1. プロローグ−2

ある日、地球は異世界と融合した。


後に大異変と呼ばれる現象が起きたことをきっかけに、人々は現代的な生活に別れを告げることとなる。


大異変により地形や気候などが変わった世界において、それまで地球に住んでいた人々の前に異世界の神々やモンスター、国家が地球上に出現した。


また、それに呼応するかのように空想上の存在と思われていた地球の神々や悪魔、モンスターなども出現。


そして争いが始まった。



強大な力を振るう神々が率先して争い始めたことで被害は拡大し、大異変によって変化した地形は更にその姿を変えていった。


そして、神々の周辺に存在していた国家・種族が旧地球・旧異世界を問わず、争いに巻き込まれて地上から消失し始める。



異世界の人々の身体的特徴は人間に近いが部分的に異なっており、その容姿と地球側の知識に合わせてドワーフやエルフ、獣人、魔人など適当な呼び名を当てた。


旧地球の人々は自らを人間と呼称し、後年になると人間に近しい身体的特徴を保有する種のこと人類と呼称するようになる。


旧異世界の国家は地球とは異なる技術体系を保有しており、その最たるものが魔法と魔道具であった。


炎の嵐を起こす魔法。


振るだけで雷を落とす杖。


従来の地球の科学体系では説明できないそれらに加え、物理法則を無視して空を飛ぶドラゴンなどが人間の前に立ちはだかる。


しかし、それは異世界の国家やモンスターからしても同様であった。



領土や生存を巡って人間側も現代兵器を投入するが、銃や戦車にミサイルといった兵器は異世界の国家やモンスターにとっても未知の存在であり、その威力は高く効果を上げた。


加えて、地球の環境変化によって人間も種として変化し始める。


身体能力が著しく強化される者や、魔法や特殊な能力に目覚める人間が続出した。


使えるものは何でも使えと叫びながら、人間側も未知の能力者を原理も分からないまま活用していった。


未知の能力や鹵獲した敵の道具を用い、敵対勢力の戦法や思考などを犠牲を払いながら互いに学び合い、そして対応し発展させていく。


第三次世界大戦は現代兵器と魔法、神とモンスターなどが入り乱れる、その日知り合った者同士で開催された最悪の文化交流として名を残すことになる。



しかしながら、神々には核も通用せず。


人間側にも稀に異常な戦闘能力や特殊能力を保有する人間が誕生するが、それでも神には対抗できなかった。


神の中には全長数キロメートルを超えるものもおり、それらの争いの前では人間は逃走以外の選択肢を持たなかったのである。


また、大異変やその後の争いによって、人間側は工場や資源産出地などの大半を失う。


空路や海路による物資の移動はほぼ不可能となり、電力や水道に交通網といったインフラは壊滅的な状況へと追い込まれた。


これにより現代兵器を中心とした軍隊は継戦能力を消失。


人間の国家は生存圏を大きく削られ、種としての存続が危ぶまれる状況へと追い込まれる。


しかし、これは異世界の国家も同様で、国家や種族の消失が人類・モンスター問わず大量に発生した。


この時に発生した技術的・文化的な後退によって当時の機器や製造物に類するものは貴重になり、知識の伝承なども途絶えるものが多発することとなる。



この大戦は1年ほど続き、最終的に神々が潰し合ったことで一応の平和が訪れる。


神々の大半が消滅するか傷を癒やすための休息期間へと入ったことで、人類やモンスターも落ち着きを取り戻したのだった。


ただ、旧地球の国家は破綻するか、大きく領土を削られ人間の総人口も3割程度に減少。


旧異世界の国家も同様で交通網や連絡網も寸断されたことで、遠距離での連絡や外交を行うこと自体が困難な状況となった。


各国共に戦争しようにも余力がなく、国境付近で散発的な戦いが起きる程度に留まっており、結果的には休戦へと至っているが未だ情勢は不安定である。


また、争いの中で神々が権能を振り回したことで、異なる言語でも互いに理解できるようになったり、新しい生物が大量に誕生したりといった影響が出ており、これまでの常識が全く通用しない世界が出来上がっていた。


もはやここは地球か異世界かという問題ではなく、新しい世界の中で今日を生きるため人類やモンスターが争う世界へと突入したのだった。



そんな中、旧地球の国家は国そのものが分断され、都市や地域ごとがなんとか生存圏を確保していたが、そういった都市から離れると人が安全に生活できる地域は僅かであった。


以前から象徴とされてきた著名な首塚や大宰府天満宮などの施設は、霊的な守護地として機能したことで都市再建の中心となった。


また、神や悪魔などと契約を結んで安全を確保する都市も出現。


最低限の安全を確保した人間は残された現代機器と魔法、新しく出現するようになった資源、魔法などによって生み出された物品などを組み合わせて、生活必需品や武器を製造して生活に用い始める。



こうしてなんとか復興へと歩みだした人間が直面したのが、農地や耕作地域の縮小と輸出入障害により深刻な食料不足の発生だった。


食料不足は大戦中から発生しており、エネルギーや各種資源などの確保も絶望的になった時、それらを代替する手段として注目を集めたのがモンスターである。



人は食べないと生きることができない。


飢えて死ぬくらいなら、モンスターを狩ることなど大した問題ではない。


そうして、人はモンスターを狩り、モンスターを食べ、モンスターを資源として利用するようになる。


こうしてモンスターを狩るハンターという職が誕生することとなった。



大戦後の混乱から立ち直ったばかりのため、モンスターの生息地や生態に関する情報は限られている。


そういった情報不足の中で、ハンターは命がけで狩りや調査をしていく。


ハンターの中には一攫千金を狙う者もいれば、国家や民の安全のために働く者もいる。


モンスターとの戦いを最小限に抑えて資源探索に勤しむ者もいれば、変わり果てた地形やそこに住むモンスターを調べ上げようとする者もいる。


料理人からハンターに転向する変人もいれば、生活のためハンターを目指す孤児院育ちの子供もいる。



大異変から10年後。


未だ世界は未知で溢れていた。

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