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遠村椎茸

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 友人宅でトイレを借りた。

 彼女はお金持ちである。 

 トイレのドアを開けて中に入り、便器のふたを開けて驚いた。

 白いトイレット・ボウルの内側の縁に、黒のアストバリー・パターンが施されている。

 ギョッとして目を上げると、フラッシャーのすぐ上のところにWedgwoodと高級食器ブランドの銘が入っていた。

 用を済ませて出てくると、早速、キッチンに行き、わたしはロイヤルミルクティーをれている彼女に訊ねた。

「ねえ、あなたのところのトイレって凄いわね。あれって、特注?」

「ええ、頼んで作ってもらったの。イギリス製」

 応えながら、彼女はカップをテーブルの上に置いた。

 好い香りがする。

 きっと、これも高級品なんだろうな。

 そう思いながらシンプルな白いカップを見つめ、一口飲んで驚いた。

すっきりとした口当たり、それでいてなお濃厚な味わい、まろやかで上品で、こんなミルクティーは飲んだことがない。

「おいしいわ。ねえ、おかわりをもらえない?」

 言いながら最後の一口を飲み干したとき、白いカップの底からTOTOの四文字が現れた。


                               <終>

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ブランド 遠村椎茸 @Shiitake60

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