第5話 真実の愛
宿曜占術の力を信じつつ、自分自身の意志で運命を切り開く決意をした沙月。だが、その決意が試される時は突然訪れた。レオの宿命を狂わせる敵、カリーナの罠によって、二人の運命は大きく揺さぶられる――。
沙月とレオが次の星座の力を求めて「双星の塔」に辿り着いた夜、彼らは不穏な気配を感じた。塔の周囲に張り巡らされた闇の気配。その中心に立っていたのは、黒衣を纏った女性、カリーナだった。
「やっとお目にかかれましたね、星の王子とその占術師。」
カリーナの声には冷たい嘲笑が混じり、沙月はすぐに彼女が危険な存在であると悟った。
「あなたは誰?何が目的なの?」
沙月が問い詰めると、カリーナは意味深に微笑んだ。
「私?私はただ、運命の“本当の姿”を教えてあげたいだけ。特に、その運命を背負わされた哀れな王子にね。」
彼女が手をかざすと、闇の力がレオを包み込んだ。その瞬間、彼の体が苦しそうに震え始めた。
「レオ!」
沙月が叫びながら駆け寄ろうとすると、カリーナの冷たい声が響いた。
「無駄よ。この呪いは星座の力そのものに干渉するもの。あなたの占術ではどうにもできない。」
カリーナの力によって、レオの体内に宿る星座の力が暴走を始めた。彼の瞳には不自然な赤い光が宿り、理性を失ったように周囲を見回していた。
「沙月、離れろ……俺がどうにかなりそうだ……!」
レオの声は苦しみに満ちていたが、沙月はその場を動かなかった。
「嫌!私は絶対にあなたを助ける!」
カリーナは冷笑を浮かべながら、さらに呪いを強めた。
「さあ、占術師よ。あなたの力でこの運命を変えられるものなら変えてみなさい。」
沙月はすぐに宿曜占術の書を開き、レオの宿命の糸を解きほぐす方法を模索し始めた。
「確かに、相性や運命は星が示すもの。でも、星の導きは絶対じゃない。私には、これを超える力がある!」
沙月は必死に星の配置や流れを読み取り、カリーナの呪いを打ち破るための方法を探し出した。そして、彼女は一つの答えに辿り着いた。
「彼を救うためには、私の星の力を全て注ぎ込むしかない……。」
だが、それは沙月自身が星座の力を失うことを意味していた。
沙月はレオを見つめ、静かに言った。
「レオ、私が必ず助けるから。」
「沙月、そんな無茶をするな。お前まで犠牲になる必要はない。」
「いいえ、私は占術師としてこの旅に出た。それは、あなたを守るためでもあったから。」
レオは沙月の決意に圧倒され、何も言えなくなった。ただ、彼の目には涙が浮かんでいた。
沙月はカリーナに向き直り、星の力を解放する儀式を始めた。
「星たちよ、私に力を貸してください。私の命を代償に、彼の運命を正してください!」
その瞬間、沙月の体が眩い光に包まれた。彼女の星座の力が解放され、カリーナの闇の呪いを打ち破る力となった。
カリーナは驚愕しながらも、最後の抵抗を試みたが、沙月の強い意志の前では無力だった。
「こんなはずじゃ……!」
カリーナは闇の中へと消え去り、レオの体を覆っていた呪いも完全に消滅した。
呪いから解放されたレオは、力なくその場に倒れ込んだ。沙月もまた、星座の力を失った影響で意識を失いかけていた。
「沙月!」
レオは必死に彼女を抱きしめ、涙ながらに言った。
「なぜ、こんなことをしたんだ……俺なんかのために!」
沙月は微かに目を開け、弱々しく微笑んだ。
「だって、あなたを助けたいと思ったから。それが私の占術師としての役目だから。」
「いや、もうお前はただの占術師なんかじゃない。お前は俺にとって……唯一無二の存在だ。」
レオの言葉に、沙月の目からも涙がこぼれた。二人は星の光に包まれながら、初めて心からお互いを受け入れたのだった。
沙月が失った星座の力は、彼女の体内ではなく、空に輝く星々へと還っていった。それは、星の王国全体に新たな光をもたらすものだった。
「沙月、これからは俺が守る番だ。」
レオの力強い言葉に、沙月は微笑みながら頷いた。
「私たちなら、どんな運命も乗り越えられるよね。」
こうして、二人は真の絆を得て、星座の力を完全に取り戻すための最後の旅へと向かう。彼らの絆は、もう何者にも壊されることはなかった。
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