある。もちろん機密とすべきことはそうであるべきですが……重要な助言を下さることがありますね」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る