第8話 『 洞窟の太っちょお化け 』
内気で臆病な少年タヌキ、ポン太。みんなから始終からかわれている。ポン太の友だちはちょっぴり強気なブーにゃん、チー子。そしていつも優しくて可愛いマダラウサギのミミ子。
最近太り気味で意気地のない自分が嫌で仕様がないポン太は部屋に閉じこもりがちで、チー子とミミ子が迎えにきても家からあまり出たがらない。
ミミ子「ポン太くん、みんなのからかいなんて気にしないで。自分の正直な気持ちに耳をすませて」
三人は森にキノコを取りに行くことにしました。夢中になってキノコを取っていると、どこからか不気味な音がします。その音は「うお~ん、うお~ん」と森全体に低く鳴り響いていました。何だか怖くなったポン太が「怖いよ、もう帰ろうよ」と言いますが、勝気なチー子は「ホントに弱虫なんだから。大丈夫よ、あれは風かなんかの音よ!!」といって帰ろうとしません。するとミミ子が「そう言えば、誰かが森の洞窟には大昔から恐~い魔物が住んでるって言ってたわ」と思い出しながら言いました。いつまでも「うお~ん、うお~ん」と鳴り止まないその不気味な音に、大丈夫と言っていたチー子もだんだん怖くなってきました。その様子にミミ子は「今晩のおかずには十分だからもう帰りましょう」と言って、三人は山を降りることにしました。ポン太はほっと一安心。そしていつも二人の間に入ってさりげなく気を使ってくれるミミ子がますます大好きになるのでした。村に帰ってからも、あの「うお~ん、うお~ん」という音は聞こえてきます。ポン太はそのことが少し気になりながらもベッドで心地よい眠りに就くのでした。
ある日、チー子とミミ子から村に病気が流行っていることを聞くポン太。チー子は「昔から村で何か困ったことが起きたときはロペラスカ洞窟の奥に咲いている“一輪花”を摘んでくると良いっておじいちゃんが言ってた」とポン太を誘うが、ポン太は返事ができないまま。
そしてついに大好きなミミ子の家族も病気に罹ってしまう。村ではまだ「うお~ん、うお~ん」という音が響き、「病気が流行るのは洞窟のお化けが暴れているからだ」という人も。ミミ子のことが心配なチー子とポン太は已むに已まれず一緒に洞窟へ出掛けることにする。
「うお~ん、うお~ん」
洞窟を前に、その薄気味悪さに怯えるポン太。「やっぱり帰ろうよ。花なんかでみんなの病気がよくなる訳がないよ」
激しく怒るチー子。「自分のことはどうあれ、自分の好きな人、大切な人のために勇気を出せない奴は本当の臆病者だよ」実は彼女も昔はいじめられっ子。それを助けてくれてのがミミ子だったのだ。なんとか進んでいく二人。
洞窟奥の部屋から響く奇妙なうなり声。二人で勇気を振り絞って重く堅い扉を開こうとするが、突然黒コウモリの群れに襲われ、闘う羽目に。
チー子「ここは私がなんとかするから先に行って!」
どうにか部屋に入るポン太。すると中には咲き誇らんばかりの花々と、お化けならぬメタボで超モノグサな神様がいた。「お前、何しにきた?」事情を話すポン太。
「昔は子どもたちが遊びがてらよくやってきてこの魔法の花を摘んでいったし、年に一度は洞窟の前でお祭りまであって、その時は恥ずかしがりやのワシでさえも皆と一緒に歌ったり踊ったり…そりゃ賑やかなものじゃった」
「でも最近は外では騒々しい機械の音ばかりで外出する気にもなれんし、大体この体がもう言うこと聞かんのじゃ・・・」神様の周りには食べ散らかされた果物の山。
「神様がサボってていいわけないでしょ!」満身創痍のチー子登場。煮え切らない態度の神様に我慢できず、無理やり外に連れ出そうとする。すると“神通力”の風で部屋の外に飛ばされてしまう二人。「もうここには来るな。ワシはもう誰にも会いたくないんじゃ。放っておいてくれ!」
再び暗い洞窟の扉の前。耳をすますと部屋の中から神様のすすり泣きが僅かに聞こえてくる。それは聞いているポン太自身の心の声のようにも聞こえる。
ポン太「分かったよ、神様。君も長い間独りぼっちで淋しかったんだね。それを突然やってきて無理やり連れて行こうなんて・・・。ごめんよ。でも今、村は本当に困ってるんだ。だから代わりに僕が君の友だちになってこの洞窟に時々遊びにくるよ」
「・・・」
「君さえよかったら村を救う方法を僕らに教えてくれないか?」
すると扉が僅かに開き、一輪の“五色花”が差し出される。「この花を村の広場中央にある女神の天秤にのせるといい。ワシに今、できることはこれだけじゃ」
「ありがとう!神様」
ポン太とチー子は一目散村へ帰って神様の言ったとおりにすると、人々は少しずつ元気を取り戻す。もちろんミミ子の家族も。そして一週間。ポン太もまた元気に学校に通い始める。
チー子「・・・しかし分からないものだよな」
ポン太「何が?」
チー子「まさか、あのメタボな人がね」
ポン太「神様のこと?」
チー子「ふふふ・・・。そうだ!今度一緒に洞窟に行ってさ、神様のダイエットを手伝ってやろうよ。あれでサボられたらまた何が起こるか分かりゃしない」
ミミ子「うん!神様の嬉しい悲鳴が聞こえてきそうね」
「楽しみだね!」笑って走り出すポン太。その後ろ姿は前よりほんの少しだけ逞しくなっている。
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