第3話 旅の始まり
星の王国に降りかかる星座の乱れを正すため、沙月とレオの旅がついに始まった。険悪な関係のまま、二人は星々に導かれるようにして進むが、その道のりは決して平坦なものではなかった。
「旅の最初の目的地は、北星の谷だ。」
レオが地図を指さしながら言った。星座の乱れによって力を失った星々を回復するために、二人はそれぞれの星座に由来する場所を訪れる必要があるのだという。
「北星の谷は星々の祠がある場所で、まずはそこに眠る北星の力を取り戻さなければならない。」
沙月は頷きながらも、不安を隠せなかった。「でも、その星座の力を取り戻す方法って具体的にはどうするんですか?」
「祠の試練を乗り越えなければならないらしい。」
レオの説明に、沙月はますます緊張した。試練と聞いただけで、自分にそんな力があるのか不安が募った。
北星の谷へ向かう道中、二人は小さな村に立ち寄った。その村は星の光が届かないように暗く沈んでおり、住民たちの顔には疲れが色濃く出ていた。
「ここも星座の乱れの影響か?」沙月が呟くと、村の長老が頷いた。
「そうじゃ。星の力が失われて以来、村には災難が続き、人々の心も荒んでおる。」
長老は続けて、村の若者たちが最近互いに争いを始めてしまい、村の雰囲気が悪化していることを説明した。
「星の力を取り戻すために旅をしているなら、ぜひわしらの問題も占ってみてくれんかのう?」
突然の依頼に沙月は戸惑ったが、レオは冷静だった。「沙月、お前の宿曜占術の力を試すいい機会だ。」
「えっ、私がやるの?」
「俺は占術師じゃない。お前がやるしかないだろう。」
不安を抱えながらも、沙月は占いを始めることにした。
沙月は長老や村人たちから話を聞き、それぞれの生年月日をもとに星の配置を確認した。宿曜占術の古書に記されている「本命宿」や「相性」を紐解きながら、村人たちの関係性を探った。
その結果、若者たちの間にある争いの原因が浮き彫りになった。それは、「命」と「壊」の関係にあった。
「この二人の間では、壊の関係が作用していて、互いに感情がぶつかりやすいみたいです。でも、それを理解した上で冷静に話し合えば、解決できる可能性があります。」
沙月は具体的な解決策を提案し、村人たちにそれを実行するよう伝えた。最初は半信半疑だった若者たちも、宿曜占術の結果を聞いて態度を改め始めた。
数日後、村の雰囲気は少しずつ明るくなり、争いが解消されていった。
「ありがとう、お嬢さん。君たちのおかげで村に平和が戻りつつある。」
長老が感謝の言葉を述べると、沙月はほっと胸をなでおろした。一方で、レオは無言のまま、少しだけ沙月に視線を送った。
その夜、村を出発する準備をしていた沙月は、レオが一人で星空を見上げているのを見つけた。
「……珍しいですね。また星を見てるなんて。」
沙月が声をかけると、レオは少し驚いた表情を見せたが、すぐにいつもの冷たい態度に戻った。
「別に、お前に構ってほしいわけじゃない。」
「別に構うつもりもないです。でも……今日はちょっとだけ、ありがとうって言いたくて。」
沙月の言葉に、レオは少しだけ表情を緩めた。
「俺はただ、この旅が終わるまでお前と協力するつもりだ。それ以上でも以下でもない。」
その言葉に、沙月は少し寂しさを覚えたものの、彼が完全に冷酷な人間ではないことを感じていた。
村を後にした二人は、ついに北星の谷へとたどり着いた。そこは、空気が澄み渡り、星々が手を伸ばせば届きそうなほど美しく輝いていた。
「ここが、北星の祠……。」
沙月が感嘆の声を上げる中、レオは真剣な表情で祠の方へ進んだ。
「ここからが本番だ。試練を乗り越えなければ、星座の力は取り戻せない。」
沙月は深呼吸をし、覚悟を決めた。この旅は、星座の力を取り戻すだけでなく、自分自身の成長にもつながるのだと信じて。
二人の旅は、まだ始まったばかりだが、北星の祠での試練がどのようなものか、二人にはまだ知る由もなかった。運命の糸が絡み合いながら、物語は新たな章へと進んでいく。
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