第15話晴天の霹靂
浮かれていたのでいつもより早く仕事場に着いてしまった更衣室に入り挨拶
「おはよう御座いまーす」
「「「おはよーっす」」」
普段通り着替えていると、現場リーダーの出口さんが話し掛けてきた
「おい、今日はなんか事務と上層部のほうが忙しいみたいだぜ」
「え?何か不祥事ですか?」
「わかんね、残業確定かな?手加減してほしいぜ」
今日の夕方頃涼香が来る予定だったのに、もしも残業だったら連絡をしておかないと
「えー、今日は早く帰りたかったんですけど」
「なんだ?女か?」
出口さんがヘラヘラしながら聞いてくる、絶対にそんな事無いと確信して質問をしているな?前までの俺なら話を有耶無耶にしてただろうが今日は違うぞ
「はい、そうですよ」
「まじかよ!?お前に春がついにきたのか!!それは良かった、龍雄は漫画の事しか頭に無いのかと思って心配してたんだよ、ここの会社って出合いがないじゃん?どこで出会ったんだよ?」
「幼馴染みですよ」
「かぁ〜っ、漫画みたいじゃねぇか、幼馴染みの彼女ってマジでいるのかよ」
涼香の自慢が出来るのは気分が良いな
そんなたわいもない話をしていると
「龍雄いるかー?」
製造部長の宇佐美さんが呼んできてきた
「はい、います、何かありましたか?」
「うむ、代表取締役がお呼びだ」
「え?」
呼ばれるような事をした覚えが無い
「ついに、クビ宣告か?昨日知夫が絡んできたし、彼女出来て早々暗雲が立ち込めだしたな」
出口さんが不安になる事を言うが、俺には命がいるからな、そんな事屁でも無い
「さすがに無いでしょ」
「しっかり心して聞くんだぞー」
心配しているのか煽っているのか分からない事を言いながら見送っている、俺は宇佐美さんの後を付いていく
「もしもの時は微力ながら掛け合ってみるよ」
宇佐美さんは代表取締役室に着くまで励ましてくれた
「ありがとうございます」
そんな事を話していると代表取締役室前に着いた宇佐美さんがドアをノックする
コンコン
「宇佐美です、龍雄を連れてきました」
「入れ」
宇佐美さんは俺を見てうなずいてドアをあける
「失礼いたします」
「失礼します」
部屋に入ると専務の知夫と、専務助手の沼田広がいた、一つ気になるのは沼田が顔面蒼白で俯いている事だ
「龍雄、久しぶりだな」
「はい、
彼は揖保川小黒麻呂、俺の大叔父で代表取締役、和夫の父親と言うことで性格は悪い、今の役職だって年長者と言うことで親戚一同に圧を掛けて強引になった、そんな人からの呼び出し、ろくな事では無いだろう
色々思うところはあるが軽く会釈しておく
「実はな今民事裁判中の相手側から今回の件を被害届けを出して刑事裁判に持ち込んだと弁護士から連絡が来てな、罪状は
「僭越ながら、裁判結果がまだ出ていない段階で考えるのは早計かと思います」
宇佐美さんがそれとなく訴えてくれる
「宇佐美君、今回の件は確実に負け裁判だ良い方向には絶対に行かんのだよ」
「しかし、彼の空き分が…」
宇佐美さんの語尾が弱くなる庇いきれないと理解しているのだろう、宇佐美さんにこれ以上迷惑をかけれない
「大丈夫です次の当てが有りますから」
「なんと!?それはどこかな?」
「それは内緒です、ただすぐに受け入れてもらえないと思いますのでその間までこちらで厄介になれればと」
「そうか、それは良かった君のことは心配してたんだ」
「お気遣いありがとうございます」
必死に追い出そうとしておいてよく言うよ
命に前もって聞いてて良かった、お父さんを『早く復帰させる』ってどれぐらいの期間だろ?
「それでは、龍雄君はその当てとやらへ行っていつ頃受け入れてもらえるか聞いてきなさい、今日はもう休み扱いにしておこう」
「分かりました失礼します」
そう言って会釈をして退室する
退室後更衣室に置いた荷物を取りに戻っていると
「龍雄君、いつの間に見つけていたんだ?」
「今朝ですよ」
「は?変な冗談はよしてくれ、余り言えない事なら詮索はやめておくよ」
冗談と受け取られた、まあ普通はそうなるよね、更衣室に入ると社員が集まって話をしていた
「おっ、龍雄どうだった!?」
出口さんが社員を代表して聞いてくる
詳細を話し帰宅する事を謝る
「気にするな誰もお前を責めねぇよ、寧ろ同情するわ、実行犯の沼田は良くて龍雄が駄目なんておかしいだろ」
「「「そうだーそうだー!!」」」
「いやー、自分はこれぐらいどうってことないですよ」
みんなが擁護してくれてちょっと目頭が熱くなる
「よーし、少し遅れたが、朝礼するぞー」
「では失礼しまーす」
俺は荷物を取ってそそくさと家に帰った、命達に出迎えられながら帰って早々お父さんに会社でのことを話すと、すでに知夫から連絡があったらしい、どうやら警察から出頭要請が来るのでちゃんと出向くようにとのこと、今回の事を命に聞いてみると
「これが、お父さんを一番早く復帰出来る方法なんだよ」
「え?そうなのか?」
「お父さんは尋問に全て正直に答えてくれたらいいからどうせ不起訴になるよ」
「なんだ不起訴になるのか良かった」
ジリジリジリン!うちにある古いが現役バリバリの黒電話が鳴る
「はい、もしもし揖保川です、はい、はい、分かりました伝えておきます」
チンッ
お母さんが電話の対応をする
「あなた、警察署から11時頃に出頭要請ですって」
「よしっ、めったにない経験をしてくるか」
「俺が送るよ」
「お、悪いな」
「普通は動転するべきなんだけどな、お父さん軽いよ」
「勝ち戦とは言え油断はせんから安心しろ」
お父さんを警察署に送る、そして俺はお父さんを待っていると
顔面蒼白な沼田が来た沼田が俺を見つけて地獄に仏を見つけた様な明るい顔をする、普通俺とは会いたくないはずだろう?そはずなのに救いを求める顔でこっちに来る、なんだよこっち来るなよ
シッシッあっちいけ!
俺の願いは通らず俺の前まで沼田が来た
「龍雄君、頼みがある、正虎さんにした事を思えば、君が頼みを聞く義理がない事は分かっている、だがこれだけは頼む!コレはわたしの家の鍵だ、それを製造部長宇佐美に今日中に渡して私の家に行って欲しい、猫がいるから保護するように言ってくれ、コレさえやってもらえれば自分はどうなっても良い、頼む!!」
「猫の保護?良いですよ宇佐美さんが了承するか分かりませんけど」
「本当か!?良かったー、コレだけが気がかりだったんだもう怖い物はない」
沼田はさっきまでの絶望感は無く覚悟を決めた顔をする
受付にズンズンと歩いてゆく
沼田の頼みなんて聞きたくないが猫に罪は無いからな、宇佐美さんに鍵を渡さないと駄目だしお父さんを待たないと駄目だしで、困ったなお父さんの方はお母さんに頼むか、お母さんに電話すると
「もしもし、どうしたの?」
「ちょっと今から出かけないといけなくなったからお父さんを迎えに来てくれない?時間ある?」
「大丈夫よ命ちゃんに呼ばれるって聞いてたからやることは全て済ませといたから」
「え?命が??」
「それじゃあそっち行くわね」
「うんお願い」
これも織り込み済みなのか?ちょっと怖ーよ何これ、そうだ宇佐美さんに連絡しとかないと
丁度昼休憩時間ギリギリに会えそうなので会社に行く
「宇佐美さん、すみません」
「いや、良いよ沼田は私と同期でね、正虎さんを交えて現場との情報交換をよくした仲でな、お互いのことは大体知ってるんだ猫の事なら任せとけ私が猫好きな事を分かって頼んだのだろう、ただあいつが猫を飼っているとは知らなかったな最近話して無かったしその間に飼ったのか?」
宇佐美さんに鍵を渡す
「そういえば沼田の家分かります?」
「飲み潰れたあいつを何度も運んだから知ってるさ、あの頃は楽しかったな」
宇佐美さんは寂しそうに鍵を握る
「それじゃ、お願いします」
「おう」
宇佐美さんに鍵を渡して後は帰るだけ会社から出ようとしたらパトカーが会社の中に入ってきた、一体なんだ?
「まあ、いっか、帰ろう」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます