あなたと彼を繋ぐのは、星の導きか、それとも自分の想いか

まさか からだ

第1話  運命の召喚

 沙月(さつき)は、どこにでもいる平凡なOLだった。恋愛や仕事に悩みつつも、特に大きな変化もない日々を送っていた。しかし、最近は不思議な夢に悩まされていた。夢の中で、無数の星が瞬きながら彼女に語りかけてくるのだ。


 「沙月、星々の声を聞け。あなたにしかできない役目がある。」


 声は柔らかくも力強く、心の奥深くに響いてきた。目覚めるたび、夢の内容は霧のように薄れてしまうが、不思議な感覚だけが胸に残っていた。


 ある夜、沙月はまたその夢を見た。だが今回は、星々が形を成し、まばゆい光の中から一人の女性が現れた。その女性は長い銀髪を持ち、流れるような青い衣をまとっていた。


 「沙月さん、あなたを『星の王国』にお招きします。」


 次の瞬間、足元から光が広がり、沙月はふわりと宙に浮いた。眩しい光に目を閉じた後、目を開けると、そこには見たこともない壮麗な風景が広がっていた。




 沙月が立っていたのは、夜空そのもののような広大な大地だった。足元には星の輝きが敷き詰められ、遠くには銀河の帯が天へと続いている。空には無数の星が瞬き、その間を流れ星が静かに行き交っていた。


 「ここは……どこ?」


 沙月の問いに答えたのは、先ほどの銀髪の女性だった。


 「ここは『星の王国』。あなたの世界とは異なる次元に存在する場所です。私はルクシア、この王国を守る占術師の一人です。」


 ルクシアは微笑みながら、沙月を手招きした。彼女の足元には水晶でできたテーブルがあり、その上には円形の星図が浮かんでいた。


 「実は、私たちの王国が危機に瀕しているのです。運命の糸が絡まり、人々の未来が歪み始めています。その原因を解き明かすために、あなたの力を借りたいのです。」




 沙月は戸惑った。「私に何ができるんですか?私は普通の人間です。特別な力なんて持っていません。」


 ルクシアは静かに首を振った。「いいえ、あなたは選ばれた人です。宿曜占星術の素養を持つ魂を持っています。それを目覚めさせることで、私たちとともに運命を正す役割を果たせるのです。」


 沙月は信じがたい話に困惑しつつも、星々が発する柔らかな光とルクシアの誠実そうな瞳に、心を動かされていた。


 「それにしても、どうして私が?」


 ルクシアは手をかざし、沙月の周りに星座を描いた。星座は彼女の体に吸い込まれるようにして光り、心地よい暖かさが広がった。


 「沙月さん、あなたには特別な才能があります。星の声を聞く力です。この力を使って、星々の乱れを修復し、運命を導く手助けをしてほしいのです。」


 沙月は少し考えた後、小さくうなずいた。「わかりました。でも、私にできるかわかりません。でも、やってみます。」




 ルクシアは微笑み、「その意志が重要なのです」と沙月に言った。そして、水晶のテーブルに触れると、無数の星図が空間に現れた。


 「最初の試練は、あなた自身の過去と向き合うことです。運命を修復するには、自分の内面を知り、受け入れることが不可欠です。」


 星図が輝き、沙月の過去を象徴する光景が広がった。かつての失恋、家族との葛藤、そして自分の弱さに向き合う時間が始まったのだった。


 「運命を正す旅は、自分自身を知る旅でもあります。星々の力を借りながら、私たちとともに新たな未来を切り開きましょう。」


 沙月の冒険はこうして幕を開けた。星々の光に導かれ、彼女は自分の運命を超え、星の王国を救うための旅に出るのだった。

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