第4話 愛と運命の試練
北星の祠での試練を終え、星の力を一部取り戻した沙月とレオ。二人の旅は順調に進んでいるかに見えたが、そこには互いに抱える心の葛藤が影を落としていた。星座の力を巡る旅路は、二人の距離を縮める一方で、新たな試練をもたらすのだった。
ある日の夜。二人は森の中で焚き火を囲んでいた。沙月は疲れた体を癒やすため、静かに星空を眺めていたが、レオがふと視線を外していることに気づいた。
「レオさん、星が好きなんじゃないんですか?」
「……俺が星を好きだと思ったのか?」
レオは少し苦笑しながらも、普段よりも柔らかな声で返した。その様子に、沙月は少し驚いた。
「だって、いつも星を見上げてるから。」
「そうだな……。星を見ていると、自分がどれほど小さい存在か思い知らされる。けど、それが嫌いじゃないんだ。」
そう言いながら、レオは遠い目をした。沙月は彼の横顔にどこか寂しさを感じ、無意識に彼の過去について尋ねた。
「何か、辛いことがあったんですか?」
レオはしばらく黙り込んでいたが、やがて静かに語り始めた。
「……昔、俺には弟がいた。優しくて、誰にでも好かれるやつだった。でも、星座の力が乱れ始めたとき、弟はその影響で命を落としたんだ。」
その言葉に、沙月は息を呑んだ。レオが抱える苦しみが、彼の態度や言葉に滲み出ていたことに気づいたのだ。
「それ以来、俺は星を守るために生きると決めた。けど……正直、どうしてこんなことになったのか、未だに答えは見つかってない。」
沙月は彼の悲しみに何も言えず、ただそっと隣に座り、焚き火の光を見つめていた。
それ以降、沙月はレオを見る目が少しずつ変わっていった。彼の厳しい態度の裏に隠された優しさや、星の王国の未来を背負う覚悟に惹かれ始めていたのだ。
「彼を支えたい」という気持ちは、旅が進むにつれて強くなっていった。
だが、その感情を彼に伝える勇気はまだ持てずにいた。沙月は自分の占術の力を信じていながらも、それが二人の関係をどう変えるのかが怖かったのだ。
次の目的地に向かう途中、沙月は宿曜占術の書を開き、レオとの相性を改めて占ってみた。結果は「安壊」。互いに引き寄せられる一方で、大きな衝突や別れをもたらす宿命的な関係だった。
「やっぱり……私たちの関係は、簡単にはうまくいかないんだ。」
沙月はその結果にショックを受け、占術が示す未来に恐れを感じた。
同じ頃、レオは沙月が占いをしている姿を遠くから見ていた。そして、彼女が結果に苦悩していることを察すると、無言で近づき声をかけた。
「何を悩んでいる?」
「……いえ、何でもないです。」
沙月は慌てて占術の書を閉じたが、レオの鋭い目からは逃れられなかった。
「お前の顔を見れば分かる。何かを隠しているな。」
その問い詰めるような態度に、沙月は思わず感情をぶつけてしまった。
「だって……あなたとの相性が“安壊”なんです!私たちの関係は、どうせ壊れる運命なんです!」
その言葉に、レオの表情が険しく変わった。
「占術が全てだとでも思っているのか?」
「でも、これは星が示した未来で……!」
レオは沙月の言葉を遮るように言い放った。
「星が示した未来が何だ?お前は星に縛られて、自分の意志で動くことを放棄するのか?」
その言葉は、沙月の心に鋭く突き刺さった。自分が占術に頼りすぎていることを認めざるを得なかったからだ。
しかし、レオの言い方もまた、彼女を傷つけた。
「……分かりました。もう、占術なんてしません。」
沙月はそれだけ言い残し、その場を去った。
レオもまた、彼女を追おうとはしなかった。ただ一人で夜空を見上げ、かつての弟との記憶を思い返していた。
翌日、二人は気まずい空気の中で旅を続けていたが、その途中である村にたどり着いた。村人たちは星の力を失い、日常生活が困難に陥っていた。
「私たちがここで何かできるなら、やりましょう。」
沙月は村人たちに占術を提供し、彼らの悩みを解決するために尽力した。
その姿を見て、レオは心の中で彼女に謝りたいという思いを強くした。
村を後にした夜、レオはようやく沙月に謝罪の言葉を口にした。
「沙月、俺は間違っていた。お前の占術には力がある。それを否定して悪かった。」
沙月もまた、レオに微笑みながら答えた。
「いいえ、私も占術に頼りすぎていたと思います。でも、あなたが教えてくれたおかげで、自分自身の力も信じられるようになりました。」
その夜、二人の心は少しだけ近づいた。
しかし、彼らの旅はまだ終わりではない。星座の乱れを完全に正すため、そして互いの運命を乗り越えるため、さらなる試練が待ち受けていた。
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