第2話 宿命の邂逅
沙月が星の王国で新たな一歩を踏み出そうとしていたその時、運命的な出会いが彼女を待ち受けていた。
ルクシアに導かれ、沙月は星の王国の中心に位置する「星の城」へと向かっていた。城は、星の光が反射する巨大なクリスタルでできており、見上げると頭がくらくらするほど壮大だった。
「この城には、王国を守る役目を持つ者たちが住んでいます。あなたもここで修行を積むことになりますよ。」
ルクシアの案内で、沙月は城の広間へと足を踏み入れた。その瞬間、冷たい空気が彼女を包み込んだ。広間の中央には、一人の男性が佇んでいた。
彼は長身で端正な顔立ちをしており、鋭い目つきが印象的だった。肩まで伸びる金髪が星明かりを反射し、まるで彼自身が光をまとっているかのようだった。
「紹介します。彼はこの星の王国の王子、レオ様です。」
ルクシアがそう紹介すると、沙月は一瞬緊張した。王子と聞いて気後れしたものの、彼の表情にはどこか冷たさがあり、彼女をじっと見つめる瞳には敵意のようなものが感じられた。
「この人が、星の乱れを正す力を持つとされる“選ばれし者”なのか?」
レオは鋭い声で問いかけた。
沙月はその言葉に驚きながらも、なんとか返事をしようと口を開いた。「あ、はい。私は沙月といいます。でも、まだ何も……」
「見るからに普通の人間じゃないか。こんな者に、王国の命運を託すつもりか?」
レオの厳しい態度に、沙月は戸惑いと怒りが入り混じった感情を覚えた。
「あなたが何を知っているっていうんですか!私は急にここに呼ばれて、まだ何もわかっていないのに、そんな風に言われるなんて……!」
思わず声を荒げた沙月に、レオは少し驚いた表情を浮かべたが、すぐに冷笑に変わった。
「お前のような未熟者に何ができる?この国を救うには、ただの“運命の人”ではなく、実力が必要なんだ。」
彼の冷たい言葉に、沙月は反論する気力を失った。
その後、ルクシアは二人を落ち着かせるため、星の間と呼ばれる部屋へと連れて行った。そこでは、人々の宿曜占星術による関係性を星図として読み解くことができた。
「沙月さんとレオ様の関係性を確認しましょう。」
ルクシアが星図に手をかざすと、無数の星が輝き、二人の間に線が結ばれた。そして、その線には一つの言葉が浮かび上がった――「安壊」。
「『安壊』?」沙月が首をかしげると、ルクシアが説明を始めた。
「安壊は、二人の関係性が安定と破壊を繰り返すという意味を持ちます。この組み合わせは非常に複雑で、お互いを引き寄せる力と遠ざける力が同時に働きます。」
沙月はその説明を聞いて納得したような気がした。レオの冷たい態度は、もしかするとこの「安壊」の関係が原因なのかもしれない、と。
一方、レオは星図を見つめながら不快そうに顔をしかめた。「やはり、お前とは相性が悪いようだな。これでは協力などできるはずがない。」
その日以来、沙月とレオの関係は険悪そのものだった。沙月が努力しても、レオは彼女を冷たく突き放すばかりだった。しかし、沙月も負けず嫌いな性格で、簡単には引き下がらなかった。
「私だって頑張ってるんです!あなたに認めてもらおうなんて思ってませんけど、少しは協力してくれてもいいんじゃないですか?」
「協力?お前のような半人前と?」
二人の言い合いは日常茶飯事となり、周囲の者たちも手を焼くほどだった。
しかし、沙月は次第にレオの態度の裏に隠された何かを感じ始めていた。彼が突き放すような言葉を投げかけるたび、その瞳の奥にわずかな迷いが見えるのだ。
ある夜、沙月は一人で星の城の庭を歩いていた。そこに偶然、レオの姿を見つけた。彼は静かに夜空を見上げていた。
「……珍しいですね。そんなに穏やかな表情をしているなんて。」
沙月の声に、レオは一瞬驚いたようだったが、すぐにいつもの冷たい態度に戻った。
「何をしに来た?」
「別に。星を見ていただけです。あなたは?」
レオはしばらく沈黙していたが、やがて静かに口を開いた。「星を見ていると、考えなくてもいいことまで考えてしまうんだ。」
その言葉に、沙月は彼が何か抱えているのだと気づいた。
この夜をきっかけに、沙月はレオの心に少しずつ歩み寄ろうと決意した。険悪な関係に変わりはなかったが、彼の言葉の奥に隠された感情を知りたいという気持ちが芽生えていたのだ。
一方、レオもまた、沙月の純粋な姿勢に少しずつ心を動かされていくのだった。
二人の関係は、星図が示す「安壊」のように、不安定で激しいものだったが、そこには確かに運命の糸が絡み合っていた。果たして、この二人がどのように星の乱れを修復していくのか――彼らの物語は、まだ始まったばかりだった。
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